第五話:狐の嫁入り、狼参加
今回は一話でまとまったので夜の更新は無しです。
相変わらず思いつきで書いているので今作は過去作以上に独自設定ばかりが先行する話の進み方なんですよねぇ~。
まぁ、そういうものと思って読んで行ってくださいw
心地よい風の吹く中、見通しの良い街道を歩く二人。
鬼長谷の地で領主とのごたごたを解決した八突とお狼は、今日も今日とて変わることなく変わり続ける景色を楽しみながらの旅の途中。
二人はのんびりと歩き、時に川で釣りをしたり森で木の実を取りながら、とにかくのんびりと進む。
太陽と月が交互に空に登ることを繰り返し、周りの景色に大きな変化を迎えた頃、今回の話は始まる。
「ほれ、お狼。
ここが次の人里へと繋がる街道の関所、“井録の関”だ。
厳しく取り締まるからお狼も面倒かもなぁ~」
「だろうねぇ~。あたいは身分を証明するものなんざ持っちゃいないし。
そこで、お前さん。
ちと提案するが、山道を通って関所を抜けないかい?」
「それはそれで面白そうだなぁ……。
よし、そうするか」
確かにこの関所は両隣を山に囲まれた谷間の街道に出来ているため、その両端の山の警備は手薄だ。
しかし、それは人が警備する必要がないほどに困難な道だからであり、簡単に思いつくものでもない。
それに何より、確かに厳しく取り調べは受けるが(八突も身分証を失くしている)、
きちんとお上が目を光らせて管理しているので身分を証明できずとも非道な扱いは受ける訳ではないのだ。
では何故この二人があえて険しい山道を通ろうと思ったかと言えば、……何となくだろう。特に理由などない。
強いて言うならば、お狼の獣的な思考なのかも知れないが、それならばそれに追従する八突もまた、獣的思考と言えるのだろう。
しかし、二人は旅を楽しんでいるので問題にする者は誰もいない。
そうしてしばし、山の中の道とも言えぬ道を突き進むのであった。
関所でひと悶着起こす話かと予想した人を裏切って申し訳ないが、今回はお狼が主役と言える話になるだろう。
◆ ◆ ◆
「おや? 雨が降ってきたな」
「八突ともあろう者が雨にうろたえているのかい?
それに雨は雨でも狐雨さね。
すぐに止むよ」
「いんにゃ、お狼。
俺が言いたいのは山で狐雨に遭遇したんだから、狐の嫁入りを見てみたくないか? ってこった」
“狐の嫁入り”とは大昔、古代武士の時代からずっと続く伝説のことを言う。
「虎の臓腑(胃)を狩る狐」という言葉があるように、強いことで有名な虎よりも優れている獣である『狐』が自分たちの結婚式を人間に見られないようにするためのものだ。
古くから人間には「雨が降ったら雨宿りするもの」という思考が遺伝子レベルで受け継がれており、出先で雨に遭遇した一般人ならば吸血鬼のように動けなくなってしまう。
それでも雨の中でも動けて、狐の嫁入りを見たがる好奇心を八突はこれまでの旅で会得している。
これすなわち“武士魂”!!
「お、これまでは何だかんだで見つけられなかったが今回は偶然にも見つけられたな」
「そりゃ、あたいが臭いを辿ったからさ。
まったく八突ときたら、まるで見当違いの方向にばかり進もうとするんだからねぇ」
「まぁ、俺の気まぐれ方向音痴ってのは昔からこうだからなぁ~。
それよりも、感謝してるさ」
呆れた様子のお狼と、それをからからと笑いながら眺める八突。
八突のことだ、目的のない旅はこれだから楽しいと言いたいのだろう。
目的をその時々で新しく見つけられる楽しみ。それを存分に楽しんでいる二人だからこそ、このような古代から連綿と続く狐たちの禁断の儀式を盗み見ることが出来るのだ。
しかし、おお! 何と言うことだ!
お約束と言ってもよいのかもしれないが、茂みに隠れる八突は小枝を踏んでしまったのだ!
狐たちの婚礼の一行が一斉に振り返る!
パキッ!
「何奴!?」
狐たちが各々の腰に提げられた刀を抜く。抜刀!
「安心してくれ、俺達は怪しいものではない。
人化の術を使っているだけで同じ妖怪仲間さ
(はっはっは、ちょいとヤベェかな?)」
「そうね、あたいらは通りすがりの狼の夫婦。
故に敵意も無いさね
(あたいに任せときな)」
咄嗟に誤魔化す八突と、それに合わせるお狼。
流石に八突もこの手のことにな慣れているだけあり、相手が妖怪であろうとも普段と変わらぬひょうひょうとした態度は崩さない。
人間の常識が通用しないところはお狼が補う。
これぞ内助の功と呼ばれるものだが八突はその事に気付いていない。
「なんだ、人間かと思った」
「人間なら雨に打たれれば行動出来なくなるしな」
「雨の中動けるのは獣か怪異に違いない」
「ならば問おう。
せっかくだから我らの婚礼を一緒に祝ってくれないだろうか?」
妖怪の婚礼ともなると、人間のようにその種族間のみでするのではなく、多種多様な連中が集まって騒いで食って飲んでするものなのだ。
ただし人間は遭遇しようものなら喰う。それが狐の嫁入りの決まりである。
「そりゃ~、ありがたい。
俺らも狐雨が降ってきたからお祝いしようと思って来たんだ。
袖すりあうも他生の縁ってね」
「あたいら妖怪にとっちゃ、他生があるのかも分からんがね」
まぁ、八突は人間なのだが。
雨が体臭を消してくれているし、先ほどから狐たちを欺く芝居のために、お狼が腕を組んで離さないこともあってバレてはいない。
お狼の内なる妖力が八突の体に纏わりつき、至近距離で匂いを嗅いでもばれることはないだろう。多分。
「よし、旅の狼夫婦さんも来てくれたことだし宴じゃ。
みんな好きなだけ食って飲んで騒いでくれい」
狐たちを取りまとめる棟り長老めいた大きな狐がそう言うと、周囲には御馳走が出現し、会場上空のみ狐雨が避けて降るようになった。
「へぇ~、狐雨って狐たちが自在に操れる雨のことだったんだなぁ~」
「そりゃお前さん。折角の料理が雨でびちゃびちゃになったら不味そうじゃないか」
狐の嫁入りには初参加の八突に、お狼が妖怪の常識を教えてやる。
彼女にしても、普段は人間についての常識を八突に教えてもらってばかりなので、こういった自分が教える側に立つことに楽しさを感じるのだろう。
食事の手も、凄い早さで皿を空にしていく。
「おやおや、狼さんたちは随分と食べなさるな」
「そりゃ狼さんですからね。
我ら狐よりも沢山食べるでしょう」
「ならば我ら狐一族で一番の大喰らいの私が大食い勝負でも挑もうか」
そこからは実際に結婚する狐の夫婦二人をそっちのけに盛り上がった。
お狼も本来の姿が大きいから沢山喰うのだが、八突も人間とは思えない勢いで負けずに喰らう。
それを見て狐たちも負けじと喰らいつく。
そうしてとっぷりと日が暮れ、狐雨とは思えないほどに長い時間降り続いた雨が上がる頃には友情が芽生えていた。
「いやいや、今日ほど楽しい日はなかったですよ」
狐たちの長が笑顔で酒樽を差し出す。
「俺らも楽しませてもらいました。
見ての通り何も持っていないが、今日という日の思い出を結婚する二人の狐さんに送らせてもらうさ」
狐の長老から最後に差し出された酒樽を片手で受け取って一気に飲み干す八突。種族を超えた友情!
お狼も無茶苦茶可愛いので狐たちにモテモテだったが、八突一筋のお狼は狐たちを獣化した巨椀で薙ぎ払い一層八突にくっつく。
胸を腕にギュー!
「(おい、お狼! 俺の股間が反応しちまうぞ!!)」
「(反応させてるのが分からないのかい?)」
そんな二人のやり取りを横目に楽しむ狐の長老はさらに酒を飲みながら言う。
「ふふふ、思い出は荷物にならないとはよく言うたもんですわい。
それじゃ狼の夫婦ら。また何処かでお会いできることを楽しみにしておりますじゃ」
「生きていれば何処かで会うこともあらぁな~。
狐さんら、今日は楽しかったよ」
「次に会う時はあたいら夫婦にも子どもが出来てるかもねぇ~」
お狼は八突と狐の長老の会話の最中、一歩下がった良妻らしい態度(胸を腕に押し付けて旦那の股間を張りきらせる態度)でその場の面々を眺め、
狐たちに自分が八突の妻であることを主張する。
しかし多少ドギマギさせただろうが、行動で返してもらえないので八突への効果はなかったといえよう。
具体的にはこの場での子づくりに発展しなかったことがお狼にとっては残念極まりなく思っている。
せっかく茂みがあちらこちらにあると言うのに、利用しない手はないだろうにまったく。
惚れた男に惚れてもらうためのお狼の策は失敗したかに思えるが、
狐たちには良い印象を与えたであろうから気長に草の根活動として自分達の仲の良さを主張していくのだろう。
そうして飛び入り参加した狐の嫁入りは、八突とお狼の旅の思い出として記憶されるのだった。
近々ポケモンの新作が発売されるので『討鬼伝』で暇をつぶしていようと思っていましたが、VITAのゲームが少ないので『初音ミク プロジェクトディーヴァf』を購入しました♪
ボカロで特に私が好きな曲はPSPの時に出つくしたので、この『f』では知っている程度の曲ばかりですが、やっぱりシンプルに面白いですね。
VITAのタッチパネルを使った擦る☆マークは正直いらないですけど。
ノーマルはクリアしましたし、全クリ&パーフェクトクリアを目指してガンバルゾー!