137話 目覚めへの希望
今回もお読み頂きありがとうございます!
ルミナシア帝国。
白い石造りの街並みに広い道が通り、噴水のある広場を馬車が行き交っていた。
庭園は美しく整えられ、人々の身なりや振る舞いにも気品がある。
世界で最も発展した国ともいわれるこの国を、淡い光の結界が包んでいた。
光属性の魔法を使えるのは、この国の王と、その血族だけ。
彼らの光がルミナシアを守り続けていた。
エリシアは仲間たちとノクティルを連れ、王宮へ向かった。
門の前に立つ騎士が、彼女の姿に目を見開く。
「エリシア様……!」
すぐに門が開かれ、帰還を知らせる声が響いた。
「エリシア様がお戻りになったぞ!」
侍女や騎士たちが次々と駆けつける。
「お帰りなさいませ!」
「よくぞ、ご無事で……!」
涙ぐむ者もいれば、笑顔で何度も頭を下げる者もいた。
エリシアは懐かしい顔を見渡した。
「ただいま。みんなも元気そうでよかったわ」
周囲から歓声が上がる。
ノクトたちは少し後ろで、その賑やかな出迎えを見守っていた。
エリシアは仲間たちに待っていてもらい、母の部屋へ向かった。
父である王が亡くなってから、母オーレリアが女王としてこの国を治めていた。
扉を開けると、机に向かっていた母が顔を上げた。
「……エリシア?」
「母様。ただいま」
オーレリアは立ち上がり、娘へ駆け寄った。
次の言葉を口にするより先に、エリシアは強く抱きしめられた。
「よく……無事に帰ってきてくれました」
母の声が震えていた。
エリシアもその背に腕を回す。
「心配をかけて、ごめんなさい」
懐かしい温もりに触れた途端、堪えていた涙がこぼれた。
「会いたかった……母様」
「私もですよ。ずっと、あなたの帰りを待っていました」
オーレリアは娘の髪を優しく撫でた。
二人はしばらく、抱きしめ合ったまま涙を流していた。
やがてエリシアは涙を拭い、旅で起きたことを話し始めた。
仲間たちと戦ってきたこと。
ベルガルド王国で、ノクティルに助けられたこと。
そして彼が、魔王軍を倒すために協力を求めてきたこと。
「あの六魔星のノクティルを、この王宮へ連れてきたのですか?」
オーレリアの表情が険しくなった。
「ええ。まだ信用したわけではありません」
「では、なぜ……」
「兄さんを目覚めさせられるかもしれないと言ったの」
オーレリアが言葉を失った。
エリシアは母の手を握った。
「本当かどうかは、まだ分からない。でも、可能性があるなら確かめたいの」
「エリシア……」
「お願い、母様。兄さんに会わせてほしい」
オーレリアは、娘の手を握り返した。
しばらく迷ったあと、静かに頷く。
「分かりました。ただし、私も立ち会います」
エリシアは仲間たちを呼び、母とともに王宮の奥へ向かった。
集中治療室の前には、二人の騎士が立っていた。
オーレリアの指示で扉が開かれる。
白い寝台に、ルシエルが横たわっていた。
傍らにいた医師が立ち上がり、一行へ頭を下げる。
エリシアはまっすぐ寝台へ歩み寄った。
「兄さん……ただいま」
返事はない。
旅に出る前と同じ顔で、兄は静かに眠っていた。
エリシアはその手を握る。
温かかった。
確かに生きている。それなのに、何度呼んでも目を開けてくれない。
「今日はね、兄さんを助けてくれるかもしれない人を連れてきたの」
声が震えそうになり、エリシアは一度言葉を止めた。
そして、ノクティルへ振り返る。
「……お願い」
ノクティルは寝台のそばに立ち、ルシエルを見つめた。
「後は俺に任せろ」
額へ手のひらをかざす。
エリシアは兄の手を握ったまま、その様子を見守った。
オーレリアも、ノクトたちも、何も言わなかった。
ノクティルがゆっくりと目を閉じる。
やがて、その眉がわずかに動いた。
「……いた」
エリシアは息を止めた。
ノクティルは目を閉じたまま、眠るルシエルへ語りかける。
「迎えに来たぞ、光の勇者ルシエル」
もしよろしければブックマーク登録、ポイント評価をよろしくお願い致します!




