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魔王殺しノクト  作者: 藤原 光希
第二次ルミナリア大戦編

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135/139

135話 ノクティルの提案

今回もお読み頂きありがとうございます!

 ノクティルが右手を入り口へ向けた。


 押し寄せていたアンデッドたちの足が止まる。


 次の瞬間、奇声を上げながら、一体、また一体と膝から崩れ落ちていった。


「何が起きたの?」


 エリシアが呆気に取られる。


 ノクティルは答えず、死王へ目を向けた。


 死王が咆哮し、大剣を振り上げる。


 それでもノクティルは動かなかった。


「もう眠れ」


 振り下ろされかけた大剣が止まった。


 死王の身体が激しく震える。


 何かに抗うように口を開いたが、声は出なかった。


 やがて瞳の赤い光が消え、大剣が手から滑り落ちる。


 巨体は床へ崩れ、それきり動かなくなった。


「倒したのか……?」


 ノクトは杖を構えたまま、ノクティルを見つめた。


「お前、どうしてここにいるんだ」


 ノクティルが四人へ振り返る。


「お前たちに話がある」


 その顔を見たライナが息をのんだ。


「あなた……あのとき、グラヴィルの隣にいた……」


 村を襲われた日の光景が蘇る。


 ライナの拳に炎が灯った。


「今さら、何を話すっていうの!」


「ライナ!」


 ノクトの声が届くより先に、ライナは床を蹴っていた。


 燃え上がる拳が、ノクティルを打ち据える。


 ノクティルはよろめいたが、反撃しなかった。


 ライナはもう一度、拳を振り上げた。


「どうして……!」


 何度も殴りつける。


 ノクティルは避けることもなく、その拳を受け続けた。


「どうして、あんなことをしたの……!」


 ライナの頬を涙が伝った。


 村で暮らしていた人々の顔が、次々と浮かぶ。


 何度殴っても、あの日々は戻らない。


「みんな……あの村で、幸せに暮らしていたのに……」


 声が詰まった。


 拳を包んでいた炎が消え、震える手だけがノクティルの胸を叩く。


 やがて、その手も止まった。


 ライナは俯き、涙を拭った。


 ノクティルは唇から流れる血を拭わず、頭を下げた。


「……すまなかった。あの村で自分がしたことを、後悔している」


 ライナは答えなかった。


「許されるとは思っていない」


 ノクトはライナの隣に立ち、ノクティルを見据えた。


「それで、何しに現れたんだ」


「魔王軍を潰そうと思っている」


 全員が目を見開いた。


 俯いていたライナも顔を上げる。


「……お前、六魔星だろ?」


 ノクトは杖を握り直した。


「そのお前が、魔王軍を潰すっていうのか?」


「ああ。俺はずっと機会をうかがっていた。動くなら今しかない」


 ノクティルは倒れた死王へ目を向けた。


「今、魔王軍は二つに分かれている。グラヴィルがネクロシアを率いて、新魔王軍を設立したんだ」


「新魔王軍……?」


「奴らはゼルクを倒し、魔王軍に取って代わろうとしている。この国のアンデッドも、ネクロシアが生み出したものだ」


「だから、アンデッドと魔王軍が争っていたのね」


 エリシアの言葉に、ノクティルが頷いた。


「互いに争っている今なら、両方を潰せるかもしれない。お前たちにも力を貸してほしい」


「どうして、そこまでして魔王軍を潰したいんだ?」


 ノクトが尋ねた。


「説明すると長くなる」


「それで納得しろっていうの?」


 エリシアは聖剣を下ろさなかった。


「私たちを助けたからって、あなたを信じられるわけじゃないわ」


 ノクティルは彼女を見つめた。


「ルミナシアへ連れていってくれ」


「……何ですって?」


「お兄さんは、まだ生きているのか?」


 エリシアの表情が変わった。


「どうして、兄のことを知っているの?」


「俺が幻術であいつを生かした。グラヴィルたちは死んだと思っているがな。今は、どうしているんだ?」


 エリシアは予想外な言葉を聞いて、頭が真っ白になった。


 聖剣を握る手に力がこもる。


「……生きているわ。でも、ずっと眠ったままなの。何をしても、目を覚まさない」


「俺が目を覚まさせてやる」


 エリシアが息をのんだ。


「そんなことが、できるの?」


「生きているなら、できる可能性はある。会わせてくれ」


 ノクティルは四人へ頭を下げた。


「今すぐ信じろとは言わない。お兄さんが目を覚ましたら、俺を信用して一緒に戦ってほしい」


 誰もすぐには答えなかった。


 ライナは涙の残る瞳で、ノクティルを見つめている。


 エリシアも、聖剣を下ろせずにいた。


「頼む。二つの魔王軍を潰すなら、今しかないんだ」


 ノクトは仲間たちへ目を向けた。


 六魔星として恐れていた男が、今は目の前で頭を下げている。


 その男と手を組むのか。


 ノクトたちは、答えを出さなければならなかった。

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