4.異世界初めての夜
拠点へ戻ると、そこには立派な"家"が建っていた。
トレいちには骨組みの説明しかしていなかったのに、ツタや枝、葉っぱ、土などを駆使して、ちゃんと屋根も壁もある家に仕上げてくれていたのだ。
なんなら豆腐ハウスじゃなくて、ちゃんと傾斜付きの屋根になっている。…優秀すぎるでしょ、トレント。
外壁にドアのようなものも付いている。どうやって付けているのかはわからないけど、ツタの結び方でちゃんと開け閉めできるようになっているみたいだ。
「…って、あれ?何でこの子たち、そんなことまでできるの…?私、ここまで指示してないのに…」
『先ほども申しました通り、召喚された者たちは、あるじ様がイメージされたことを自発的に再現することが可能でございます。』
「でも、曖昧なイメージだけで、そんな細かいところまでできるものなの?私、作り方とかそこまで覚えてないよ?」
実際、骨組みだけ作ってもらったら、あとはとりあえず大きめの葉っぱを繋ぎ合わせて、一時的に雨風を凌げる場所が作れれば良いかな程度にしか思ってなかった。
『あるじ様の所有する知識の中には、あるじ様ご本人が忘れているものもございます。それらはあるじ様が忘れていても、あるじ様の脳内で保管されておりますので、トレント達はそこからも知識を得ることが可能でございます。』
…要するに、今回の家づくりには、私が昔見たサバイバル動画の内容が重要になるんだけど、私はその動画の内容を3割ぐらいしか覚えていないから参考程度にしかならない。
でも、トレント達は私の一度見たけど忘れてしまった記憶まで辿ることができるから、完璧に再現できる。ってことかな?
相変わらずすげーなおい。
…いやそれよりも!
いつか世界が終末を迎えたり、異世界転生してしまった時のことを想定して、サバイバル動画とかものづくり動画とか色々見といて良かった!
本当に役に立つ日が来るなんて思ってもみなかったけど、厨二病を拗らせた黒歴史なんて思ってごめんよ。
ありがとう、あの時の私…!
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ひとまず疑問は解消されたので、家の中に入ってみる。中もかなり作り込まれていて、床には木の板が敷いてあり、その上には、骨組みだけだけどベッドまで置いてある。
フローリングの作り方はさすがに知らないので、見た目だけ再現したのか、少し不揃いな形をしていた。
ベッドの枠組みには、鉄釘の代わりに木釘を自作して打ち込んでるみたい…本当に器用だ。
そうこうしている内に、思ったよりも時間が経過していたらしく、外が少し暗くなり始めていた。
水源の情報はまだないようなので、一旦暗くなる前にみんなを呼び戻そうと思ったのだが、キーによるとトレントは睡眠を取る必要がないし、疲れたらその場に根を張って休めるので、わざわざ戻ってもらうよりも探索を続けさせたほうが効率いいらしい。
…流石に夜通し働かせるのは良心が痛むから躊躇していたのだが、トレいち達もわざわざ戻ってくるより、その方がむしろ疲れないって言うので、ここはキーに従うことにした。
トレいち達が作ってくれたベッドに腰掛ける。
骨組みだけなので、決して寝心地がいいとは言えないけど、最悪土の上に直で寝ていた可能性もあったと考えると、ベッドがあるだけありがたい。
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夜も更けてきた頃、ベッドで横になりながら今日の出来事を振り返る。
ほんの数時間前まで会社で普通に働いていたのに、気づいたら異世界にいて、急なサバイバル生活をさせられるなんて想像もつかなかった。
両親は数年前に他界したので、そこまで思い残りがある訳ではないのだが、これからの生活を考えるとやはり少し不安が残る。
この世界の情勢や環境、棲息している生き物の種類など、まだまだ知らないことが多すぎる。
魔法の概念もあるみたいだし、紛争が起きた際に、召喚の書がどこまで通じるのかも疑問だ。
ひとまずユノの木のそばいれば、生物に遭遇することは滅多にないみたいだけど…逆を言えば、ユノの木に近づける時点でかなり強いってことだから、安心もできない。
…ってまぁ、うだうだ考えててもどうしようもないんだけどさ!どうも横になると色々考えすぎて、マイナス思考に走ってしまうみたい。
もう考えるのやめ!
まだまだやらないといけないことがいっぱいあるんだから、明日に備えて早めに寝よう。
「キー、おやすみ」
『おやすみなさいませ。あるじ様』




