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魔王殺しノクト  作者: 藤原 光希
雪精王国セレナリア編

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131/139

131話 強く生きていこう

いつもお読み頂きありがとうございます!

 セラフィーヌを包んだ氷は、どれほど時間が経っても溶けなかった。


 ノクトの黒焔でも、エリシアの聖なる光でも、表面に傷一つつけられない。


 氷の中で、セラフィーヌは静かに目を閉じていた。


 まるで長い眠りについているようだった。


 セラフィーヌとの戦いが終わり、王都に残っていた魔王兵も退却した。


 長く国を覆っていた恐怖は消え、ノクトたちはセレナリア王国を救った。


 それでも、誰も心から勝利を喜ぶことはできなかった。


 翌朝。


 ノエルは一人、王都の外れにある川辺に座っていた。


 雪解け水が朝の光を反射しながら静かに流れている。


 手の中にはセラフィーヌから託された氷晶のペンダントがあった。


「姉さん……」


 幼い頃の記憶が蘇る。


 二人で歩いた雪原。


 転びそうになった自分を、姉が何度も支えてくれた。


『姉さんは、いつも僕を守ってくれるね』


『あなたが危なっかしいだけよ』


『じゃあ、僕も大きくなったら姉さんを守ってあげる』


 あの日に交わした約束を、ノエルはまだ果たせていない。


「どうして……幸せになることは、こんなにも難しいんだろう」


 声が震え、ペンダントを握る手に力が入る。


 ノエルは流れ落ちた涙を拭い、川の向こうを見つめた。


「でも、諦めないよ」


 もう二度と、大切な人を一人にはしない。


「いつか絶対に、あの氷から出してあげるからね」


 そのとき、背後から足音が聞こえた。


「ここにいたんだね」


 振り返ると、ライナが立っていた。


「ライナ……」


「隣、座ってもいい?」


「うん」


 ライナはノエルの隣に腰を下ろした。


 しばらくの間、二人は何も言わずに川を眺めていた。


「僕は、姉さんを守るって約束したんだ」


 やがて、ノエルが口を開いた。


「それなのに、最後まで守ってもらってばかりだった。僕は結局、姉さんを守れなかったんだ」


「そんなことないよ」


 ライナは優しく首を振った。


「ノエルは、ずっと私たちを守ってくれた。最後まで諦めずに、お姉さんにも手を伸ばし続けた」


「でも、姉さんは今もあの氷の中にいる。僕には助けてあげられない」


「今すぐには、難しいかもしれない」


 ライナはノエルの悲しみから目を背けず、静かに言葉を続けた。


「でも、これから一緒に助ける方法を探そう」


「一緒に……?」


「もちろん」


 ライナは、いつものように優しく笑った。


「ノクトも、エリシアも、私もいるよ。ノエル一人で背負わなくていいんだよ」


「ライナ……」


「生きることは、簡単なことじゃないよね」


 ライナはゆっくりと流れる川へ目を向けた。


「悲しいこともある。どれだけ頑張っても、大切な人を守れなかったと思う日もある」


 そして、ノエルの肩にそっと手を置いた。


「それでも生きていれば、もう一度手を伸ばせる。今日できなかったことも、いつかできるようになるかもしれない」


 ライナの手から、優しい温もりが伝わってくる。


「だからこそ、みんなで強く生きていこう」


 ノエルは手の中のペンダントを見つめた。


 ひび割れた氷晶に朝の光が差し込み、淡く輝いている。


「うん」


 ノエルは涙を拭い、立ち上がった。


「僕は必ず、姉さんを助ける」


 もう一度、セラフィーヌと笑い合うために。


 今度こそ、自分が姉を守るために。


 ノエルはペンダントを胸に下げ、ライナとともに仲間たちの待つ場所へ歩き始めた。

最後までお読み頂きありがとうございました!


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