第十八話:星の魔法使い
無理矢理何かを考えさせられる雰囲気のお話。
八突は幼い頃からタイクーンとして国をまとめる父を見て育ち、その後を継ぐために様々な分野の専門家に師事することで知識と己が肉体の研鑽を続けてきた。
そのためかどうか、たまに単純極まりない失敗をすることもある訳で、まぁ、何が言いたいかと言うと完璧超人という訳ではないのだ。
今回はそんな八突が失敗をする話、となるのだろうか? ……いや、知らんけど。
「待ちやがれ! この盗人め!!」
町中を失踪するのはひょろりと伸びた長身の男――言わずもがな、物語の主人公の剣御礼 八突だ。
「あっはっはっはっ♪ お前さんがこんな手に引っかかるとは驚きだよ。
それに口調とは裏腹にこの状況すら楽しんでいるんじゃないのかい?」
並走するのは背の高い八突と比べればアリのように(誇張表現)小さな少女――お狼だ。
「やっぱ分かるか?
いやまぁ、俺がスリに遭うだなんて滅多にないからよ。
それだけの技前を見せてもらったってことで財布の一つくれてやってもいいんだが、
こうやって追いかけっこをするのも面白いと思わねぇかい?」
「確かねぇ~。今だってあのスリの足運びの巧みさには盗人なれど惚れぼれするものがあるさね」
本気ではないが、二人はそれなりの速度で追いかけている。
だと言うのに八突の懐から財布(小銭入れ。蛇の抜け殻入り)をスリ取った盗人は逃げ続けている。
しかも追う二人にマキビシを撒き散らす盗人。
マキビシは逃走中に撒くことで追手の足を無残に引き裂く設置武器だ。
まるで西の方で有名な串刺し公の用いた槍のように長大なマキビシは、設置と同時に触れるもの全て傷つける針を展開するが、
咄嗟に身を引いたことで八突もお狼も命中は免れた。
しかしこの罠……、常人ならば回避できずに上半身と下半身を分離されてもおかしくはない鬼畜な罠だ!
空を駆けることが出来る二人からすれば地面タイプの設置罠など効果はないようだ。
「お狼、こうなりゃ二手に分かれて挟み打ちといこうや。
俺はあの盗人の十メートル先に転移して拳を突き出す。
お前さんは音速で体当たりを仕掛けてくれ」
「合点承知の助♪
そいで迎え撃つ八突の拳とあたいの巨体で潰すってぇ~訳さね♪」
な、何と言う鬼畜な所業!
八突は自身の拳の威力を分かった上で、
お狼は自身の本来の姿の巨躯と速度を分かった上で、
その上でハンバーガー作戦を実行しようと言うのだ!!
う~、ブルブル。考えただけでも怖気が走る恐ろしい技だ。
二人とも盗人の足が速いというだけで自分たちの達人級の技を行使することに躊躇いが無い。
これじゃあ子どもみたいじゃないか……と思ったが、精神的には子どもなんだし別に問題はないだろう。
そもそも盗人が八突の財布を盗んだのが問題だし、たぶん二人も多少は手加減するんじゃないかな~?
よし、やっちまえ二人とも!
「転位完了! か~ら~の、ブシ・パンチ!」
「変身完了! か~ら~の、音速突撃!」
そして爆砕! ……辺りが閃光に包まれたかと思うと、そこには八突の拳で腹パンされ、お狼の突進で背骨をパキャっとされた哀れな盗人が倒れていた。
「さ~て顔を見せてくれよ盗人さんよ。
俺ぁ、お前さんみたいに度胸と腕のある奴が好きでねぇ。
敬意を表して割と本気で殴ったけど……死んじゃいないよな?」
八突が盗人の被っていた頭巾を取ると、そこに隠されていた顔は予想以上に若く、いや幼い少年だった。
そして息をしていないように見えるのは気のせいだろうか?
「……お狼」
「いやいやいや、ここであたいに振らないどくれよ。
お前さんのパンチが原因に決まっているさね!」
「おいおいおい、俺の腹パンは人体を貫通しないように加減したけど、お前さんの突進は背骨がパキャってなっちまってるぞ?」
「それは~その~……あー、そう! お前さんの治癒魔法でチョチョイノチョイでは!?」
「あ、そういや俺って魔法使いなんだっけな。忘れてたわ」
八突、急いで蘇生を試みると先ほどまでパキャっとなっていた背骨は問題なく治癒し、少年は息を吹き返した。顔色も心なしか良くなったように見える。
「お~い、お前さん生きてるか~?
盗みはいかんぞ。盗みは~」
先ほどのうっかり殺しかけてしまったことは自分から水に流した八突は言う。
お狼も先ほどのは無かったことにして八突に同意するように首を縦に振る。
一方、目を覚ました少年は、少しばかり視線が空を彷徨い、焦点が合うと八突とお狼を見て飛び起きる。
「……すいませんでしたぁぁぁぁー!」
まるでバネ仕掛けの玩具のような動きで仰向けに倒れた状態から飛び上がり土下座を披露する少年。
あっけに取られた八突とお狼だが、彼が盗みに手を出した理由を話しだすと納得するのだった。
「ぼ、僕は病気の母が居てお金が必要なんです。
だけど僕に出来ることなんて手先の器用さでスリをするくらいなんです」
なるほど納得。
よくある話だが、金に困って犯罪に手を染めてしまったってぇ~訳だ。
こんな少年を一方的に裁くのも気が咎める八突とお狼はこの少年を一人でもまっとうに稼げるように教育してあげることにした!
決して、うっかり殺しかけたのを無かったことにするためではない。
「ならば俺はお前さんを弟子にして魔法を教えよう。
古代武士の技も教えてやりたいが、これは色々と政治的な問題が絡むから無理だな。
まぁ、魔法だけでも強くなれるだろう」
「なら、あたいは徒手空拳さね!
こう見えても妖怪だからねぇ~。身体能力を限界まで解放する系の体術は得意中の得意さね。
人間に使えるかは分からないけど(ボソッ)」
「あ、ありがとうございます!!」
こうして少年は無事に二人の弟子となり、後に大魔法使いと呼ばれるようになるが、それはまだ先のお話。
◆ ◆ ◆
と、いつもならそこで終わっているだろうが、この語り手たる地の文、なんか気分が乗ったのでこのまま続けてこの先も語っていこうと思う!
何故なら! この少年を今後出すつもりがまるでないからこの話でくらい活躍させてやりたいからだ!!
あと「勧善懲悪」要素が薄いから。
「で、少年よ。お前さん、名はなんてぇんだい?」
「僕の名前は地熊 地恵。
女の子みたいですけど男です」
「ほうほうほう、ならばお前さんに教える魔法は星属性で決まりだな。
星属性がこれ以上ないくらいに似合いそうな名前だ」
若さに溢れているため髭がない八突だが、まるで立派な髭を蓄えているかのように顎をさする。
八突の密かな悩みは髭が生えないことだが、別に無くても困らないのでそこまで気にしているわけではなかったりする。
「魔法に属性があるのは知っていますが、僕って星属性の素質があるんですか?
確か星属性の魔法って、魔力燃費が悪い代わりに相手の魔法耐性に関係無く大ダメージが見込める属性のはずですけど」
「お前さんは魔力が多いから問題なく使えるだろ。
それに俺の弟子だってんなら、星属性くれぇ使えないと面白くないからな。
……ところでお狼。お前さんはさっきから何をしているんだい?」
お狼を見れば、八突と地恵くんの魔法座学をそっちのけに何やら発明をしている。
人の形をした木製人形。だがその人形の手と足の部分は鋼鉄で出来ている。
「徒手空拳の修行ならこれに決まってるさね!
久し振りに作ってみたけど、あたいも人型の姿で戦うときのためにこの人形で幼い頃は武術修練を積んだもんさね♪」
どうやって作ったかについては実に簡単だ。
そこらの木をへし折り、何か不思議な妖怪能力で乾燥させ、爪や牙で切って削って作成。
山から採掘してきた鉱石を体温で熱し、人形の手足を作る。
で、これまた妖怪能力で自立可動させて自分を襲わせる。
なんてことのないお狼の修行方法だ。ただ今回は地恵くんの修行なので襲わせるのは彼に向かってだ。
「ひっひっ、ひ~~~っ!」
「踊れ♪ 恐怖のダンスを♪」
弟子を取るという経験がないお狼は初めての弟子がとても嬉しいらしく、加減も何もなく木金属製の人形を突進させる。
人形は腕をぐるぐると回しながら死も痛みも恐れずに真っ直ぐに進む。これは並みの人間ならば瞬時にひき肉にしてしまう攻撃だ。
しかし八突から座学のみとはいえ、魔法の心得を習った地恵くんは華麗なステップで回避!
だが避けているだけでは勝てないぞ!?
「地恵! 俺の教えを思い出せ! 木属性だろうと金属性だろうと、星属性の魔法は有効だ!
もっと気合いを入れるんだ!」
「あたいの教えも思い出すんだよ地恵!
ほれ、人間には難しいかもしんないけど、妖力をこう、バーって感じで周囲に展開してバリアーを張るとかさ!」
無茶な応援だが二人は弟子を応援している。
そんな二人に応援されて黙って負けるほど地恵くんは負け犬根性が染みついちゃいない。
地恵くんは努力家でもあるので、「いざとなれば自分らが助けるから」と二人は最後に付け加えるが、その言葉通りの事態にならないように最善を尽くす努力をせずにはいられない!
「(僕とて覚悟を決めた魔法使い。
とっても強い八突師匠とお狼師匠の弟子なんだ!
なのになんだこの様は!? 修行開始早々に師匠二人に頼りきりか!
これでいいのか?)」
自分のために稽古をつけてくれる師匠二人の顔に泥を塗るわけにはいかない。
地恵くんは数分前に習ったばかりの魔力操作を行い、呪文詠唱を開始する。
「おい地恵! 魔法の詠唱だなんて面倒なこと戦闘中に出来ると思うなよ?
俺の弟子なら無詠唱でいけ、無詠唱で!」
「はい! 八突師匠!!」
八突の声援で無詠唱魔法を成功させる。
「地恵! 徒手空拳の基本は拳さね。
何故なら人をぶん殴ると気持ちいいのさ♪」
「はい! お狼師匠!!」
星属性の魔力が拳に宿る。勝利を掴むべく、轟きながら赤熱の隕石も呼び寄せる。
「喰らえ! 新必殺技『隕石落とし』!」
隕石を呼び寄せて相手にぶつけるだけの魔法。しかし星を引き寄せる力こそが星属性魔法の本質なのだ。
地恵くんは魔力制御がまだまだ雑なのもあり、自分の魔力を全て用いたために呼び寄せた隕石も巨大なものとなり、木金属製の人形は跡形もなく消し炭に。
周りへの被害は八突の魔法で防がれたが、その威力は絶大だった。
「よし、修行は終わりだ。
あとは基本となる教本をいくつか買ってきたから自分で修練を積むといい」
素早く手近な店に転移して購入した魔導書をあげる八突。
値段は割と高く、一冊1万円だ。
「あたいからは妖怪固有技能で無限再生する木金属製の人形を贈るさね。
壊しながら威力調整を覚えていけばもう対人戦では最強になれるだろうねぇ~♪」
だがこの国じゃあ三番目だ、とも付け加えるお狼。
一番と二番が八突とお狼なのは言わずもがな。
二人の育成によって立派な魔法拳士となった地恵くんは、その後は適当な武芸大会に参加して優勝賞金で母の病気を治して勝ち組人生を謳歌することとなるのだった。
やれやれ、これが良いことなのか悪いことなのか。
彼がこの先、今日手に入れた力を悪用する可能性があるかもしれないし、ないかもしれない。
結果としてスリが居なくなって近隣住民は幸せに暮らし、彼の母親は元気になった。
だが、これだけの影響力を持つ八突とお狼は自分たちの持つ力を大して考えもせずに教え与えている。
それが正しいのか判断する者はいないが、せめてこの地の文くらいは考えておこうじゃないか。
こうして二人の旅は進んでいくのであった。
「そうそう、地恵。
あたいと八突は夫婦だから、お前さんが誰かに自分の師匠のことを聞かれたらそう答えるさね」
「はい! お狼師匠!!」
そしてお狼の草の根活動も続く。
それにしてもポケモンはえらいサクサク進むなぁ~。
序盤からタツベイが出てきたのでボーマンダまで育てて手持ちの中堅の役割をさせていますが、いっそのことドラゴン統一というのも面白いかもしれませんね♪
今作ではドラゴンタイプの新たな弱点となるフェアリータイプが追加されたことですし、あえて不利なドラゴンで挑むのも悪くない♪
でもやっぱりガブリアスは好きになれない……あの腕がカッコ良くない……。




