↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王殺しノクト  作者: 藤原 光希
雪精王国セレナリア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
114/139

114話 不死身のエル

いつもお読み頂きありがとうございます!今回もぜひお楽しみ下さい!

 エルと向き合った瞬間、エリシアの背中を冷たい汗が伝った。以前戦ったときとは比べものにならない。少し離れていても分かるほど、エルの魔力は強くなっていた。


「ライナ、ノエル。気をつけて。あいつは私が相手をするわ」


「分かった」


「うん」


 エルは三人の顔を順番に見たあと、辺りを見回した。


「ノクトさんはいないようですね」


「あなたに教える必要はないわ」


「そうですか」


 エルは笑顔を崩さないまま、後ろにいる魔王兵たちへ目を向けた。


「ここは僕が引き受けます。皆さんは二手に分かれて、王宮へ向かってください」


 魔王兵たちが大通りの左右に分かれていく。


「行かせないわ!」


 エリシアは聖剣を振り抜いた。


「光華一閃(こうかいっせん)!」


 まぶしい光の斬撃が、魔王兵たちへ飛んでいく。


 だが、その前にエルが立ちはだかった。


 剣を一度振っただけで、光の斬撃が真っ二つに切り裂かれる。


「そんな……」


「以前の僕と同じだと思わないでください」


 エルの銀髪から、翡翠色の炎が大きく立ち上がった。


「僕は不死鳥(フェニックス)と契約し、新たな力を手に入れました」


 エリシアは動揺を押し殺し、聖剣を構え直した。


「どれだけ強くなっていても、ここは通さないわ」


「残念です。僕もできれば、皆さんとは戦いたくなかったのですが」


「騎士を何人も斬っておいて、よくそんなことが言えるよ!」


 ライナが怒りをにじませる。


 エルは血に濡れた剣を静かに構えた。


「命令ですから」


 エルの足元に風が巻き起こる。


「風階(ふうかい)・参《烈風(れっぷう)》」


 次の瞬間、その姿が消えた。


「エリシア!」


 ライナの声が響いたときには、エルがエリシアの目の前にいた。


 エリシアは反射的に聖剣を持ち上げる。


 二本の剣が激しくぶつかり、エリシアの体が後ろへ押し飛ばされた。


「くっ……!」


「エリシアから離れて!」


 ライナがエルの横へ飛び込む。


「烈焔轟拳(れつえんごうけん)!」


 炎をまとった拳が、エルの顔へ迫った。


 だが、その拳は空を切る。


 エルはすでにライナの背後へ回り込んでいた。


「遅いです」


 振り下ろされた剣が、ライナの肩へ迫る。


「ライナ!」


 ノエルが両手を前へかざした。


「氷晶障壁(ひょうしょうしょうへき)!」


 二人の間に氷の壁が現れ、エルの剣を受け止めた。


 氷の壁に大きなひびが走る。


「助かったよ、ノエル!」


 ライナが飛びのいた瞬間、エリシアが踏み込んだ。


「聖刃一閃(せいじんいっせん)!」


 白い光の刃が一直線に走る。


 エルは体をひねって避けようとしたが、光の刃が左腕を深く切り裂いた。


 鮮血が雪の上へ飛び散る。


 だがエルは痛がる様子もなく、自分の傷へ目を向けた。


 銀髪の先で揺れていた翡翠色の炎が、傷口を包み込む。


 裂けていた傷がみるみるうちに塞がり、流れていた血も止まった。


 わずか数秒で、傷は跡形もなく消えていた。


「傷が……治った?」


 ノエルが目を見開く。


 エルは何事もなかったように剣を構え直した。


「この炎がある限り、僕は何度斬られても死にませんよ」


「本当に不死身ってこと……?」


 ノエルの声が震える。


「そんなの、どうやって倒せばいいの……?」


 ライナも信じられない様子でエルを見つめていた。


 エリシアは聖剣を握り直す。


「なら、動けなくなるまで攻撃するだけよ」


「威勢がいいですね」


 エルの姿が再び消えた。


 だが、今度はエリシアも目を逸らさなかった。


 右から雪を蹴る音が聞こえる。


「そこね!」


 振り向きながら聖剣を振ると、エルの剣と激しくぶつかった。


「ライナ!」


「任せて!」


 ライナがエルの脇腹へ拳を放つ。


 エルは後ろへ跳んで避けた。


 だがその着地点には、すでにエリシアが踏み込んでいる。


 二人の攻撃が休む間もなく襲いかかった。


 エリシアの斬撃を受け流し、ライナの拳を紙一重でかわしていく。


 それでも、二人の攻撃はエルを捉えられない。


「二人とも!」


 ノエルが両手を前へかざした。


「雪精同調(せっせいどうちょう)!」


 淡い光をまとった雪の精たちが現れ、エリシアとライナの背中へ溶け込んだ。


 乱れていた呼吸が整い、重くなっていた体が軽くなる。


「ありがとう、ノエル!」


 ライナが一気に間合いを詰めた。


「灼魂連砕(しゃっこんれんさい)!」


 炎をまとった拳が、エルへ次々と襲いかかる。


 エルは剣で受け流していくが、すべては防ぎきれない。


 一発の拳が脇腹へ突き刺さった。


「今だよ!」


 体勢を崩したエルへ、エリシアが聖剣を振り抜く。


「聖刃連鎖(せいじんれんさ)!」


 いくつもの白い斬撃が、エルの体を切り裂いた。


 その直後、ライナの最後の拳が胸へ叩き込まれる。


 大きな爆発が起こり、エルの体が通り沿いの建物へ吹き飛んだ。


 壁を突き破り、瓦礫の中へ消えていく。


「やった……?」


 ノエルが壊れた建物を見つめる。


「まだよ」


 エリシアは聖剣を下ろさなかった。


 崩れた壁の奥で、翡翠色の炎が揺れている。


 瓦礫を押しのけ、エルが立ち上がった。


 服は裂け、全身から血を流している。


 それでも傷は翡翠色の炎に包まれ、次々と塞がっていった。


 エルは傷がすべて消えると、再び剣を構えた。


「三人とも、以前より強くなりましたね」


「今ので倒れないなんて……」


 ライナの額を汗が伝う。


「ですが、僕を倒すことに夢中になっていていいのですか?」


 エルの言葉に、エリシアは大通りの先へ目を向けた。


 二手に分かれた魔王兵たちは、すでに大通りから姿を消している。


「まさか……」


「僕の役目は、皆さんをここで足止めすることです」


 エルは笑みを浮かべた。


「もう十分に時間は稼げました」


 エリシアは唇を噛んだ。


 最初からエルを倒すことばかり考えさせるのが狙いだったのだ。


 このまま三人で戦い続ければ、魔王兵たちが王宮へたどり着いてしまう。


 だが、エルを放っておけば背後から追いつかれる。


「ライナ、ノエル。二人は王宮へ向かって」


「エリシアはどうするの?」


「私がエルを止めるわ」


「一人じゃ危険だよ!」


 ライナが声を上げる。


「エルの速さに正面からついていけるのは、私だけよ。二人は魔王兵を追って」


「でも……」


「このまま三人でここに残るほうが危険よ。王宮には国王もたくさんの人たちもいるわ」


 エリシアは二人をまっすぐ見つめた。


「お願い。二人にしか頼めないの」


 ライナは拳を強く握った。


 しばらく迷ったあと、ゆっくりとうなずく。


「絶対に追いついてきてね」


「ええ」


「約束だからね」


 ノエルも不安そうにエリシアを見つめた。


「無茶しないで」


「大丈夫よ。ここで死ぬつもりはないわ」


 ライナとノエルが王宮へ向かって走り出す。


「行かせませんよ」


 エルが二人の後を追おうとした。


 その瞬間、エリシアの体から白金の光が広がった。


「聖圧光臨(せいあつこうりん)!」


 重い光の圧力が、エルの全身へ叩きつけられる。


「っ……!」


 エルの足が雪へ沈み、周りの地面に亀裂が走った。


 どれだけ速くても、一歩も動くことができない。


 その間に、ライナとノエルは路地の向こうへ消えていった。


 エリシアは魔法を解き、荒い息を吐いた。


 すでに体は限界に近い。


 それでも、聖剣を握る手から力は抜かなかった。


「ここからが本番よ」


 エルの銀髪から、翡翠色の炎が激しく立ち上がる。


「一人で僕を止められると思っているのですか?」


 エリシアは剣先をエルへ向けた。


「当たり前よ」


 白金の光が、聖剣を包み込む。


「さあ、粛清を始めるわ」


「僕は死にませんよ」


「なら、何度でも斬るだけよ」


「ふふっ」


 エルが楽しそうに笑った。


 二人の間を、冷たい風が吹き抜ける。


 次の瞬間、エルが雪を蹴った。


 エリシアも聖剣を握り締め、真正面から駆け出した。

お読み頂きありがとうございました!もしよろしければポイント評価、ブックマーク登録をよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。