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Procursator   作者: 来栖れな
第10章 ふたりの英雄が辿りし道は
50/56

10-1

今回から改稿作業開け、新連載の話ですが…


もう既に改稿というよりリニューアルと言って過言ではないくらいに前半も変わってます。汗

大筋、通ってきた道のりは変わっておりません。

ん?と思った方は戻って確認して頂けると有難いです。

お手数かけますが、よろしくお願いします。

空に無防備に放り出された身体。

それが、ザッバァーンというド派手な音、衝撃とともに水面に叩きつけられる。

襲ってくるのは背中から全身へと突き抜ける痛み。

それがまだ治りきらない傷という傷に伝染し、また痛みを生み、身体を蝕む。

ぶくぶくぶくと、口から吐き出される空気の音。

後ろ手で硬く縛られた腕を解放し、なんとかその息苦しさから解放されようともがくも、身体の拘束は解けず、鉛のような気だるい体はどんどん水の奥底へと沈んでいく。

-このままでは死ぬ。

これ以上無駄に息を逃さぬように、グッと口の中で歯を噛みしめる。

息苦しさに焦りながら、必死に拘束されていない足だけを動かし、地上へ上がろうと泳ぎ始める。


しかし、怪我でうまく動かない身体と、最初に息をだいぶ吐き出してしまったのが悪かったのだろう。

あと地上まで5メートルのところでもう息が持たず、ぐわっと開いた口に容赦なく水が入ってきた。

呼吸が出来ず、ギリギリの均衡を保っていた意識がふわりと離脱していく。

それと同時に、何かがドボンッと鋭い音と共に水面を揺らした…そんな光景が見えた気がした。



次に目を覚ました時見たのは、よく旅の寝泊まりに使うテントに似た、しかしそれよりも大きなグレーの布地の天井だった。

-ここは?

視線だけ動かせば、寝ているのは簡易的なベット。

自由になった右手の少し先に、誰かが腰掛け、こちらをジッと見ていることに気がついた。


「目ぇ、覚めたかい?アベル。」


聞き覚えのある声だなと思った。

だが、目の前の記憶にない姿には首を傾げてしまう。

年の頃は多分、シレーヌそう変わらない女の子だ。

象牙色の肌に映えるのは、さらりと流れる亜麻色の髪と、褐色の瞳。

そして町の娘が着るようなスカートではない、動きやすそうな上下繋がっているズボンは…確かサロペットと呼ばれる、英雄平原を転々として暮らしている遊牧民がよく着ているものだろう。

だとすると、遊牧民でその髪色、瞳の色をした女の子の知り合いなんて、そう多いはずはない。


「お前……ミアか?」


自分の口から出たのは少し掠れた声。

しかし、それは相手まで届いたようで、その少女は呆れたような表情で俺を見下ろしている。


「なんで半信半疑なんだい?わかんだろ、普通。」


ほとんど肯定しているような俺への文句。

それに口では言い返さないものの、心のうちではわかるわけないと反論する。

ミアと最後に会ったのは10年前、ミアがまだ6歳かそこいらの頃だ。

こんな大人の仲間入りを果たした少女なんて、俺の記憶にはない。


「…お前が助けてくれたのか?」


「まぁね。お連れさん、泳げないみたいだったし。」


-そういやテヤン、泳げなかったな。

ミアのあっけらかんとした物言いを聞きながら、1人その言葉に納得する。


「どれくらい寝てた?」


「丸2日ってとこ。治療してた傷?みたいのも開いてたみたいだし、もう少し安静にしといた方がいいと思うよ。」


そんなミアの言葉に、身体を蝕む痛みと気怠さを思い出し、苦笑いを浮かべる。


「お前が見つけたのは俺とソイツと、2人だけか?」


「うん、2人してすっごい音立てて湖に突っ込んできたからビックリした。」


-シレーヌは別のとこに飛ばされたのか…テヤン荒れてそうだな。


「様子見に行ったらアベルの連れ、いきなり偉そうに『湖に落ちたやつ引きあげろ』って言ってきて、渋々助けたらアベルだったからビックリしたわ。」


「…………はぁ?偉そうに??」


-テヤンが?偉そうに??ぶっきら棒な言い方してるからか?


「見た目ガキンチョの癖に、めっちゃ上からで。まぁでも、あの子がアベルを助けろってウチに言わなきゃ、アベルは今頃湖の底だろ。」


-ガキンチョ?上から?

どこか心当たりがあるような、当たってほしくないような…

そんな予感を感じながら、俺は痛む身体に力を入れ、上半身だけでも起き上がらせる。


「おい、その連れって…」


「どんな関係か知らんけどさ、一応はお礼言っときなよ?」


そんなミアの言葉の後、バサッと豪快な手つきで開けられたテントの入り口が、その勢いで大きく翻る。


「そうだぞ?血濡れの狼。貴様は存分に俺様に感謝すべきだ。」


そう言って高圧的に俺に笑いかけるのは、テントの入り口に仁王立ちしたランスロット、憎き王国の王太子その人物であった。


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