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Procursator   作者: 来栖れな
第10章 ふたりの英雄が辿りし道は
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10-4

更新しばらく遅れてしまいすみません…

先週までの私は仕事が忙しいからなどと言い訳をし、執筆をサボる反逆者(コミー)でしたが、今回は完璧で幸福な市民です。

(ネタわからない人はふざけてるだけなのでスルーして下さい。)

「…へぇ〜、それで俺がベットで貼り付けになってる間、お前はミアのスパルタ乗馬特訓してたってことか。」


「なんとかしろよあの暴言女っ!口は悪い、すぐ手が出る、俺に敬意の欠片もないっ!全くとんだ野蛮人じゃねーか?」


そう俺に愚痴りながら、俺の隣で馬上で揺られているランスロットは、3日前まで馬に触ったことすらなかったとは思えない乗馬を繰り広げている。


「…でも、普通なら3日で駆け足までできるって中々ないと思うぞ〜。ミアのおかげだろ?」


「あのガサツ女じゃなくて、俺の運動センスと器用さのおかげだろ?俺様をお前ら凡人と一緒にすんな。」


少し苛立ったせいか、ランスロットの周囲でピリッと電流が走ったのに、奴を乗せた芦毛の馬が怯えたように耳をビクッと動かしている。

そんな隣の怯えを察してか、俺を乗せた愛馬、ヴァイオレットがその芦毛の馬の首元を宥めるように淡く()み、怯えを落ち着かせようとする。


「よぉ〜し、ヴァイオレット。相変わらず、お利口さんだな。」


褒めるように首元の、青毛の美しい毛並みを撫でてやれば、当然のことをしたまでだと言いたげに小さく鼻を鳴らす。


「…その馬、赤髪のなのか?」


「その呼び方は辞めろ。」


そんな慣れた俺たちのやりとりに疑問を持ったのだろう。

ランスロットが片眉を上げ、怪訝そうな表情を浮かべ、俺に問いかける。


「あぁ、ヴァイオレットは俺が昔、ルーマに置いていった俺の愛馬だからな。」


「でもあの女もいつもその黒いの乗ってるぞ?」


「あぁ〜…たぶんそれ、俺が昔ミアをヴァイオレットに一緒に乗せることで乗馬を教えたから、ミアにとってもヴァイオレットが1番乗り馴れちまったんだろ。」


「…なるほど。つまり、あのクソみたいな乗馬の教え方はお前譲りってことか。あとで一発雷落とさせろ。」


俺の説明で新たな事実を見つけてしまい、一層不機嫌さを増したランスロットが、俺に向かってそれはいい物騒な笑顔を浮かべながら、その表情を裏切らない言葉を吐き捨てる。

2日前、ベットから出れるようになり、散歩していた時に見たあの光景が原因なのだろう。

あの相乗りで強制的に身体に馬上感覚を覚えさせる方法は、どうやらこのお坊ちゃまのお気には召さなかったらしい。


俺たちはこの1週間ほど世話になったルーマの奴らとともに、英雄平原をさらに北上している。

彼らは普段1週間、2週間置きで拠点とするテントの位置を変える。

俺たちもそれに便乗し、途中まで一緒に移動させてもらうことにしたのだ。

この移動集落の者たちは、家畜のために度々場所を変えるということもあるが、彼らの自身のために場所を点々としているとも言えるだろう。

なんせ彼らの殆どは難民。

それも、王国によって滅ぼされた小国の生き残りばかりなのだから。


-しかし…

前方で栗毛の馬に跨り、家畜たちやそれを囲み誘導する者、そして荷物を背負う馬の手綱を引く者たちを先導する小さな背中をじっと見つめる。

記憶の中の幼い頃よりだいぶ大人で、それでいてどこか彼女の育ての姉を思わせるその姿に、複雑な感情が湧き上がる。

-よくミアはコイツと普通に接してられるな。

決して忘れることが出来ない。10年前の光景を思い出し、苦々しいものが胸の内に広がる。


「あの女の姉は、俺の国に殺されたんだってな。」


そんなことを考えていたのが表情に出ていたのか、ランスロットがまるでタイミングを計ったような、そんな話題を振ってきた。

それと同時にミアが、わざわざランスロットにその話をしたのかと、心底驚いた。


「ミアが………話したのか?」


「あぁ、そのくせ俺のことを恨むどころか哀れだとのたまいやがった。…全く、とんでもない無礼者だっ。」


俺の動揺を孕んだ問いに、そう答えたランスロットだが、意外にその表情はニヤニヤと面白がっているような顔をしていて、ミアのことも何だかんだ気に入ってるんだなと見て取ることができた。


「お前は俺を殺したくならないのか?」


だから、油断していた時に投げつけられたこの質問に、思わず俺はヒュッと息を飲み込んだ。

-何を言うかそんなの…


「お前の故郷も、家族も裏で手を回していたのはあの狸じじいだ。今だってお前は命を狙われ続けてる。なぜ俺を、あのじじいを、そしてダニエルを殺そうとしない?」


何も言わずに黙っている俺に、なおもランスロットは言葉を畳み掛ける。

馬上の俺の様子に変化を敏感に感じ取ったヴァイオレットが不安そうに耳を忙しく動かしている。


「あのミアとかいう奴も可笑しいと思うが…お前は一層不気味だ。そこまで大切なものを奪われておいて、なぜ何もせずに居られる?なぜ報復しようと思わない?…お前は生きていてさながら死んでいるようだ。」


ランスロットはなお言葉を重ねながら、俺の一挙一動、その刹那の感情の移り変わりを見透かそうと、常にじっと淡い緑の瞳を鋭く光らせている。

-生きていてさながら死んでいるねぇ…

無意識に手綱を掴む掌を強く握りこんだ感覚がした。


「…殺意や憎悪は当たり前にあるのか。なのに何故それをぶつけない。」


「……それはお前も同じだろう?お前にとっては俺も国の反逆者で、殺すべき相手だ。何故殺さない。」


わざと怒気を巡らせた、低くい声。

しかしそれを向けられたランスロットは特に気にしていないように、小さく俺のことを鼻で笑った。


「言っただろ?お前にはあの妙ちくりんな女の所に俺様を連れて行くのに役立ってもらう必要がある。それに俺自身お前を殺すことに執着してないからな。」


「……だろうな。」


事実ランスロットは俺に揶揄いを含んだ悪意のある言動で煽りはするが、そこに決して殺意は感じない。


「…やはりお前は気味悪い。それだけの負の感情を飼っていながら、それを溜め込むだけで外に解放しようとはしない。自分の感情で動くことがないのか?なぁ?」


「……だったら何だ?そうだとして、お前に問題あるのか?」


-別に猛烈な負の感情に呑まれ、目の前にいる男も、何もかも殺してやりたいと思わないわけじゃない。でも、それ以上に俺に巣食う重々しく、逃れることのできない感情がそれを雁字搦めにして身動きが取れなくなる…それだけだ。

決して説明してやるつもりはない己の内心を思い、自嘲する歪な笑みが勝手に浮かんでくる。

それに何を思ったか、はたまた興味が逸れたのか。

多分後者だろうが、ランスロットはそれ以上その話題を掘り返すことはなかった。



王国軍の軍勢が攻め入ってきたのは、それから1時間も経らずの出来事であった。

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