10.ケモ耳娘 ※別視点
ーー…うっ、うーん…。
何だか長く眠っていた感じがする。
ぼんやりとする頭を押さえて、ゆっくりと起き上がった。
「…え?」
ここはどこ…?何でこんな薄暗い洞窟の中に…
だんだんはっきりとしてきた頭が、気を失う前の記憶を呼び起こす。
…そうだ!アダムが私を囮にして、イリアと2人で逃げやがったんだ!!
蜘蛛の方へ投げられた時、もう終わりだと思った。
仲間だと思っていた者に裏切られて、グレートアラネアに食べられる運命なのかと絶望したのだが…どうやらまだ生きているようだ。
身体の傷もほとんど塞がっている。
誰かが助けてくれたのだろうか。
洞窟の中を見渡す。
入り口に近いところには小さな木が生えている…洞窟の中に木が生えることもあるんだな。
そこから少し中へ入ったところに、伏せた体勢の犬型の生き物と、それに抱きついて寝ている人型の生き物がいる。…この者が助けてくれたのだろうか。
しばらく考えていると、ふと犬型の生き物と目が合った。いつの間にか起きていたようだ。
犬型の生き物は、人型の生き物をそっと地面に下ろし、こちらへ向かってきた。
!!
「…せ、聖獣様!?」
近くまで来てようやく気づいた。あの犬型の生き物は、故郷オクトナシア王国の聖獣様だったのだ。
…しかし、聖獣様がなぜこのようなところに…。
「娘よ。我をそのように呼ぶと言うことは、オクトナシアの者であるな。何故あのようなところにおったのだ?」
「…はい。今は故郷を出て、アルラント王国で冒険者をしております。…こんな事になってしまったのは、全て自分達の力量を見誤ったからです…。」
それから、どうしてこんなことになったのか、これまでの出来事を全て聖獣様に話した。
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〜5日前〜
アルラント王国
サウスカルディア
私_レオナ・フィーラインは冒険者ギルドサウスカルディア支部に所属するC級冒険者。
同じくC級の冒険者、アダムとイリアと3人でパーティを組み活動している。
3人ともつい先日昇級したばかりで、本日はC級になって初めての依頼を受けにギルドへ来ていた。
ギルド内、依頼ボード前。
ボードに載っている依頼を見ながら、どれにするか3人で話し合う。
「これなんてどう?B級の中でも比較的難易度が低そうだから、安全でいいと思うけど…」
ギルドの依頼は、自分の等級より一つ上まで受けることができる。C級に昇格したので、今はB級の依頼まで受けられるようになったのだ。
しかし、受けられるようになったとはいえ初のB級なので、最初は小手調べに比較的簡単なものを選んでみたのだが…
「報酬がC級と変わらないんじゃ昇級した意味がないじゃないか。どうせ受けるならこっちだろ。」
「アダムの言う通りよ。せっかくもっと稼げるよう昇級試験頑張ったのに、結局ちまちました依頼ばかり受けてたら意味ないじゃない。」
アダムもイリアも、B級の中で最も報酬が高い依頼を受けようとしていた。
依頼内容は簡単に言えばマッピングだ。
まだ正式に調査されていない地に赴き、手作業でマップを制作するという至ってシンプルな依頼だが、未踏の地故にどんな危険が待っているかもわからない。
難易度の設定が難しいので、基本的にC級以上なら誰でも受けられるようになってはいるが、かなりリスクが高いためC級で受ける人はなかなかいない。
「マッピングなんて、C級の私達には無理だよ!しかもこれ、聖地にかなり近い場所じゃん、絶対危ないよ!」
「何だ、ビビってるのか?冒険者なんだから、多少のリスクは覚悟の内だろ。それよりも、今回の依頼をこなせば、最低でも半年は遊べる金が入るんだぞ?場合によっては数年遊んで暮らせる金が入る可能性もあるんだ、さっさと他の奴らに取られる前に受けるしかないだろ。」
「でも…!」
「オレは何と言われようと行くからな。嫌ならパーティ抜けろ。他のメンバーを募集するから。」
少し気持ちが揺らいだ。危険なのは確かなのだが、アダムの言う通り、運が良ければかなりの額が手に入る。
「いいじゃない?他の依頼を受けたって危険なのは変わらないんだし。」
「…わかったよ。でも、危なくなったら即引き返すからね!」
「はいはい。」
こうして私達は、サウスカルディアから馬車で3日ほどかかる森の奥地へ赴いたのだった。
…
「ーーー…ここが依頼書にあった洞窟ね。流石聖地に近いだけあって、魔素がカルディアの倍は濃いわね。」
イリアの言う通り、ここ一帯の魔素はサウスカルディアに比べると倍近く濃い。
イリアは魔法使いで魔力が高いため、まだまだ余裕そうだが、私とアダムはそこまで魔力が高い訳ではないのでちょっときつい。
…これじゃあ普段の8割ぐらいしか力が出ないかも…。
ただでさえ危険なのに、実力も普段より制限されるなんて…すでに依頼を受けたことを後悔し始めていた。だが、ここまで来て引き返す訳にもいかないので、慎重に洞窟内を進む。
「…何だよ、全然モンスターいないじゃないか。やっぱりこの依頼、受けてよかっただろ?ちょっと地図描いて行くだけで、あんな額の報酬が貰えるんだから。」
…洞窟に入って1時間ほど進んでいるが、まだ一匹もモンスターに当たっていない。
アダムとイリアはすでに気が抜けているようで、辺りの警戒を完全に怠っている。
モンスターがいないことに越したことはないのだが、ここまで静かだと逆に不気味だ。
このまま何事もなければ良いのだが…
「…ねぇ、あっちの方向、他よりも魔素が濃いみたい。何かあるのかも知れないわ。」
魔素が濃いということは、お宝が眠っている可能性が高い。イリアの示す方角へ進んでみることにした。
「…こ、これは…!」
しばらく進んでたどり着いたのは、壁一面紫水晶に埋め尽くされた空間だった。
アメジストは魔力をよく通す為、魔道具の作成に使われる素材だ。特に見た目が美しいため貴族用の魔道具に良く使われており、希少価値も高いので、これだけの量があれば一体いくらになるのだろうか…。
「…とにかく、持てるだけ集めるぞ!ギルドに報告して情報料をもらうにしても、その前に多少はいただいても問題ないだろ。」
「これだけあれば、本当に数年は遊んで暮らせるわね…。やっぱり来てよかったわ。」
一抹の不安を抱えながらも、これだけのアメジストに興奮せずにはいられなかった。
アダムとイリアに続いて、私もアメジストの採取を開始した…ーーー




