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第八演目   【お笑い芸魔】

 ――魔王の寿命はあと3日。

 あの召喚制限から3日が経った……


 そんな中、ロルムは一人、机で設定を練っていた。

 

 どんなキャラクターなら、あの勇者を楽しませられるんだ……?

 色々情報は得たけど、結局のところ変態だよな……

 もう、お色気イベント起こせば……いや、それはさすがにか?


 ロルムが頭を悩ませていると、コツコツという革靴の音が近づいてきた。

 その音の主であるゴードンはロルムの真横で足を止め、身を屈めると――


「ロルム様」


「ん?ゴードンか。どうしたんだ?そんな浮かない顔して……」


「執(・)事(・)殿(・)が……人間によって、殺(・)さ(・)れ(・)ま(・)し(・)た(・)……」



「ええっ!?」



 思わず椅子から飛び上がる。

 ロルムは目を見開いたまま固まった。口もぽかんと開き、その場だけ時間が止まっ たように。


「はい、姫様。殺されてしまいました……私の分(・)身(・)が」


 背後には、ぬるりとセワスが立っていた。

 ロルムの体は固まったまま、目だけでセワスを捉える。


「……。すごいな。もう色んな感情が巡って、言葉が出なかったよ……」


「お褒めにあずかり光栄でございます。姫様」


「うん……ほんとに色々、すごいな……お前。まず、分身できたんだ……」


 驚き、悲しみ、恐怖、安堵、怒り……

 わずか数秒で感情を振り回されたロルムは、相変わらず疲れていた。


 寿命はあと3日しかないのに、勇者が旅に出ないから何もできない。

 色々楽しませる案を試したいのに、設定用魔力が空で何もできない。


 今のロルムには、楽しませるキャラの設定ひたすらに考えること。

 それと、魔法の練習くらいしかできることが無かった……


「ミイラなので、分身はお手の物ですな」

 

「……そ、そうなんだ。というか人間って、魔族見た瞬間に襲ってくるのか?」


 ロルムはゴードンの方を向いて問う。

 正直、世間が酷すぎて、ゴードンをかなり信用している。

 変態説も、ボクのせいだった疑惑があるし……

 

「人間によると思いますが、冒険者は基本的に襲ってくるかと」

 

「うわぁ……怖いね。もう小屋から出られないんだけど……」


「いえ、ロルム様の方が、人間達からすれば怖いと思われます」


「え。ボク、人を襲ったりしないよ……?」

 

 ロルムはまだ知らなかった。

 〔魔王〕という存在がどういうものなのかを……

 

「はい。とにかくこの小屋にいるかぎりは安全だと思われます」


「まあ、たぶんお前たち強いもんなっ!もしものときは、ボクを守ってくれよっ!」


「御意に。お任せを」


 こうして異世界転生5日目は過ぎていった。

 背後でセワスがずっとニヤニヤしているのが気になったが、

 構うとまた疲れそうなので放っておくことにした。



  ○ ○ ○



 ――魔王の寿命はあと2日。

 そのお昼ごろ。

 

  〈デンッ!〉

 [――――設(・)定(・)用(・)魔(・)力(・)が一定値まで回復しました。――――]

 

 [――――設定(キャラクリ)制限が解除されました。――――]


「やっと使えるぅぅぅ……」

 

 これでようやく、勇者を楽しませる策を前に進められる。

 お?設定用魔力の残量が見えるようになってる。

 ありがたい……けど、最初からそうしてくれよ……



「よし、じゃあさっそく……お笑い芸魔っ!お前の『設定(キャラクリ)』を開始する!」



 ブォゥンッ!


 瞬間、世界が静まり返り、空間は色を忘れた。

 制限かかっちゃうから、気を付けて設定しないとな。


 ・『暗黒微笑(あんこくびしょう)』の二人組。

 ・勇者を絶対に笑わせる芸を行う。


 これで、魔族の指定と必笑の芸を手に入れることができた……よね。

 あれ?……正直、もうこれだけでよくないか?


 設定用魔力……長いな。S(・)魔(・)力(・)と呼ぼう。

 S魔力をここで使いすぎるわけにはいかない。それでも、今ある3割は消費する。

 でも、これがメインプラン。妥協はなしだ。


「設定(キャラクリ)完了っ!」

 

 ブォゥンッ!



 ――あ。



 そこには、召喚の指定に成功したであろう二人のゴブリンの姿があった。

 例のごとく……全(・)裸(・)で。


「……設定試すの、忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 いや、もうこの際別にいいや。

 エコだよ。S魔力を温存したって考えよう。

 そしてリアクションしちゃったけど、今回の魔王役はボクじゃない。

 頼んだぞ。ゴードンっ!


「よくぞ来た……暗黒微笑の二人。使命は……分かっているか?」


 セワス製の玉座に座るゴードンは、裸で召喚されて戸惑うゴブリンたちを迎えた。

 ロルムは魔王のしもべとして、セワスとともにその後ろに並び立つ。

 ゴブリンたちは、ゴードンに向かって頭を下げる。


「勇者を笑わせればよろしいんでしょ?お安い御用やで」

「ちょぉ待ってんか?魔王様、ワテらなんで裸なん?」


 ゴードンがこちらを見てくる。

 ごめんって。そりゃ台本にないけど……頑張ってくれ!


 ロルムはアイコンタクトで応援する。

 しかし、そこで口を挟んだのはセワスだった。


「それは姫(・)様(・)の(・)趣(・)味(・)です……魔王様のせいではありません」


 え。何言ってんのコイツ?

 でも、実際ボクのせいだからなぁ……


「姫様っちゅうことは、魔王様の娘さんですかいな?」

 

「はい。なので姫様の前では、魔族は裸でなくてはいけません」



「 「そうだったんや……」 」



 セワス(コイツ)もう敵だろ。執事ネミーだろ。

 そもそもボクが魔王のしもべ、って台本じゃなかったっけ?

 役変わっちゃったよ。これじゃ魔王とほぼ変わらないよ。


「……コホン。娘殿が裸を見たいのは、初めて会ったときだけだ。執事殿、服を」


「承りました。魔王様」


 ゴブリンたちはセワスの手によって、一瞬のうちに着替えさせられた。

 金のスーツに、青と赤の蝶ネクタイをそれぞれつけた身につけている。

 ゴードンによると、二人は兄弟らしい。


 これでようやく話が進む。なんかボクに変な設定付いたけど。


「では、貴殿らの実力を見せてほしい」


「お、ええで」

「軽く漫才でもすればええんやな?」


「うむ。娘殿がお笑いを知らんのでな……楽しませてやってくれ」


「お、姫さんお笑いみるの初めてなんや」

「よっしゃ、いっちょやったるか!」


 漫才をやることが決まると、室内に即席のステージが用意された。

 うん、狭い。……まあ、いいけど。

 ロルムたち三人は、ステージの前の椅子に座る。


 ――やがて、暗黒微笑の漫才が始まった。


本日の演目、お楽しみいただけましたでしょうか。


それでは――拍手の代わりに、

お手元にあります ☆ を、この真っ暗な劇場に飾っていただけますよう

お願い申し上げます。


次の演目も、引き続きこの劇場にて上演予定です。

下の「次へ」よりご着席のままお待ちください。


ブックマークのチケットによる、またのご来場もお待ちしております。

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