3.
ふと、気がつくとクロウの目の前には、見知らぬ白い天井があった。明らかに家ではないなと思い身体を起こして辺りを見回すと自分が病室にいることがわかった。
(病室……?なんで、)
何が起こったのか分からずにいると「クロウッ!」と父の声が聞こえた。
顔を上げると病室の入り口に父親である秋葉シロウが立っていた。
「気がついたんだなッ!」
シロウは、そう言いながらクロウの側に駆け寄ると、ぎゅっと抱きしめた。
「あ、」
「よかったッ!本当によかったッ」
シロウは、涙を流しながら噛み締めるようにそう言った。
「父さん……」
「よかった、よかった……」
「……心配かけて、ごめん……」
クロウは、ポツリとそう呟いた。
「いや、いいんだ。お前は、何にも悪くない。気にするな。それじゃ、俺は先生を呼んでくるからな」
シロウは、そう言う病室から出て行き、しばらくして丸い銀縁メガネを掛けた六〇くらいの男性医師を連れて戻ってきた。
「先生、どうですか?」
「どうですかって、精密検査をしてみないとなんとも言えんよ」
診察を終えた医師は、少し馬鹿にしたような態度でそう言った。「ま、見た感じ完治してるようには見えるけどね」
そう言うと医師は、病室から出て行った。
「感じ悪……」
「ハハ、あれでも名医なんだぞ?あの人は、」
「本当?全然そういうふうには、見えないけど……」
「人間、見かけじゃないからな」
シロウは、そう言うと軽く笑いながらクロウの肩を軽く叩いた。
「見た目は怖そうだけど、実はいい人みたいな?」
「そういうことだ。見かけで判断するとエライ目に会うからな。気をつけろよ?」
「はいはい。わかったよ。ところでさ、」
「ん?」
「俺は、何で入院してるの?」
「ん?あー、そうか。そうだよな。うん、そりゃそうだ」
シロウは、そう言うと軽く頷いた。
「一人で納得しないでよ」
「ハハ、すまん、すまん」
シロウは、笑いながらそう言うとクロウの目の前に新聞を置いた。
「まあ、俺が話すよりコレを見た方が早いだろ」
新聞には、駿河電気鉄道の運行する都市中央線で脱線事故があったと書かれていた。
「結構、大規模な事故だったらしい。ニュースにもなったよ。まあ、死者が一人も出なかったのが幸いだな。まさに奇跡だよ」
「で、この事故と俺となん……。まさか、この事故を起こした電車って……」
クロウは、新聞を見ながらそう言うとシロウの顔をじっと見つめた。
「そう。お前が乗ってた電車だよ」
シロウがそう言うと、クロウは、あっ、と小さな声を上げた。
あの時、電車にサクヤも乗っていたと気がついたからだった。
「ねえッ、サク、サクヤはッ⁉︎同じ電車に乗っていたんだッ」
「ああ、サクヤ君なら昨日、退院してったよ。確か、今日、お見舞いにくるって言ってたかな?」
「そう、よかった……」




