046 ホムラの本音
◇ ◇ 6月20日 砂鉄の大地 ヒュルリ砂鉄山周辺 ◇ ◇
「【居合一閃】!」
オボロは地面の中に潜むサンドフィッシュごと地面を斬り裂いた。
砂鉄の砂は一瞬引き裂かれすぐに埋まるように戻っていった。
でも、その痕跡だけは少しだけ残った。
「おお! かなり強くなったね」
「闘気の量も桁違いに増えたでござるからな。本気の一撃を何度でも使えると言うのはいいでござるよ」
私は一足先に訓練を終えたオボロと共にヒュルリ砂鉄山付近の砂鉄の大地まで移動した。
そこで増えたエネルギーを利用して戦闘訓練を行っていたのだ。
オボロの場合想定以上にエネルギーが増えたからね。
「さて、それじゃあ大量に砂鉄を回収しよう」
砂鉄の大地の砂鉄の中には色んな金属が含まれてるからね。
回収が困難だから余り人気が無いけど回収できれば宝の山だからね。
「にしても、サンドフィッシュの探知も出来るようになったんだね」
「闘気が有り余ってるでござるからな。武技も全力で振るうことができるでござるよ」
まあ、ドラゴン討伐の訓練前の話とは言え結構エネルギーが枯渇してたしね。
探知にエネルギーを回してる余裕が無かったんだろう。
今ではそっちにエネルギーを回しても十分立ち回れるようになったってところだろうね。
しかも、依然とは違って今回は一人だ。
全部の負担がオボロを襲ってるのに全て対処して疲弊した様子も無いからね。
「にしても、痛みによる感知なんてきついと思っていたでござるがそうでもないでござるな」
「まあ、慣れてしまえばどうにでもなるからね。ずっとつきあわなきゃいけない体質なんだしね」
いまは自己暗示が解けてるから普通では無いというのが分かってる。
最近忙しすぎたから想定よりも早いタイミングで暗示が切れたからね。
切れたタイミングがオボロと二人きりの時で良かったよ。
でも、このタイミングで切れたのは結構いいことだと思う。
自分が普通では無いということを理解した上で同じような体質のオボロと対話できるからね。
「ところで、オボロはこの痛みをと言うより体が人よりボロボロになりやすい体質についてどう思う?」
「え? どうしてそれを今尋ねるのでござるか? それにホムラ殿はそれが普通だと・・・・・・」
「思ってる暗示を掛けてたんだよ。たまたまこのタイミングでその暗示が解けたからね」
暗示を掛けている理由は自分が他人に嫉妬してしまうのを防ぐため。
一件私の体は普通に見えるだろう。
だけど実際には違う。
「たしかにこの体質で生まれたのは辛かったけどがそれを支えてくれる皆がいたからね」
それを支えてくれる皆ね。
ところで・・・・・・
「素を出しちゃって良いの?」
「ホムラが素を出してるんだから私も素で話さないとって思っただけだよ」
暗示なしの私の素ね。
まあ、痛みに対する考え方が大きく変わるだけでそこまで違いは無いと思うんだけどね。
「私の場合は誰も居なかった。いや、居たのかもしれないけど私はなにも覚えてなかった」
私の体質はオボロのそれよりも圧倒的に酷い体質だ。
正直言っていまは普通だけどかつては醜かったんじゃ無いかな?
「私の体質は痛みを異様に感じやすいんじゃ無くてあらゆる干渉で体がボロボロになっていくある種の呪いなんだよ」
「ボロボロ!? でも・・・・・・・」
「一見まともに見えるでしょ? でも私の体は今もなお崩れてる。そしてそれを感じさせない速度で再生している」
私が後天的に獲得した力なんだろうね。
崩れる体質さえ無ければ大けがでも一瞬で回復するくらいに超強力な再生能力が私には備わっている。
どういう経緯で獲得したのかは分からないけどね。
まあ、そんな再生能力も消し飛んだ臓器や部位を再生させることは出来ないみたいだけどね。
恐らく別のもので再生能力を補佐してあげれば何とかなりそうな気はする。
「記憶の無い私はそんな体質を持っていることに耐えられなかった。心の支えが一つも残ってないんだし当然だよね」
心の支えが無いんだからそんな体質に耐えられない。
しかも動けない大けがまで負っている。
それで狂わないわけが無い。
「だから私は自分に暗示を掛けた。それが当たり前だと思う暗示をね」
それのおかげで私は辛うじて狂わずに済んだ。
暗示を掛けた事実は覚えてる。
でもその暗示がなんなのかは思い出せないようにしていた。
「私はね。この体質と未だに折り合いがつけられてない。折り合いをつけられる程経験を積んでないからね」
記憶失ってからの一年間。
楽しいことも沢山あった。
仲間も沢山出来た。
「大切な人ができたから怖いんだよ。自分と比べてしまって嫉妬してしまう自分が居ることにね」
私は辛い思いをしてようやく皆と同じような体を得ている。
でも、痛いのはイヤだからそういうのがない皆の体質を羨んでしまう。
嫉妬してしまうんだよ。
私はメッキを貼ってないとどこまでも醜いんだからね。
ホムラ「痛いのはいや、だけど常に痛みを感じてしまう体質なんだもん。考え方を変えるしかないんだよね。痛みによる探知は常に感じる痛みの大半をごまかす手段だからね。まあ探知するのが結構いいと思い始めているのは否定はしないけど」
オボロ「あ、探知は結構いいと思い始めてるんだ。私も思い始めてるからそういう意味でも似たもの同士なんだね」




