完成しました、カオスポーション。
カレンとリオナが帰宅後のフローレンス家。
――バァンッ!
研究室のドアが勢いよく開く。
リリサ(大興奮)
「ティナッ!!」
ティナ
「な……なに?」
リリサ、2つの小瓶を掲げる。
リリサ
「このポーション、飲んでみて!!
成功してるはずだから!」
ティナ(即答)
「え、やだ。」
リリサ
「なんでよ!?
とってもいい物なのに!」
ティナ
「一回落ち着いて?
そもそもなんの効果が出るポーションなのさ?」
リリサ
「カレンちゃんとリオナちゃんの“髪の毛”から2人の成分を抽出した、
《性格変換ポーション》よ!」
ティナ
「え?」
リリサ(ドヤ顔)
「このポーションを飲めばどんな子でも、カレンちゃんみたいな愛嬌抜群の性格に♪
もう1つのポーションを飲めばリオナちゃんみたいなおしとやかな性格になれるの♪」
リリサ(圧)
「さぁ、飲みなさい。」
ティナ
「ちょっと待って、倫理観どこいった?」
リリサ
「あなた、良く考えてごらんなさい?
私がポーションを紹介した時、あの2人はなんて言ってた?」
ティナ
「……カレンはカラフルで可愛いって言って、
リオナはインテリアにも良いって言ってた。」
リリサ
「あなたは?」
ティナ
「……かき氷シロップ。」
リリサ
「そういう所なの。」
ティナ
「……」
リリサ
「あなたね、見た目は絶世の美少女エルフなのよ?
だけど中身が残念すぎるの。」
ティナ
「ひど。」
リリサ
「女子力が欠如しているあなたには、あの2人のような感性が必要なの。
一応、解毒ポーションも用意してるから、試しに飲んでごらんなさい。」
ティナ
「やだ!
わたしがわたしじゃ無くなるッ!」
リリサ(大きめため息)
「あなた、学校でモテたいとか思わないの?
彼氏が欲しいとか思わないの?」
ティナ(若干揺らぐ)
「……そりゃ、少しはモテたいとは思うけど……」
リリサ
「だったら試しに飲んでごらんなさい。」
ティナ
「……」
ティナ
「試しに……だからね?
すぐ解毒ポーション使ってよ?」
リリサ(ガッツポーズ!)
「よしッ!
じゃぁまずはカレンちゃんポーションからね♪」
リリサ
「(ふふっ♪
ガサツとはいえ根本はやっぱり思春期の女の子。
私が揺すればこの通りよ。)」
リリサ(不敵な笑み)
「(これで……
私の理想の妹が手に入るッ!!)」
――ゴクッ。
ポーションを飲んだ瞬間、ティナの瞳が淡く光った。
ティナ
「……」
リリサ(ドキドキ)
「ど、どう?」
ティナ(頭をおさえてうずくまる)
「……うぅッ……」
リリサ
「え?
ち、ちょっと大丈夫……?
配合は間違えてなかったはずだけど……」
ティナ(ぱっと顔を上げて)
「リリ姉ッ!」
ティナ、そのままの勢いでリリサにハグ。
リリサ
「あッ……♡」
ティナ(にぱぁ)
「リリ姉あったか〜い!」
リリサ(昇天しかけ)
「大 成 功 ッ!!!」
ティナ(ハグしたまま、満面の笑み)
「リリ姉!
相撲しよッ!相撲ッ!」
リリサ
「え?相撲?」
ティナ
「うん!
リリ姉はそこに立ってて!
いっくよー!?」
ティナ、5歩程下がり、四股踏み。
ティナ
「はっけよ〜い――」
リリサ
「ちょっと待ってそんないきなり――」
ティナ
「のこった!!」
ティナ、全力でリリサにタックル。
リリサ(ドスッ)
「……?」
リリサ、微動だにせず。
ティナはリリサの腰に手を回し、踏ん張りMAX!
リリサ
「(カレンちゃん化しても、身体能力はティナのままなのね……)」
ティナ
「ふんぬッ!んぐぐぐッ!!」
リリサ(ぴくりとも動かず)
「あ……でも……
これはこれでありかも……♡」
ティナ(諦め)
「クッソォォ!
リリ姉強いなッ!
こうなれば特訓だ!」
ティナ、その場で腕立て開始。
ティナ(気合い十分)
「よ〜しッ!
い〜〜〜ちッ!」
――ぺたっ。
ティナ
「ハァ――ハァ――
よしッ!筋肉ついたかなッ!?」
リリサ
「え、まだ1回だけよ?」
ティナ
「相撲は足腰も大事ッ!
次はスクワット!」
ティナ(両手を頭の後ろへ)
「いちッ!にッ!さんッ!
これならいけるッ!
目標100回!」
リリサ(引き気味)
「……」
ティナ
「その後はランニングねッ!
リリ姉も一緒に湖畔10周ッ!!」
リリサ
「(あ、だめだ。
暑苦しすぎる。)」
リリサ
「ねぇ、ティナ。」
ティナ(スクワットしながら)
「なーに?」
リリサ(リオナ化ポーションをちらつかせ)
「これ、“筋肉増強ポーション”なんだけど――
飲む?」
ティナ
「マジッ!?
飲む飲むッ!!」
――ゴクッ。
ティナ
「うぅッ……」
ふたたび頭をおさえてうずくまるティナ。
リリサ
「ふぅ……
愛嬌だけじゃなくて、まさか脳筋になるとは……
カレンちゃん化は失敗だったわね……」
リリサ
「(リオナちゃん化なら大丈夫でしょ。
これでおしとやか妹をゲットよ!)」
ティナ(ぱっと顔を上げて)
「お姉様……?」
リリサ
「キターッ!♡」
ティナ
「お姉様、わたくし、なんだか喉が渇きましたわ。
お紅茶を用意してくださる?」
リリサ
「ええッ!
すぐ用意するわッ!
2人でお茶会しましょ?♪」
ティナ(口元を手で隠し)
「ふふ♪
お茶会とは、淑女のたしなみですわね♪」
リリサ
「これよッ!
これだったのよッ!
私の理想の妹はッ!!」
ティナ
「ところでわたくし、いつまで学校の制服ですの?
お茶会の前に着替えを用意してくださる?」
リリサ
「あ、ごめんなさい。
すぐ用意するわね。」
ティナ
「お茶会に合うドレスの用意をお願いしますわ♪」
リリサ
「ドレス……は無いけれど……」
リリサ(フンスッ!)
「可愛い服を用意するわねッ!」
ティナ
「あら……
では、そちらをお願いしますわ。」
ティナ
「着替えを用意したら、すぐにお茶の用意をお願いしますわ。
わたくし、喉がカラカラですの。」
リリサ(アセアセ)
「そ、そうよね!
ごめんなさい。」
ティナ
「お茶会が終わりましたらお夕飯もお願いしますわね。」
リリサ
「夕飯ね!ポーション作りに夢中になってて、まだ支度してないの……
良かったらティナもご飯作るの手伝ってもらえる?」
ティナ
「まぁ?なぜわたくしが?
お夕飯を用意するのはお姉様の役割ですわよ?」
リリサ
「え……?」
ティナ
「わたくしは“なされる側”ですわ。
お姉様は“なさる側”です。」
リリサ(ピクッ)
「……そうね……
とりあえず、着替えを用意してくるわ……」
ティナ
「ええ。お願いしますわ。」
――数分後。
リリサ
「はい、これ。」
きれいに畳まれたよそ行き用の服を差し出す。
ティナ(にこっ♪)
「感謝しますわ♪
では、お願いします。」
ティナ、優雅な笑顔のままバンザイ。
リリサ
「お願いします……って何を?」
ティナ
「何を?って……
お着替えに決まっておりますでしょう?
早く着替えさせてくださいまし。」
リリサ
「着替えまで私がさせるの!?」
ティナ
「決まっておりますわ。
先ほども申しましたが、わたくしはなされる側――」
リリサ
「(ちょっと待って……
リオナちゃんってお屋敷だとこんな感じなの?)」
ティナ
「何をしてますの?
早くしてくださいまし。」
リリサ(ハッと気づく)
「(貴族だから!?
身の回りの事は全部“執事さん”か“メイドさん”がしているって事!?)」
リリサ、渋々ティナを着替えさせる。
ティナ
「ありがとうございますわ。
でもお姉様、服の着せ方が少し乱暴でしてよ?
次からは気をつけてくださいまし。」
リリサ
「はい……申し訳ございません……」
リリサ(困惑)
「(お着替えさせるのも……良いんだけど……
なんか違う……)」
リリサ
「(これじゃ姉妹じゃなくて……
ただの主従関係……)」
ティナ
「お姉様、お茶の用意は?」
リリサ
「あ、はい……すぐ用意します……」
リリサ、湯を沸かし、茶葉をポットに入れる。
ティナのティーカップには紅茶と解毒ポーションを半々。
リリサ
「お待たせいたしました。
こちらお紅茶です。」
リリサ(ハッ!)
「(私、なんでティナに敬語使ってるの!?)」
ティナ(ティーカップを持って)
「ありがとうございますわ。
では、いただきます。」
――コクッ。
ティナ
「……ッ!?
な、なんだか……頭が……」
リリサ(ドキドキ)
「(お願いッ!元のティナに戻って……)」
――カランッ……
ティナは持っていたティーカップを落とし、紅茶がこぼれる。
赤いラグは紅茶が染みて、どす黒くなった。
ティナ
「うぅッ……!」
ふたたび、ティナの瞳が淡く光る――
ティナ
「……あれ……?
わたし、何してたんだっけ……?」
リリサ(涙目)
「ティナ……?
元に戻った……?」
ティナ
「リリサ?
何泣きそうな顔してんの?」
リリサ
「ぐすッ……だって――」
ティナ
「ってうわッ!?紅茶こぼしてんじゃん!
雑巾雑巾!」
リリサ
「ぐすッ……ティナ、本当にごめんなさい……」
ティナ
「何が!?
とりあえず雑巾持ってきてよ!」
リリサ(泣きながら)
「全部、私が悪かったの……
あなたが1番良い……1番素敵な妹だわ……」
ティナ(顔が赤くなって)
「急に褒められた!?」
――2人で床の掃除をし、リリサが落ち着きを取り戻した頃。
ティナ
「それで、何があったの?
なんか記憶が曖昧になってるんだけど……」
リリサ
「えっと……一言で言えば私の自業自得だったの。」
ティナ
「ふ〜ん?
良くわかんないけど、お腹空いたしご飯にしよ?」
リリサ
「ふふっ。
そうね、今から支度するから手伝ってもらってもいいかしら?」
ティナ
「え〜……しょうがないなぁ……」
リリサ
「ありがとう♪
やっぱりティナが1番の妹だわ♪」
ティナ(ジト目)
「……急な手のひら返し。」
リリサ(ハグ)
「可愛い可愛い私の妹♪」
ティナ(もがく)
「やめろぉッ!」
――なんだかんだ、相性抜群なフローレンス姉妹だった。




