050 死者が迷い込むゲーム
◇ ◇ 6月22日 海底の大地 ◇ ◇
「アルターね。それって本名?」
「本名さ。祭壇って名前なのはいくら何でも本名とは思えないだろうけどな」
本名なんだ。
本人もちゃんと分かってて言ってるよ。
まあ、そういう物体の名前が人の名前になってるのはたまにあるよね。
「ちなみにアルターだけにクラフティングアルターが使える。アルターだけになアハハ」
うん、ギャグのつもりなんだろうけどぜんぜんおもしろく無い。
というか多分ほとんどの人に通じてないと思うよ。
「クラフティングアルターが使えるってことはクラフターなの?」
「クラフター? なんだそれ?」
クラフターを知らないの?
「あ~そういうことか。そうだよな。オイラは死んだはずだもんな。つまりどこかにあるゲームの世界に入り込んだわけだ」
なんか物騒なこと言い始めたぞ。
死んだってどういうことだろうか?
「死んだってどういうこと?」
「オイラの中では終わったことだ。オイラは死んでここに迷い込んだ。だからクラフターというのも何も知らない。それでいいだろ」
これは意地でも言わないだろうね。
ひとつ確かなのは何かしらの要因で死んでこの世界に迷い込んだってことだね。
ゲームに死んだはずの人間が迷い込むというのは稀に起こる事件だ。
VRゲームとしての完成度が高ければ高い程その可能性は高まる。
だからあり得ないと言えるような現象では無い。
「死んだ人間がこの世界に迷い込んだということか。ホムラ達も異世界からここにやってきている訳だしあり得ない事態では無いのかもな」
「ただ、そうなると区分的にはどれに属しているのでござろうか?」
「ほぼ間違いなく冒険者だろうね。なぜかこっちに来て布がいじれなくなったとかそういうところだろうし」
ああ、なるほどね。
だから錬金術があれだけできて布の加工が出来なかった訳か。
冒険者があつかえる生産技能って限られてるしね。
ってことはよくありがちな死者がゲームの中に入り込んで大暴れするというのはこの世界ではないわけね。
あの時の悪徳工房に運営の一部が関わってたから管理態勢が杜撰だなとは思ってたけどゲームの中身は意外とちゃんとしている訳ね。
「まあ、そういうのはどうでもいいか。それよりもオイラの商品を買ってくれないか?」
「やけにのんきすぎない!?」
迷い込んだあげく遭難しているのにそんなにのんきで良いの!?
「どうせ出たところでもう守りたかった人も誰も居ないわけだしな。もうどうでもいいと思ってるからここから動く気はないよ」
「うわぁ、すごい濁った眼をしてるでござるな」
何というかここに来るまでに壮絶な何かがあったんだろうね。
何かを守ろうとして動いてたけど結局守れなかったんだろうね。
「アクターも、シアもフィルも守れなかったしな。セクとアスも無事かどうか怪しいところだ」
役者ね。似たような名前って事は兄弟もしくは姉妹だったんだろうね。
まあ、言い方的にアルターよりも前に既に亡くなってるみたいだけどね。
「その名前は全員・・・・・・」
「オイラの姉妹さ。アクター、アルター、セクター、シアター、フィルター、アスターの六姉妹だ。役者、祭壇、領域、劇場、濾過、花の名前とまあ六女を除けば変な名前だ」
姉妹だったんだね。
というか何かセクターって名前だけ聞き覚えある気がするね。
パンドラ六姉妹の三女って名乗ってたよね?
「もしかしてフルネームはアルター・パンドラだったり?」
「? そうだが」
やっぱり。
「セクターと同じパンドラが付いているでござるか?」
「!? セクにこの世界で会ったのか!?」
アルターは立ち上がりオボロに詰め寄った。
その眼はさっきまでとは異なり真剣な表情だった。
コクウ(いや、会ったのは君の姉妹のセクターじゃないんだよ。君とは異なるアルターという姉を持つパンドラ姉妹なんだよと言いたいけど言える雰囲気じゃないね)
ホムラ(そういえばコクウがセクターのオリジナルとかどうとか言ってたね。多分、そういうことなんだろうね。となるとセクターについてコクウは知ってるのかな? あれ? そうなるとコクウもアルターと同じような経緯でここに?)




