(1)
「ミクミちゃん、さっき好きな人がいるとか言ってたよな?」
「はい、言いました」
「まあ、のっけから何だが、そいつのことは一旦忘れろ」
飄々(ひょうひょう)と本のオバケが言った。
あたしは驚いて尋ねた。
「え? ええ!? どーしてですかぁ?」
「片想いなんてものは良くても50%の成功確率じゃねーか。そんなイチかバチの勝負に俺様は乗れねぇな」
「は、はあ」
「世の中、片想いを推奨するような風潮もあるが、俺様に言わせればそんなのは愚の骨頂ってヤツだ」
「で、でも、人を好きになるのは自然なことでは……」
「べったり甘いなぁ、お嬢ちゃんは。ふん。じゃあ、ミクミちゃんの好きな人の名を教えてみな」
「え? えーっと、ユキト君……です」
名前を声に出して言うだけで顔が赤くなってしまいそうなあたし。
そんなあたしを嘲笑するように本のオバケが言った。
「で、ミクミちゃんはそのユキト君のことを日がな一日考えてるわけよな」
「え?」
「(ユキト君はどんな子が好きなんだろう?)だとか(ユキト君って家ではどんな風に過ごしてるのかなぁ?)だとか」
「え? ええ? えええ?」
「(ユキト君にお弁当作ってあげたら喜んでくれるかな?)だとか(もし、ユキト君とデートするならどんなとこがいいかなぁ?)だとか(ユキト君との初キッスは……)」
「わ、わわ、わわわ、な、なな、なに言ってるんですか」
慌てて止めに入るあたし。
「正直に答えな。考えてるだろ?」
本のオバケがあたしをジロリと睨む。
「え? あ、……は、ハイ」
うなだれてあたしは返事した。
そりゃ、考えるくらいはするさ。
いいじゃないか妄想するくらい。
「でも、それって端から見てるとかなりイタいよな」
「え”?」
なんか、今、トンデモナイことを言われなかった?




