3.トレントたち
召喚したトレントを抱き上げる。
「なんか思ってたのとは違ったけど、これはこれで可愛いからありかも!なんか名前つけてあげたいな…何がいいかな?」
『あるじ様、トレントは召喚コストが最も低い種族の一つでございます。これから先、大量に呼び出すことが予想されるため、名前をつけられるとすれば、単純で覚えやすいものにすることをおすすめいたします。』
大量…いやまぁそうなんだけど…
「…じゃあもうシンプルに"トレ1"で。」
『……』
「…何よ!キーが単純で覚えやすいのが良いって言ったんじゃん!」
『…いえ、それで宜しいかと思います。』
ふんっ!
「…それじゃあ、とりあえず集められるだけ素材集めて、どんどん召喚していっちゃうね!」
『お待ちくださいあるじ様。素材は確かに無数にございますが、残念ながらあるじ様の現在の魔力量では、1日に10体の召喚が限度でございます。』
「え、そうなの?…ていうか今更だけど、トレントって何ができるの?こんな小さい身体じゃあ、重労働はさせられないだろうし…」
トレいちが横で話を聞きながら頭の枝をふるふるしている。…かわいい!
でも、何かできそうな雰囲気はしないかな…。
『このような見た目ではございますが、トレントは自身より10倍大きなものでも持ち運ぶことができます。また、トレントの枝部分は、ナイフのように物を切り裂くことも可能でございます。』
…めっちゃ優秀じゃんか!疑ってごめんトレいち!
〜15分後〜
「…よし!とりあえず10体分召喚したけど、これからどうすればいいの?…この世界にも昼夜の概念ってあったりする?」
ひとまずトレントを10体召喚し、それぞれトレ1,トレ2…トレ10と数字で名前をつけた。
目の前で10体のトレントがお行儀良く整列している。…良い子だ、やっぱりかわいい。
『はい、こちらの世界でも昼夜は存在いたします。時間の概念に関しましては、ほとんど地球と変わらないものだと思っていただいて構いません。現在、こちらの世界の時刻は、地球でいう午後2時頃となっております。あと4時間ほどで暗くなると思われますので、寝所の確保を早めに行ったほうが宜しいかと思います。』
寝るところか…そういえば前に、サバイバル生活をする人の動画を見たことある気がする。確か地面に骨組みとなる木を差し込んで…
前に見た動画の内容を思い返しながら、良さそうな枝を探していく。ユノの木の枝は、物によっては普通の木の幹と同じくらい大きいものもあるので、木材には困らなそう。
たが、運搬や切断は私には無理だから…
「トレいち、この枝を大体このくらいの大きさに切って、先端だけ尖らせて地面に差し込むことってできる?」
長さ4m、太さ30cmぐらいのもはや丸太みたいな木の枝を、2mぐらいの長さにカットして、地面に差し込むようトレいちにお願いしてみた。
ザシュッ
シュッシュッ
グサッ
おぉ。あっという間に柱が一本立ってしまった…。
「…ありがとう、トレいち。そしたら、こんな形になるように枝を何本か床に差し込んで、それでツタを紐代わりに使って骨組みを作ってもらえたりしない?」
指で地面に豆腐ハウスの図面を描いていく。
説明が下手すぎて伝わるか心配だったけど、トレいちは理解してくれたみたいで、トレにとトレさんを連れて作業を始めてくれた。
「…自分で言うのもアレだけど、よく今の説明でわかったね…」
『召喚された者たちは、ある程度あるじ様の思考を読み取ることができます。全て言葉にしなくとも、あるじ様が思い浮かべた完成品のイメージなどから、自発的に作業することが可能でございます。』
…いや、めっちゃチートやんけ!
「…とりあえず寝る場所の確保はトレいち、トレに、トレさんに任せるとして、次に水源の確保もしないといけないよね。トレントたちを散開させて、いろんな方角を探してもらうのはどう?」
『宜しいかと思います。トレント達は、互いにテレパシーで交流することが可能でございますので、一体おそばに残しておけば、見つけ次第そちらに案内することができます。』
…何と都合のいい能力なんだ…。うん。深く考えないようにしよう。
「なら、トレよんだけ残ってもらって、あとのみんなで水源を探してきてもらっても良い?…あ、あとついでに、擦り合わせると火花が散る石もあったら持ってきて欲しいかも!」
忘れてたけど火も大事よね。火打石なんてあるのかなこの世界…。まぁ最悪、トレントたちの力を借りて、木の棒で火を起こすやつやってみるか。
みんなに水源を探してもらっている間、トレよんを連れてユノの木の周りを探索してみる。
しばらく歩いてわかったことは、ユノの木から半径500mぐらいはほとんど何もない。動物もいないし、植物も生えていない。
ただ、さらに外周に行けば、少しづつ植物の数が増えているのが確認できた。
「あ、あれりんごみたいで美味しそう。キー、あそこになってる実って食べれる?」
『そちらはペネの実でございます。栄養価の高い食用可能な果実でございますので、問題ありません。』
少し背の高い木に実がなっているので、トレよんにお願いしてみる。
本当はトレよんを持ち上げたら届くかなって思ってお願いしたんだけど、抱き上げる前に枝を伸ばして取ってきてくれた。
…トレントの枝って伸びるんだ…触手みたいに自由に動かせるみたいだし、便利…
「…ありがとう、トレよん。」
取ってもらったペネの実を一口かじってみる。
少し酸味はあるが、かなりみずみずしく、甘みもあって美味しい。
これならすぐに水源が見つからなくても、多少は水分補給できそう。
「出来れば多めに持って帰りたいんだけど、入れ物が何もないんだよね…。」
ペネの実をどうやって持って帰ろうか悩んでいたら、トレよんの枝がうねうねっと動き出した。
どうしたんだろうと思って見ていると、枝で大きなカゴを作り出して、そこにペネの実をどんどん載せていく。
…いやだから、便利すぎるでしょその枝。何でもありかよ…
何はともあれ、ひとまずこれぐらいあれば数日は大丈夫でしょう。贅沢をいえばタンパク質も取りたいところだけど…まぁ、それは後々見つけていけば良いか。
そんなこんな考えてうちに、頭にペネの実をたくさん載せたトレよんが戻ってきた。
まだカゴいっぱいにはなっていないので、途中で切り上げて帰ってきたみたい。
「どうしたの?」
トレよんによると、どうやらトレいち達が担当している豆腐ハウスが完成したらしい。
そしたらペネの実は今ある分で足りそうだし、一旦戻るとするか。




