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第八話:幼子を 襲うというなら ぶっ飛ばす

 暴力団って「団」なんですからトップは「団長」を名乗るべきなのでは? と思います。どうでもいいですけど。


 今回は、子孫の戦場にご先祖総立ちってなお話。

 絹を裂くような悲鳴という表現があるが、その悲鳴ってのは女性のことが多い。


 そりゃあ、男が絹を裂くような悲鳴をあげただなんて、みっともない事この上ないし、何より女の悲鳴の方が良くも悪くも雰囲気があるってぇもんだ。


 だからこそと言うのか、物語というものではすべからく女性が悲鳴を上げている場面に男が助けに入るのが「てんぷれいと」な展開だし、地の文としては女が女を助けるのも有りだと思っている。


 この物語は剣御礼 八突と、その妻(予定)お狼の二人一組が常に場面に出ているため、二つの「てんぷれいと」を展開するのは一粒で二度美味しい展開と言えよう。


 まぁ、つまりなんだ。旅を続ける八突とお狼の前にて悪漢に襲われる美少女が居たってぇ始まり方なんだわ。



「きゃー、誰か助けてー!」


「ぐっふふふふ、人気の無い場所で待ち伏せをしていたんだ。

 誰かが通りかかる可能性なんて皆無さ」



 絹を裂くような乙女の悲鳴! と、いかにもな悪人台詞!!


 この地の文の待ち望んでいた展開だ! 早い! もう来た! これで勝つる!



「ちょいと待ちなよ、そこのオッサン。

 人気が無いと言いつつ、俺らはこうして通りかかっている訳だ。

 ってぇのに、その先を続けるってのかい?」


「なぁ、八突。このいかにもな悪人にまで会話するのかい?

 見たまんまな流れだろうし、あたいは問答無用でいいと思うけどねぇ~」



 お狼は問答無用で殴っても良いと言うが、挨拶は実際大事。


 礼儀を弁えぬ者は村八分にされかねないこのご時世。


 八突は「これからあなたをぶっ飛ばさせてもらいます。よろしいですね?」という確認の意味で挨拶をしたのだ。


 これは古代武士の頃から連綿と受け継がれてきた奥ゆかしい精神である。



「な、何だ貴様らは!?

 おめぇらアレだぞ? 俺は~、そのアレだから、お前らなんざ怖かねぇぞ?(震え声)」



 八突とお狼の身に纏う力強い魂のさざめきが、電子レンジ・マイクロウェーブめいて大気を揺らし、大地を揺らし、悪漢の心を恐怖で満たす。


 これは二人が戦闘に向けた気分になるための集中力を高める前動作だ。


 悪漢はビビりながらも職場の上司から命令でもされているのか、最終的には敬語を使いながら「この娘さんを襲わせてください」と言って土下座してくるのだが、八突もお狼も見過ごせないの一点張り。


 とうとう、泣きながら両腕をぐるんぐるん振り回しながら突っ込んでくるという哀れ過ぎる行動をする始末。


 八突の蜂のように素早い首の後ろをトンッとする系の攻撃で気絶させ事態は解決。


 何やら八突達の方が悪いみたいに思える後味の悪さだなぁ~。



「あの、助けていただきありがとうございました!

 私は綿田 理科という、この近くの里で一番の美少女をしています」



 しかし助けた娘さん――綿田理科ちゃんという少女は感謝っ! 圧倒的感謝っ……!!


 過程など、悪人から助けられたという結果さえあれば、どうでもよかろうなのだ。



「いやまぁ、お嬢ちゃん。

 それはいいんだが何でまたあんな男に狙われていたんだい?

 確かにお嬢ちゃんは可愛らしいけど、それだけであそこまで情けなくも食い下がってくる奴なんざ俺ぁ見たことねぇな」


「……八突、もしやお前さん幼女趣味でもあるのかい?

 だったらあたいは、お前さんに惚れた一般的な大人の女性代表として教育的に殴る必要があるんだがねぇ」


 拳を握り締めるお狼。


「馬鹿を言え、お狼。

 俺は惚れる惚れない以前に、子どもとお年寄りが騒動に巻き込まれてりゃ問答無用で助けるさ。

 それに俺は生まれてこの方、誰かに惚れた経験はない」


「一度も?」「おう!」


「ということは、あたいにも恋愛感情は?」「ない!」



 がっくりと崩れ落ちるお狼。


 しかしまぁ、なんだ。

 恋愛感情が無くとも二人はいつも一緒にいる訳だし、今後惚れる惚れないは分からないが、両想いになったところで二人の関係が変わることはまずないだろう。


 するとつまり、今が最高の恋愛状態であるとも言える。



「あの~、それよりもお礼と事情説明のために私の家に来てもらうことって出来ますか?

 こんな人気の無い場所で立ち話をしていては第二第三の刺客に狙われそうですし」


 どこか抜けた感じと言うべきか、まるで襲われ慣れている雰囲気の理科ちゃんに連れられ、八突とお狼は彼女の家に寄っていくことにした。


 やはり旅と言うのは道中の出会いから、突撃隣の夕餉! というノリがあってこそのものだろう。


 少なくとも、八突もお狼もそんな風に考えていたのでホイホイと付いていくことにした。


 さて、鬼が出るか蛇が出るか。はたまた大山鳴動して鼠一匹となるか大鼠一頭となるか……。


 お狼の本来の姿が見上げるほどに巨大な狼であることを考えれば、

 今後、山のような大鼠の化物が出てくる可能性は無いと言えなくもないがまずないであろうから話題にする必要もあるめぇ。


 と言う訳で、一同はリカちゃん家にお邪魔し、今回の騒動を解決するのだろうか!?


 突撃隣の夕餉!



 ◆ ◆ ◆



 ところ変わって今回の騒動の原因となる「九茶毛茶の村」というちっぽけな村に住む暴力団団長、沢木 大志。


 彼には強欲極まりない野望があった。



「世界中の美女を手中に入れて色欲にまみれた生活をしまくる!」



 そしてそれをするだけの力……には、まだまだ足りないが、それでも自分の縄張りである村では割と何とかなっている。


 そしてそんな日々を過ごしているものだから、この話の十年前に村で超絶可愛い女の子が生まれたと聞き、今日この日を楽しみにしていた。


 そう、この男こそが今回の話の冒頭で、悪漢を理科ちゃんに襲わせて自分の物としようとした黒幕なのだ!


 しかし先ほども言ったがこの話の十年前に理科ちゃんが生まれたということは、彼女はまだ十歳。


 だというのに、そんな幼気いたいけな少女を力づくで物にすることが許されて良いものだろうか?


 答えは否だ!


 当然、この話を理科ちゃん本人から聞いた八突とお狼は沢木を許さないだろうし、彼らにとってこの黒幕の家の警備など、年末の大掃除における張り替え前の障子よりも容易く破ってくるだろう。


 そう確信できるだけの凄味を持つ二人と、その二人に狙われるだけの黒幕がいるのだから。



「と言う訳で、別にお前さんを成敗しても構わんだろ?

 俺は剣御礼 八突。

 義によって理科ちゃんを助けるために動く旅人さ」


「まったく、こんな奴にまで律儀に名乗り追ってからに……。

 ついでに名乗っておくと、あたいは八突に惚れて惚れさせるために旅に同道しているお狼さね」



 八突は背に「義」の文字を背負い、お狼は「愛」を背負って沢木に対面する。



「私の家の警備は万全のはずでは!?」


「この状況でそれをいちいち聞くのかい?

 あんた、随分と頭の回転が悪いようだから教えてやるけど、み~んなぶっ飛ばしてここに俺らは来た訳だ。

 で、覚悟は?」



 すでに挨拶も終わり、八突は拳を握りしめ、お狼は腕だけ獣化する。


 二人の殺気が今三人が居る部屋を中心に衝撃波をぶちまけて家屋倒壊。(だけど屋根も吹き飛んだので落下物の心配は無し)


 まぁ、流石に殺気だけで鉄筋のきちんと入った建築基準法の規定を満たした家を壊すなど無理なので、家屋破壊の要因の大半はお狼の巨腕によるものだが。



「ほざきやがれ! 私は団長だぞ!?」


「ほざいてるのはテメェじゃねぇか!

 あんな小さな女の子を性の対象にした挙句、そこまで開き直れるだなんて屑の極みだなぁ、おいッ!」


「のぅ八突。少し口調が怖くなってるから平常心を持ちなよ?」



 武士道の心を忘れないように深呼吸。すーっ! はーっ!


 落ち着きこそ、人を人たらしめる行動を逸脱させない。


 しかし落ち着きを失くした者は平気で人を傷つけ貶めて、罪に溺れる業の魂と言えるだろう。


 お医者様でも草津の湯でも治らないのが恋の病と言うが、この暴力団団長である沢木は地獄の閻魔様の手を煩わせるほどもない小悪党。


 八突のご先祖様である古代武士から受け継いだ剣道流柔術が炸裂し、この小悪党の全身を複雑骨折の末に監獄送り。


 こうして八突とお狼の二人は楽しく派手に旅を続けるのだったとさ♪



 ◆ ◆ ◆



 ちなみに今回、暴力団団長の沢木に狙われた綿田理科ちゃんだが、自身を助けてくれた八突に憧れ、自力で魔法を習得して後に大魔女となるのだが、それは別のお話。キヒヒ♪


 

 八突のご先祖様たちは彼の行動を見守り、己の義に従って動く彼を誇りに思っているので応援すれども止める者はあらず。


 この作品はストックを溜めるのに時間を掛けているので、その時々のマイブームなどの影響が各話に大きく影響しているんですよね。

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