101話 雪女たちとの戦い
長い間かかりましたが、全話の改稿が終了しました!これからは最新話の創作にとりかかっていきます!
無数の氷の刃が、洞窟の天井から降り注いだ。
「ライナ!」
ノエルが叫ぶ。
「分かってる!」
ライナは前に飛び出し、拳に炎のマナを込めた。
「烈焔轟拳!」
燃え上がる拳が、氷の刃をまとめて砕いた。
砕けた氷は細かな粒となり、洞窟の中に散らばっていく。
だが雪女たちは止まらない。
「凍りなさい」
一人の雪女が両手を広げた。
地面から氷の鎖が伸び、ライナの足首に絡みつく。
そのまま身体ごと固定しようとしてきた。
「くっ、またこれ!」
「任せて!」
ノエルが杖を構える。
「雪精よ、凍てつく鎖を解いて!」
淡い光がライナの足元を包み込んだ。
氷の鎖は、ぱきぱきと音を立てて割れていく。
「助かった!」
「まだ来るよ!」
別の雪女が白い息を吐いた。
吹雪のような冷気が一気に広がり、ノエルの足元まで凍りついていく。
「ノエル!」
エリシアが前に出た。
剣に光のマナを宿し、横一文字に振り抜く。
「光刃!」
光の斬撃が冷気を裂いた。
吹雪は左右に割れ、洞窟の壁に叩きつけられる。
「あなたたち、思ったよりしつこいわね」
最初の雪女が、不機嫌そうに目を細めた。
「こっちの台詞よ」
エリシアは剣を構え直す。
「人をさらって氷漬けにしておいて、ただで済むと思わないことね」
エリシアが地面を蹴った。
一気に間合いを詰める。
だが雪女の身体は霧のように揺らぎ、剣はまた空を斬った。
「無駄よ。私は雪そのもの――」
「さっき聞いたわ」
エリシアはすぐに剣を返した。
光のマナが刃から広がり、雪女の霧の身体を包み込む。
「光は霧すらも逃がさないわ」
雪女の身体が、わずかに固まった。
「なっ……!」
「今よ、ライナ!」
「任せて!」
ライナが氷の床を蹴って飛び込む。
拳に紅蓮の獅子の霊が宿った。
「紅蓮獅霊召喚――烈焔轟拳!」
炎をまとった拳が、雪女の腹に叩き込まれる。
「きゃああああっ!」
雪女は吹き飛び、氷の壁に激突した。
壁に大きなひびが入る。
だが、倒れたのは一人だけだった。
残った雪女たちが、一斉に手を掲げる。
「凍てつく眠りに落ちなさい」
洞窟全体の温度がさらに下がった。
エリシアたちの吐く息が白くなる。
指先が痺れ、身体の奥まで冷えていく。
ノエルはすぐに異変に気づいた。
「まずい。この冷気、体の中のマナまで凍らせようとしてる」
「つまり?」
ライナが聞く。
「長引くと動けなくなる!」
「なら、早く終わらせるしかないわね」
エリシアは剣を強く握った。
だがその足元に、氷の槍が突き上がる。
「くっ!」
エリシアは身をひねって避けた。
しかし完全には避けきれず、腕をかすめる。
血が白い床に落ちた。
「エリシア!」
「大丈夫よ。これくらい」
強がってはいるが、エリシアの動きは少し鈍っていた。
ライナも息を荒くしている。
炎のマナで冷気に対抗しているが、相手の数が多い。
長引けば押し切られる。
ノエルは二人を見て、杖を握りしめた。
「僕が隙を作る」
「ノエル?」
「二人は、その隙に一気に倒して」
ノエルは杖を地面に突き立てた。
「雪精よ。お願い、力を貸して」
ノエルの周囲に、小さな雪の精霊たちが集まり始める。
それは、セレナリアの雪に宿る精霊たちだった。
雪女たちの表情が変わる。
「まさか……その魔法……」
「この国の精霊に命じられるなんて……」
ノエルはフードの奥で、静かに息を吐いた。
「僕はこの国に嫌われている」
その声は小さかった。
けれど、はっきりと洞窟に響いた。
「でも、精霊たちはまだ僕の声を聞いてくれる」
次の瞬間、洞窟の中に優しい雪が舞った。
その雪は冷たくなかった。
エリシアとライナの身体に触れると、凍りついたマナをゆっくり溶かしていく。
「体が軽い……!」
「すごい、ノエル!」
反対に、雪女たちの身体には白い光の結晶がまとわりついた。
「動けない……!」
「これは……精霊の封印……!」
ノエルは歯を食いしばる。
「長くはもたない!今!」
エリシアとライナが同時に動いた。
エリシアの剣に光が集まる。
「光華一閃!」
光の斬撃が、一体目の雪女を斬り裂いた。
ライナの拳には炎が宿る。
「烈焔連砕!」
連続で放たれた炎の拳が、二体目、三体目の雪女をまとめて吹き飛ばす。
最後に残った雪女が、ノクトの眠る氷の台座へ手を伸ばした。
「なら、この男だけでも――」
「させない!」
ノエルが叫ぶ。
雪の精霊がノクトの周りに集まり、透明な壁を作った。
その一瞬で十分だった。
エリシアが雪女の背後へ回り込む。
「終わりよ」
光をまとった剣が振り下ろされた。
雪女の身体は大きく揺らぎ、そのまま氷の粒となって崩れていった。
洞窟に静けさが戻る。
吹雪の音も、冷たい笑い声も、もう聞こえない。
ライナはその場に座り込み、大きく息を吐いた。
「勝った……よね?」
「ええ。なんとかね」
エリシアも剣を下ろした。
腕から血は流れていたが、その表情には安堵があった。
ノエルはすぐにノクトの元へ駆け寄る。
「ノクト! 起きて!」
ノクトは氷の台座の上で、まだ呑気に眠っていた。
「……焼き魚……もう一匹……」
三人は一瞬、黙った。
そしてエリシアが深いため息をつく。
「人が必死に戦ってる時に、なんて夢見てるのよ」
ライナは安心したように笑った。
「でも、生きててよかった」
ノエルはノクトの額に手を当て、眠りの魔法を解いていく。
その間に、氷の柱に閉じ込められていた男たちの氷も、少しずつ溶け始めていた。
雪女たちは倒された。
集落の人々は、きっと救える。
そう思った瞬間、三人の張り詰めていた心がようやくほどけた。
もしよろしければポイント評価、ブックマーク登録をよろしくお願い致します!




