13.ドッペルゲンガー
「…はぁ、やっと家に着いた…。」
あれからしばらくして、ようやく家に帰って来れた。
振り返って見ると、レオナを含めみんなついて来れている。
色々ありすぎてまだ頭が混乱しているけど、1日経って回数もリセットされたことだし、一旦召喚をしようと召喚の書を出した。
見てみるとやはりまだサラマンダーまでしか顕現されていない。
火石も昨日手に入れられたし、とりあえず10体召喚しようかなと準備をしていたところ…
『あるじ様。サラマンダーに関しましては、5体召喚すれば次の種族が解放されます。そのため、一度召喚する個体数を5体に留めることをお勧めいたします。』
「え?そうなの?…開放条件って種族によって違うんだね…。」
とりあえずキーの言う通り、5体だけサラマンダーを召喚してみる。
サラマンダーの見た目はトカゲみたいで、頭と尻尾に赤い毛のようなものが生えている。近づいてみると、赤い毛だと思っていたものが、実際は実態のない炎だったのに気付いた。
毛だと思って触ったのでびっくりしたが、案外熱くはなく、特に火傷などもなかった。
抱き上げてみると、火属性なだけあって体温が高く、湯たんぽを抱えているようだった。
…もうちょっと寒くなったら、一緒にベッドで寝てもらおうかな。
ともかく、サラマンダーの召喚数が条件に達したので、召喚の書に新たな種族が顕現された。
《ドッペルゲンガー》
属性:闇 種族:幻影族 寿命:5年
スキル:模倣
影や幻などを操る幻影族の一種。生き物の真似をすることができ、見た目だけでなく記憶までコピーして完全にその者になりきって生活することができる。
召喚素材:
紫水晶/ 10個
模倣者/ 1
※注意:一度召喚すると、姿を変更することはできない。
…なんかよくわからないけど、紹介見るだけで凄そう…。
「…キー、この模倣者ってコピーする相手を見つけなきゃいけないってことだよね?…素材ってことは、他の物みたいに吸われたりするの…?」
生き物が召喚の書に吸われていく様を想像してしまった。…あんまり見たくはない光景だね。
『模倣者に関しましては、ドッペルゲンガーに与える情報を読み取るだけですので、本体に影響はございません。』
…よかった。流石に生きている者が本に吸われていく光景は、ホラーすぎて夢に出てきそうだから遠慮したい。
「…ねぇキー、模倣者って誰でもいいんだよね?」
『はい。基本的に同じく召喚の書から召喚された者でなければ、問題ありません。」
一つの考えが頭をよぎった。
「…それってさ、私を真似させることもできたりする?」
『あるじ様がよろしいのであれば、問題ありません。』
確かに記憶とか完全に読まれるのはちょっと嫌だけど、何の情報もなく危険かどうかもわからない異世界で、自分の代わりに動ける人がいるのはかなりありがたい。
…でも言語が通じないのは問題なんだよね。
「…記憶を読んで完全に真似するってことは、もしかしてレオナを模倣者にすれば、異世界の言語を理解できるドッペルゲンガーを生み出せるってこと?」
『はい。可能でございます。』
召喚した眷属?なら、私の考えも読み取れるはず。それなら、召喚したレオナ(偽)からなら、異世界の言語を学ぶこともできるかもしれない。
でも、どうやってレオナに伝えればいいんだろう…。
『あるじ様、模倣者となることに本人の意思は関係ありません。ですので、模倣者は召喚する際に素材となる紫水晶と共にしばらく留まって貰えれば召喚することが可能です。』
ということは、レオナにしばらく動かないようにしてもらえればいいってことね。それなら出来そう。
あとは紫水晶が手に入ればだけど…またトレントやシルフ達に探してきて貰わないとかな。
毎度毎度、みんなには苦労をかけてばかりだなと考えながら、紫水晶の文字をタップし詳細を表示する。
いつの間にか、すぐそばまで近づいていたレオナが、紫水晶のイラストを見た途端何かを伝えようとしてきた。
相変わらず言語は通じないのできょとんとしていると、レオナが腰に巻いていたウエストポーチのような物から、何かを取り出し始めた。
レオナの手に持っているものと、紫水晶のイラストを交互に見比べる。
…探す前に見つけてしまった…。
相変わらず都合が良すぎる気がするが、気にしたら負けなので素直に喜ぼう。
一個だけでは足りないので、身振り手振りでレオナにどこにあったのか聞いてみる。
細かいニュアンスは伝わらなかったものの、私が紫水晶を欲しがっているのは分かってくれたようで、レオナがどんどんポーチから水晶を取り出し始めた。
どこにそんな量の物が入るんだと一瞬疑問だったが、ゲームや小説ではこういう見た目以上に物を入れられるポーチは定番アイテムなので、すぐに納得した。
これで素材は揃ったので、すぐに召喚できそうだ。
自分のドッペルゲンガーも欲しいところだが、まずは言語の壁をどうにかしたいので、レオナのドッペルゲンガーを召喚することにした。
何とかレオナに動かないよう伝え、すぐそばに紫水晶を置く。
驚いて動かないよう、あらかじめレオナには目を瞑ってもらっているので、気にせず召喚の書を開いてレオナの方に向けた。
バフッ
目の前に大きな煙が立ち上がり、しばらくして見えてきたのは、全く同じ見た目の2人のレオナだった。
『初めましてご主人様。私はレオナ、今後ともよろしくお願いいたします。』




