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34.決戦、大門交差点

「もう追いついたの…このストーカー野郎」


息を切らし膝に手をつきながら悪態をつく。


直人はただ命じる。


れ」


あたしはどうにもならない状況でただスキルペインを構えた。

どうにかしようというより諦められないだけ、最後の最後まで。


「……」


囲む群衆は微動だにしない。


しばしの静寂の後、聞き覚えのある女性の声が耳に入ってくる。


「あの、ちょっと、通してもらえませんか…あっ、もう少し…」


あたしは声のする方を見ると、声の主は人と人の間を縫って姿を現した。


「おっ、やっと会えた。茜香、大丈夫だった?怪我してない?」


緊張感に欠けた声にあたしは困惑したが、その顔を見て嬉しかったがそれより驚きが大きかった。


「麗美!なんでここに?」


「言ったでしょ?困った時にはそばにいるって」


「そんなこと言ったってなんで…」


「まあまあ。そんなことより…」


麗美はあたしに向けたドヤ顔から表情を険しくして直人に視線を移す。


「茜香を弄んだこと、後悔してもらうよ、直人さん」


群衆が直人を押し倒し、拘束するように取り押さえた。


「なんの真似だこれは?」


「そこでしばらく大人しくしててね。まだみんな集まってないから」


直人に対し、淡々と答える麗美。


「茜香、調子どうよ?」


群衆の間から現れたのは見慣れた姿。


「真理亜!」


「おっ、なんだ、元気そうじゃん。ちなみに麻耶も連れてきたよ」


真理亜の手には首根っこを掴まれいじけてる麻耶。


「僕はこのままでいいのに…」


「未練たらしい!男でしょ!シャキッとしなさいよ!」


「お姉さん!こんばんは!」


声の方を見ると、そこにはかやちゃんと中村。


「かや!勝手にいくなって!迷いそうになっただろ!…おっ、和田。奇遇だな!今バイト終わりで…」


「セリカさあーん!」


人混みの向こうから声がする。これは多分というか絶対…


「ナオです!セリカさん、助けに来ましたよ!」


どさくさに紛れて抱きついてこようとしたナオをスキルペインで制した。


こいつは直人とのデート帰りに遭遇した謎の男。その正体はナオだったってこと。


「なんかあんた、王子のオーラがなくなっちゃってて、ザ・一般人って感じ」


「セリカさん!僕のこと、わかるんですね!」


いや今さっき自分の名前言ったじゃない…


「なぜかここに着いた時にはこの姿になっていて!それでもセリカさんを愛するきも…」


「いい加減にしてくれないか?」


呆れかえったような声で直人はあたしたちに呼びかける。

それに麗美は答える。


「そうね、もういいかも。先にネタバラシしておくと、これはあたしのスキル、ウェヌスタ・インペラトル。例えあなたの世界だろうが、みなあたしの下僕…いや、表現が悪いかな…あたしのファンになったの。だからあなたの言うこと一切聞かないってこと。それじゃあ、さよなら」


麗美は指をぱちんと鳴らす。それを合図に一斉に人々が一点に群がった。


人々に覆い埋め尽くされ、直人の姿が見えなくなろうとした時、薄ら笑いを浮かべた顔が見えた。


「伏せて!」


嫌な予感がしたあたしは思わず叫ぶ。


その瞬間、人がピンポン玉のように弾けて四方に跳ね飛ぶ。身を屈めたことでなんとか避けられたものの、驚きを隠せなかった。


「それで?これからどうしようと?」


何事もなかったように直人は起き上がり、埃を払いながら言った。


その姿を見て、中村は目にも止まらぬ一矢のように向かっていき、打撃を入れる。


しかし、直人の顔面目掛けた蹴りは寸前で防がれた。


それからはお互い拳の応酬。とてもじゃないけど速すぎて目で捉えることはできない。


最中、中村は重い一撃を喰らったのだろう、殴り飛ばされてあたしたちの元へ帰ってきた。


「…マジかよ」


衝撃の割には何ともなさそうだったが、中村は悔しさ混じりに呟いた。


「もういいだろう。よく見ておけ。世界の終わりだ」



♦︎♦︎



「うっそ…何でもありね…」


真理亜がそう言うのも無理はない。

直人が宙に浮かび、昇っていくのを見たから。


月や星々の輝きを覆い隠すように、頭上には黒い渦状の雲が広がっていった。

ビルは軋む様子が一切なく天辺からバラバラに砕けていき、破片や瓦礫はゆっくり吸い込まれるように天へと上昇していく。


「ここで終わらしても良いが、気が変わった。すべてリセットする。この世界の何もかもを。安心しろ。また新たなこの世界で出会えるからな。またお前らが歯向かってくればその時はまた作り直す。何度も何度も…きっとあっさり死ぬより苦しいぞ!」


直人は勝ち誇るように声高に言い放った。

逃しちゃダメなのはわかってる。何か手立てが…


「…また僕とセリカさんの仲を引き裂こうと?そんなこと許せるはずがない…断じて!」


ナオは手を掲げて叫んだ。


「フラン・インペラトル!」


強烈な炎が空を走る。全てを燃やし尽くさんばかりの豪炎。


爆音をたてて直人に直撃。

だが、煙が晴れた先には悠然と変わらぬ姿があった。


「末恐ろしいスキルだとは思うが、足りないな」


そう言うと直人は指を1本たてて下ろした。

空中を埋め尽くしているうちの瓦礫のひとつが猛スピードでこちらへやってくる。


「うおんどりゃあ!」


着弾間際の瓦礫を聞いたことのない声を上げながら真理亜は拳ひとつで木っ端微塵に砕いた。


「へえ、ならこれならどうだ」


直人は片手を挙げた。


その手を振り下ろすと同時に無数の瓦礫があたしたちに襲いかかる。

ひとつひとつがまるで隕石かのよう。轟音をたてながら次々と間を開けずにぶつかってくる。


「これは…さすがに長くはもたないかも…」


麻耶が咄嗟に防御スキルを発動してくれたおかげで何とか一時凌ぎでも難を逃れることができた。


「さて、どうしましょう?」


麗美の空気を読まない呑気な調子は、わずかでもあたしに冷静さを与えてくれた。


「お姉さん、思うんですけど、決着はお姉さんがつけなきゃいけないような気がします」


「かやちゃん…うん、その通り。だから力を貸してくれる?」


「もちろんです。あたしのスキル、ウィス・インペラトルは心がつながりあっている人をすっごく強くすることができるスキルです。お姉さんとあたしならきっとできますよ。頼ってくださいね」


「そうだね、ありがと。みんな聞いて…」


あたしは作戦とは到底言えない作戦をみんなに伝えた。



♦︎♦︎



「もう無理だよ!もたないよ!ねえ早くしてよ!」


暫しの作戦会議は麻耶の声で終わりを迎えた。


「麻耶もちゃんと聞いてた?」


「えっ、ああ…うん!なんとなく!」


「じゃあみんな、よろしくね」


あたしはみんなの顔を見渡した。


「…うまくいったらこれで茜香とお別れになっちゃうね」


珍しく麗美は寂しそうにそう言った。


「思い出もっと作りたかったな」


真理亜が作り笑いを浮かべながら言った。


「悲しいですけど前に進まなくちゃですもんねっ」


明るく振る舞いながらかやちゃんは言った。


「やめてよ…戻りたくなくなっちゃうじゃん…」


あたしは誰にも顔が見られないように、声が聞こえないように呟いた。


「なんか湿っぽくなっちゃったな!そうだ、みんなで円陣組もうぜ!」


こんな時でも調子のいい中村の提案にみんな顔を見合わせ戸惑うも、笑いがこみ上げてくる。


「ほら!いいから集まれって!」


中村の誘導であたしたちは円陣を組んだ。


「こういうときってなんていうの?」


「勝つぞ!おおー!でいいんじゃない?」


「セリカさん!愛してるぞー!がいいとおも…」


「いいからもうそういうの」


「はい、すみません…」


「ねえ!なんでもいいから早くしてよ!もう耐えられなくなってきたんだけど!?」


「なんか照れるなこういうの…じゃあいくよ…勝つぞ!」


あたしたちの掛け声は何よりも大きく響き轟いた。

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