第十四話:病院の裏事情
今回の話は特に独善的な気もしますが、悪の基準は人によりますからね。
そして勧善懲悪であり、ギャグであるのです。そんなお話。
ゴロゴロと猫の喉のように可愛らしくも絶えることなく鳴り響く雷雨。
猫のようにと表現しておきながらなんだが、まるで天が怒っているかのように降り注ぐ雨だ。
しかしそんな雨の中、本日の八突とお狼は雨に濡れている訳ではない。
勿論、雨合羽や雨傘を持っていると言う訳でも、魔法で雨避けバリアーを展開している訳でもない。
至極単純な理由、建物の中にいるからだ。
「これは俺が引き寄せた運なのか、はたまたお狼が引き寄せたものなのか……」
「騒動に巻き込まれやすい二人が一緒にいるんだから、両方じゃないかねぇ~」
「やっぱそう思うかい?」
「それ以外にどう思えと?」
パリッと糊の利いた白衣と知的な雰囲気を醸し出す眼鏡装備の八突。
パッツパツのナース服でスタイルの良さを主張し、さらに網タイツで色気も完備するお狼。
なぜ二人がこのような格好をしているか、疑問に思う者はいないだろうがあえて説明すると、彼らが現在いるのが病院だからだ。
病院にいるのは医者か看護師か患者かその他諸々。
八突とお狼は医者と看護師のフリをしているが、今回の騒動を解決するために資格は入手している。だから何も問題はない。
そんな二人は正式に刀御礼 八突(「剣御礼」の家名は有名過ぎるため)と刀御礼 お狼として特級医師と特級看護師として新入りでありながら現在いる羽根記念病院にて急速に成長する刀御礼派閥の2トップ。
いや、そもそもの問題は何故この二人が医者と看護師をやっているかについてだが、
「親父も旅先でまで人助けをさせるだなんて何を考えているのかねぇ~」
「お前さん、そんな事を言いながらも二つ返事でノリノリに引き受けたじゃないのさ。
困っている人を捨て置けないという義侠心は嘘だったのかい?」
「俺は嘘は言わんさ。
これは表面上は面倒がっているフリをする冷血さと、内心では悪を許せない熱血さを両立させただけだ。
俺ぁ最初からこの頼まれ事を断る気なんてさらさら無かったさ」
そう! この二人が病院に勤務し、派閥を形成しているのはひとえに悪を討つため!!
今回出てくる悪人の名は、杭志矢 灰汁斗。羽根記念病院名誉院長兼裏世界の首領。
入院患者にでっち上げの病気を告げ、死亡したように見せかけて院内に監禁し、臓器売買のために内蔵を奪いまくるという極悪非道の院長だ!
今回、八突に父である剣御礼家の現当主である剣御礼 直タイクーン直々の依頼が来たのも、表の権力も裏の権力も実際無視できないレベルで杭志矢院長の権力が増しているからである。
秘密裏に始末、または改心させるには顔が知られていない八突に頼むに限るという父親の判断だが、これまた立派な親父さんだよ。
わざわざ金にならない面倒事に首を突っ込み、さらには大事な跡取り息子を巻き込む。
普通なら出来ないさ。だけどそれを国のため、民のために行うからこそタイクーンなわけよ。
ちなみにお狼は八突のパパさんとの顔合わせはすでに済ませており、「息子をよろしく頼む」と言われたので今回も一緒にいる。
物理的に院長を始末するなら二人が一緒に出張る必要などないのだが、なるべく穏便に済ませるためには二人の協力プレイが必要となってくるってぇわけだ。
なんせ杭志矢院長は臓器売買で稼いだ金の大半を自身の警備費用に費やし、24時間体制で百を超える武士、騎士、忍者、魔法使い、僧侶が守っているのだ。
これでは流石に八突もそう易々とは手が出せないため、杭志矢院長の病院に医者として勤務して隙を探っているのだ。
すでに二人は勤務初日に、高速道路にて発生した連続玉突き事故の重症患者30人を一瞬で完全治癒させた実績がある。
院長からも認められているので、院長と三人きり、もしくは二人きりになれる状況を作りさえすれば事は穏便に済む。
ちなみに八突が魔法使いなので治癒魔法も使えるのは驚くに値しないだろうが、お狼が看護師として患者を治癒させた能力については彼女の「可愛いオーラ」である。
その不可思議なオーラが見る者に気力を与え、傷を癒す。
だから二人はこの病院における治療最強のコンビとして見られているのだ。
「ところでお狼。俺ぁ一つお思いついたことがあるんだがよ♪」
「奇遇だねぇ~、あたいも一つ思いついた手があるさね♪」
「「院長の護衛ごと潰した方が早くない?」」
流石は息ぴったりの二人。
二人が計画した杭志矢院長暗殺作戦は次の通りだ。
1:院長が院長室にいる時間を見計らって魔法で天変地異を起こして天井を落下させる。
2:院長室だけぺしゃんこにし、魔法で起きた天変地異であることを隠すためにショットガンを死体の近くに置くいておく。
3:ショットガンを取ると天井が落ちてくる仕掛けを後から院長室に付ける。
4:院長は自分の仕掛けた罠にかかって死んだことになる♪
……な、なんて天才的な作戦なんだ!!
八突とお狼の策士ぶりが冴えわたる発想である。これなら部屋そのものを攻撃するため他に被害が出ることもなく、護衛が何人いようと問題ない。
しかし唯一の問題があるとすれば、このトリックを見破って天井が落ちてくるまでの間に対策を思いつく護衛がいないかどうかだ。
まぁ、実際にやってみて、駄目なら次の手を考えればよいと言うものだ♪
◆ ◆ ◆
こうして八突とお狼は謎の特級医師、謎の特級看護師として数日間勤務して病院を去って行った。
残されたのは謎の死を遂げた院長の後釜を巡る内部抗争という問題だけ。
そう、院長は二人の見事なまでの策によって護衛諸共死んでしまったのだ。
しかも杭志矢院長は後釜を誰にするか決めていなかったため、それぞれの派閥が無駄に醜く適当な策略ばかり練るものだから、警察の知れるところとなり、あえなく御用。
八突とお狼のおかげで与力千一人隊長に昇進して警察組織の重役にまで上り詰めた石津氏の素早い対応によって羽根記念病院関係者が全員居なくなる。
ここまではいいだろう。だが病院がなくなるという地域住民にとって困る事態も生じたのだ。
しかしそれすらも読んだ行動だからこそ八突とお狼は天井落としという大がかりな仕掛けで院長の暗殺をしたのだ。
そこは流石のタイクーンを務める剣御礼家と言えるだろう。
八突の親父さんはすでに医師と看護師を新規で雇用していたので剣御礼家直轄病院が一つ出来ただけと言う認識で世間には知られることとなった。
救われなかった者もいるだろうが、救われた者も多い今回の一件。
はてさて、八突とお狼の明日は何処に向かっているのだろうか……。
「次は南下して海水浴でもどうだい?」
「いいねぇ~♪ お前さんにあたいの水着姿に鼻血出させてやるさね♪」
次回! 水着回へと続く!!
水着回は必須ですよね♪
現在、この小説の最終話を執筆中です。最後までお付き合いいただけるように楽しんで書いていきます♪




