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救世の闇魔法  作者: なまけもの先生
冒険の始まり編
26/39

26話 次の戦いのために


 その頃ライナはアルトやミレオと共にザルベック城に向かっていた。ミレオはずっと無言だった。いまだにゼルマンの死が受け入れられずに固まっていた。


 彼らがザルベック城に到着した頃には、城の中には人が溢れかえっていた。その光景を見てライナ達はノクトが六魔星を倒したんだと確信した。戦いは終わった。ザルベックは救われたんだと彼女は思った。



 ミレオが城に入ると歓声が上がった。そしてミレオの叔父さんが彼らを迎え入れた。


「ミレオが無事で本当に良かった。安心したよ。本当に大変だったね。」


 ミレオの叔父の名はレオンハルト・バルネスという。彼はミレオの父であるバルザック・バルネスの弟だった。


 レオンハルトはミレオが無事であったことを心の底から喜んだ。でもミレオの表情は叔父を見ても晴れない。ゼルマンを亡くしたミレオを襲う喪失感は計り知れなかった。

 


 レオンハルトは深刻そうな表情をして口を開く。


「これもあの青年が命を賭けて戦ってくれたおかげだ。青年が意識を取り戻してくれることを願うよ。」


ライナがレオンハルトの発言を聞いてハッとする。そして叫んだ。


「ノクトに何かあったんですか!?」


 レオンハルトは自分が知っていることを全て話した。するとライナが叫ぶ。


「ノクトが寝ている部屋はどこにあるんですか!?」


 ライナ達はレオンハルトに連れられて歩いていった。そしてノクトがいる部屋に入る。そこにはベッドの横に腰掛けるエリシアの姿もあった。


「エリシア!」とライナが叫んだ。


 エリシアはライナやミレオの無事な姿を見て一瞬だけ険しかった表情を緩めた。そしてノクトの状態を皆に説明する。

 

 

 ノクトが意識を失っているのは、魔力の使いすぎが原因だった。魔法使いが一定の期間に使える魔力の限界はだいたい決まっている。魔法使いにとって魔力の使い過ぎは命に関わる行為だった。


 ミレオが気を失っているノクトを見て涙する。少年にとって連続する死との直面は余りにも残酷すぎた。


 エリシアはゼルマンが亡くなったことをミレオの様子で知った。ミレオは泣き続けている。そんな少年にエリシアは声を掛けた。


「ザルベックの王子。あなたはゆくゆく王になる。だから強くならないといけない。王が泣いていいのは一人のときだけにしなさい。そうでないと国民が不安になるわ。


 顔を上げなさい王子。あなたはこれからザルベックという国、そこに住む人々を背負うの。だから心では泣いていても、人の前では堂々としなさい。それが王を継ぐ者の宿命よ。」


エリシアはミレオの肩に手を添えた。ミレオは涙を拭う。そして王子は遥か遠い未来を見据えて、何か果てしないものと戦い抜く覚悟を抱いたのだった。

 


 ノクトは5日間寝たきりだった。ライナとエリシアはザルベック城に宿泊させて貰っていた。ノクトが目を覚ましたとき、エリシアは鍛錬のためバルザック城から出ていた。その間、ライナはずっと付きっきりでノクトを見ていた。すると突然ノクトがふと目を覚ます。


「ん?ライナ?おはよう。」


「ノ、ノクトが目を覚ましたぁぁぁ!?」


ライナはノクトに抱き付いた。ノクトは急な衝撃で悲鳴を上げる。


「おはようじゃないよぉぉぉ。どんだけ心配したか分かってるのぉぉぉ⁉︎どうしてノクトがこんなにやられちゃうのよぉぉぉ!本当に心配したんだからねぇ!」


 ライナがすぐさま医者を呼びに行く。すると何人もの人がノクトのいる部屋に入ってきた。皆が歓声を上げる。その中にはミレオの姿もあったが、ノクトが知らない人も沢山いた。


 彼はこの国の英雄になっていたのだ。ノクトが目を覚ました瞬間から、多くの国民がノクトのお見舞いにやってきた。ノクトが命を賭けてザルベックのために戦い抜き、魔王軍からこの国を取り戻してくれたという噂は国中に広まっていた。


 エリシアが面白くなさそうな顔で呟く。


「なんで元魔王軍のあんたがもてはやされるのよ。私なんて戦いの場にいなかったかのような扱いよ。ほんと気を失うって得な話なのね。」


 ノクトは苦笑いしかできなかった。


「俺たちはヴァルグランを倒せなかったんだな。」


「ええ。私たちが生き残っているのは奴の情けね。今は隣国のベルナールにいるはずだわ。」


「今の俺たちの実力では到底に勝てない‥‥」


「ええ。私たちが力を合わせても厳しいわ。だから当分の間はこの国で鍛錬させて貰うことにしたの。」


「え?」と思わずノクトが尋ねた。


「私たちが黒翼将と戦ったヴェルノア学園ってあったでしょ?あそこには優秀な先生たちが沢山いるわ。だから基礎から魔法をやり直すの。あなたも歩けるようになったら鍛錬に励みなさい。特に実戦ではあなたと手を合わせながら戦うことになるわけだから、実践向きの練習もしないといけないわ。」


「そ、そうだな‥‥‥」


「どうして顔を赤らめてるのよ‥‥‥あなたって本当にバカね‥‥‥」


 エリシアが蔑みの目を向ける。ノクトはとぼけた顔をした。



 ノクトの回復は驚くほどに早かった。目が覚めて次の日にはもうエリシアと実践練習をしていた。そして魔王軍がザルベックを去って10日後、魔王軍に殺されたザルベックの人々に向けて、国葬が開かれることになった。もちろんノクトらも出席することにしたのだった。


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