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召喚の書と共に異世界生活  作者: くるみ


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14.2人のレオナ




『初めましてご主人様。今後ともよろしくお願いいたします。』


2人のレオナの内一人が、日本語で自己紹介を始めた。

もう一人のレオナは自分と全く同じ見た目の何者かに驚いて、完全に固まっている。


「えっと…ドッペルゲンガー…?」


『はい。ドッペルゲンガーのレオナでございます。』


そう言って、レオナ(偽)が手を胸に当て一礼をした。

相変わらず本物のレオナは固まったまま。


「えっと、…レオナ?」


名前を呼ぶと2人のレオナが同時にこちらを見た。


「ややこしい!…ごめんね、同じ名前の人が2人いると呼ぶ時にややこしいから、あなたのことはレナって呼んでもいい?」


レオナ(偽)に対して聞いてみた。


『もちろんです、ご主人様。』


よし、これで区別が楽になる。

それより、レナに聞かないといけないことがあることを思い出した。


「そういえば、レナってレオナの記憶を引き継いでいるんだよね?こっちの世界の言葉も話せるの?」


『はい。レオナが知っている言葉なら私も話すことができます。』


これは朗報だ。これで現地の人と全く交流できない難題が解決されそう。


「良かった!…それじゃあ早速で申し訳ないんだけど、レオナと話がしたいの。通訳してくれたりしない?」


『もちろんです。』


私はレオナのこれまでの経緯や、契約について聞くことにした。

と言っても、レナはレオナの記憶を完全に引き継いでいるので、ほぼほぼレナが回答しちゃってレオナは置いてけぼりになっている。


…とそうだ、レオナに私の能力やドッペルゲンガーについて説明しないとだった。

ずっと驚いて固まったままなので、流石に可哀想になってきた。





「ーー…嘘でしょ!?あの男最悪だね!!…それにしても、この世界ってギルドや冒険者がいるタイプのファンタジーなのね…めちゃくちゃワクワクするかも…!」


前世ではゲームやアニメ、漫画、ラノベなどが大好きだったので、ファンタジーものを見ると毎回ギルドや冒険者に憧れたものだ。


レナによるとレオナの実力はこの世界では中の上〜上の下ぐらいで、この前洞窟で見た巨大蜘蛛は、レオナ単体よりは強いけど、パーティを組めば倒せなくはないレベルらしい。


シルアが風魔法で一撃で倒したことを伝えると、最低でもAランク冒険者に匹敵するとのことだった…シルフって強いんだね…あんなに小さいのに。


それより衝撃を受けたのは、ミルクが実はレオナの祖国で聖獣として敬われていて、こちらの世界の言語なら話すこともできるということだ。


…完全に犬扱いしてしまった…バチ当たったりしないよね…?


一通り知りたいことは全部聞けた。

ついでにこの世界の常識やら生態やらも聞いてみたのだが、基本的に前世のファンタジーものとそんな変わらない感じだった。


全く訳のわからない世界観じゃなくて良かった。

こういう世界は大体実力主義なので、力さえつければ割と安心できるはず。


レナが言うには、私のような自分の力ではなく、契約したモンスターや精霊などに戦わせるタイプの冒険者は、テイマーと呼ばれるらしい。

…まぁ、これも想像通りだね。


ただ、私自身はこの世界の平均からすれば貧弱もいいところらしく、常にそばに誰かしら護衛として残らないと危ないんだそうだ。


…ちょっとデスクワークが長くて体力も筋力も少ないかもだけど、日本人女性の中なら多分平均ぐらいだもん…!


ともかく、自分自身の安全が確保できるまでは、まだしばらく聖地に残ろうと決意した。


「…でも、外の世界の情報も欲しいのよね…。」


レオナも聖地に残っている間は完全に情報が遮断されちゃうし…こういう世界観だと、急に魔王的なのが出てきたり、国同士で戦争始めたり、聖女召喚してやばいの呼び出したり、私以外にも異世界人が現れて無双し始めたり…何が起こるかわからない。


それこそ何らかの事情で聖地に乗り込んで来ようとする人が現れてもおかしくないので、なるべく最新の情報は入手しておきたいところだ。


「…ねぇキー、ドッペルゲンガーの召喚って同じ模倣者で何回も出来たりする?」


『可能でございます。それと、ドッペルゲンガー間でも他の種族同様テレパシーで意思疎通ができますので、一体おそばに残しておくことをお勧めいたします。』


おぉ…テレパシーでの通信はやっぱりできる前提なんだ…スマホのない世界だから助かるけども…


「…それなら、レオナのドッペルゲンガーをもう何人か召喚して、いろんな場所で情報を集めてもらうのはどうかな?」


レナとレオナに聞いてみる。


『理論上は可能ですが…問題もあります。レオナの身分証が一つしかないため、本来のレオナとして活動できるのは一人のみです。この世界の身分証はかなり精密にできているため、別のギルドで再発行などもできません。…ただ、方法もいくつかあります…ーー』


レナの言う方法をまとめると、


1.レオナのギルドカード(身分証)を持って、元いたギルドでそのまま活動する。


→アルラント王国は聖地の東に位置するので、東側全体の情報を気にしつつ、ギルド内の情報収集もお願いする。



2.故国のオクトナシアに戻り、レオナの生家_フィーリディ伯爵家に戻る。


→そう、なんとレオナの生まれは貴族なのだ。

ただし、両親は生粋の貴族思考で、女のレオナには政略結婚以外の価値はないと考えており、当時まだ11歳のレオナを30歳以上離れた侯爵の後妻に当てようとしていたので、当時の世話係の助力により何とかアルラントまで逃れてきたらしい。

そこから5年も経っているので、本来なら除籍されていてもおかしくないのだが、レナいわくレオナの両親なら、"娘"としての価値を見せられれば大丈夫なんだとか。

まぁともかく、これが上手くいけば貴族としての身分が手に入るので、身分証なんかも必要ないし、オクトナシアは北部で最も権威のある大国なので、これで北側の情報も大丈夫そう。



3.治癒能力を使って教会の司祭になる。


→この世界には各国の王侯貴族とは別に、教会の勢力も存在する。教会は大陸中から治癒能力を持つ者をスカウトし、教会の本元である聖プリエスト皇国で教育を施し、そこから各地の教会支部に司祭として派遣してその地の者達に治癒を施してるらしい。…お布施と引き換えに。

ただ、想像したほど酷いぼったくりはないらしく、値段によって見てもらう司祭のレベルは変わるけど、初級の見習いならば平民でも賄える額ではあるそうだ。

もちろん、レオナに治癒能力はないので、どうするかというとシルフを一体連れて擬似的に使えるように見せかけるらしい。

シルフは精霊なので元々存在感が薄いうえに、風魔法で周囲に溶け込めるらしいので、存在がバレることはないんだとか。



『ーー…聖プリエスト皇国は聖地の西側に位置するので、これで東側、北側、西側の情報は網羅できると思います。南側に関しては、魔の森が広がっているだけで、上位の冒険者が稀にモンスターを討伐しに立ち入るぐらいなので、レオナの姿で向かう必要はないと思います。必要ならシルフやトレントに行かせれば十分かと。』


「なるほど…よく考えられてるね。でも、冒険者ギルドに戻るのはともかく、実家に帰るのも教会に入るのも危なくない?」


11歳の娘を後妻にしようとするような家が、勝手に逃げ出した挙句5年帰ってこなかったレオナを簡単に受け入れるとは思えない。


教会も、話だけ聞けばそんな悪いところではなさそうだけど、前世のイメージに引っ張られてかどうもきな臭く感じるんだよね…。


『教会に関しては、他国の目もあるので、治癒能力を持つ者はかなり優遇されております。シルフのヒールは上位の司祭にも引けを取らないので、それなりの地位は与えられるかと思います。

…それとフィーリディ伯爵家ですが、こちらも策はあります。噂によると、レオナが逃げ出した後、侯爵の怒りを沈めるためにフィーリディ家はレオナの2つ年上の姉を代わりに嫁がせたそうです。

彼女はまだ年若かったが、見た目も所作も淑女の鏡と謳われるほど完璧だったらしく、レオナの両親は彼女を王家かそれに連なる高位貴族に嫁がせる予定だったのだとか。

それが叶わなくなったことで、きっと怒り狂っているでしょうが…もし、5年ぶりに帰ってきた末娘が、当時の三女以上の淑女となっていたらどうでしょう?

"今度こそいける"と思いませんか?

5年経っているとはいえ、レオナはまだ16歳。婚約させるにはまだ遅くない年齢です。』


「…うん、とりあえず教会はわかったから一回置いとくとして、…え?実家には婚約する前提で帰るの??そのまま結婚までさせられたらどうするのさ!?」


淡々と話してる割に内容のスケールがデカすぎる。

レオナの姉が13歳で嫁がされたこととか、レオナまだ16なの?!とか、ツッコミどころは色々あるけど、誰かもわからない人と婚約する前提とか、いいの?それ。


『結婚まで発展するのはむしろ好都合です。フィーリディは伯爵家ですが、予定通りなら最低でも公爵家以上に嫁げるはずです。位が高いほど情報も集まりやすいかと。』


いやいや、そんな我が身を犠牲にしてまで情報収集する必要もないからね??


『…ご主人様。お気遣いは嬉しく思いますが、私はあくまでもレオナの"ドッペルゲンガー"であり、"レオナ"ではありません。いくら記憶があって完璧に真似できると言っても、感情まで引き継ぐ訳ではないので、この程度、苦でもなんでもないのです。』


「…そういうものなの?」


『そういうものです。』


…まぁ、本人がそういうのなら納得するしかない。

実際、王侯貴族にしか手に入らない情報も絶対あるので、助かることに違いはないのだし…。


平和で比較的平等な現代社会に生まれ育った身としては、若干引っかかりは残るけど、理屈はわからないでもないので、渋々受け入れる。


ぐぅ〜


話し込んでいるうちにかなり時間が経過していたようで、昨晩から何も食べていない胃袋が抗議し始めた。

一旦会議(?)を中止して食事が必要なみんなにペネの実を配る。


…ペネの実も美味しいんだけど、そろそろ肉が食べたいな…。





…一旦お腹は満たせたので、改めてレオナに協力してもらってあと4人ドッペルゲンガーを召喚した。


名前はレナにちなんで、レニ、レヌ、レネ、レノ。

…センスはないかもだけど、シンプルにしないと忘れる自信しかないからしょうがない。


召喚している間、新しく増えたみんなが寝泊まりできる場所をトレント達に増やしてもらった。

中の作りは私の家と同じで骨組みのベッドしかないけど、レナ曰く、レオナは冒険者として活動していたため野宿もしょっちゅうあるそうで、野晒しで寝るのに比べたら、雨風も防げて暖かさも保てる家は全然贅沢だそうだ。


…貴族のお嬢様から熟練の冒険者になるまで、かなり苦労したんだろうな…。





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