21.地下室
「ーー…ダメだ!全然思い出せない!まぁ最悪そのまま土の中に埋めとくだけでも傷みにくいらしいし、それでいっか!」
しばらく考えたけど、全く思い出せないので一旦諦めることにした。
シルフ達が帰ってくる前に、果実を煮詰める用の鍋も欲しいところだ。
近場のちょうどいい大きさの石をくり抜いて鍋代わりにできないだろうか。
トレいちにお願いしてみようとあたりを見渡す。
…がどこにもトレント達の姿がない。
「…あれ?トレいち達さっきまでここにいなかったっけ??」
不思議に思っていると、サラマンダーのサランが近寄って来た。
レナ達の前に召喚した5体のサラマンダーは、それぞれサラン、サラワ、サラロ、サラレ、サラルと名付けた。めちゃくちゃ安易だが、サラマンダーの名前は、シルフの逆で五十音のンから始めたのだ。
サランは近くまで来ると、尻尾で私の後ろ側を指した。
後ろを振り向けってことかな?
尻尾の指示に従って後ろを振り向くと、家から少し離れたところに巨大な穴が空いているのが見えた。
「…え!?何この穴、さっきまで無かったよね!?」
近づいてのぞいてみると、中は階段状になっていて降りれるようになっていた。
足で階段を踏みしめてみると、意外と頑丈そうだったので降りてみることにした。
「うそ!?地下室じゃんこれ!!」
下まで降りると、目の前には地下室が広がっていた。
まさに思い描いていた通りの地下室だった。
…そういえば、召喚した子は私の忘れてた記憶まで読み取れるんだっけ…。
トレント達は今、床にばら撒かれた泥状のものを壁やら天井やらに塗りたくっているところだ。
邪魔にならないよう、地下室に続く階段に腰をかけて様子をみる。
トレント達は、木の枝を何本か並べて器用に泥(?)をすくって壁に塗っていた。
…みんな枝が直角に曲がっちゃってるよ…折れないか心配だ。
『あかね〜、取ってきたよ〜。』
そんなこんなしていると、シルフ達が帰ってきたようだ。
「こっちこっち。」
地上から穴を覗き込んでいたシルアを手招きして呼び寄せる。
「この部屋の中の壁、風魔法で乾かせたりする?」
確かこういう壁に塗るモルタルとかは乾くのに時間がかかるはず。できればすぐにでも野菜を保存しておきたいので、魔法で乾かせないかシルアに聞いてみた。
『う〜ん、多分大丈夫だと思うよぉ?やってみる?』
「できればお願いしたい!」
『おっけ〜』
ちょうど話している間にトレント達も作業を終えたようなので、シルアが地下室に入って魔法を使って風を起こした。
強すぎる風だと地下室ごと吹き飛ばしかねないので、ドライヤーの弱くらいの風量を部屋内と外で循環させているようだ。
当然通り道になっている階段部分にも風が吹いてくるので、早々に地上へと避難した。
しばらくしたらシルアが地上へ上がってきたので、もう終わったのかと驚いていると…
『あとはこのまましばらくすれば乾くとおもうよ〜』
階段の方は近寄るとまだ風が吹いているのを感じる。
「魔法って操作してなくても維持できるの…?」
『これぐらい簡単なやつならそうさしなくても大丈夫だよ〜。でも魔力ぎれになったらさすがにとまっちゃうけどね。』
…やっぱり便利ね魔法って…。
とりあえず地下室は一旦後回しにして早速料理を始めようかと思ったのだが、鍋がないと話にならない。
「トレいち、終わって早々ごめんね。ちょっと聞きたいのだけど、そこらへんにある石をくり抜いて、鍋の形にすることってできたりする?」
話を聞くなりトレいちがどこかへ走り出した。
しばらくしたら、バスケットボールぐらいのサイズの石を一つ頭に乗せて帰ってきた。
少し離れたところで立ち止まったかと思うと、おもむろに石をシルアの方へ差し出した。
『きって欲しいの?わたしは地下室に風送ってるからむりだよ〜。ほかの子におねがいして〜。』
トレいちはそう言われると、今度は石を抱えてルノのところに寄って行った。
『あかねの欲しいかたちにきればいいだね〜。そぉれ〜!』
ルノはそう言うと、両手の内側に何やら丸い渦のようなものを作り始めた。
その丸い渦を石の方へ近づけると、接触した石の部分がどんどん削られていく。
「ほえ〜どうなってるの?それ。」
気になってルノに聞いてみる。
『これね〜風をぐわんぐわんってはやく動かしてるんだよぉ〜。』
うーん、よくわからなかったけど、要はウィンドカッターの応用みたいなもんかな…?
『できた〜これでどぉ??』
ルノがきれいな半円状の鍋を渡してくれた。
「完璧だよ!みんなありがとう〜!よぉし、今日は頑張ってご馳走作るから、みんな楽しみにしててね!」
普段から自炊が趣味でもあったから、こういう道具が限られた状況での料理は少しワクワクする。
絶対美味しいものを作ってみんなに振る舞うぞ!




