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転生はかすり傷に入りますか?――エルフJK、好物は干し芋。  作者: ひなゆづ
ぶら探【バーガー屋編】

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36/51

マックと照り焼きと、姉の逆鱗。


フローレンス家。リビング。

テーブルにはリリサが調理した2人分の夕飯。


リリサ(テーブルの前に座りながら)

「……遅い。」


時刻は19時40分。


リリサ

「今日から“部活”が始まったのかしら?

それにしたって遅すぎない……?」


ぐぅ〜……


リリサ(お腹をさする)

「……お腹すいた……

先に食べちゃう?」


リリサ

「……いや、でもあの子もきっと部活を頑張ってるはず……

お腹をすかせて帰ってくるはずだわ。」


リリサ(ちょっと照れくさそうに)

「それに……

あの子と2人で話をしながら食べた方が楽しいし。」


リリサ(ジト目)

「……でも、もし遊んで遅くなっているのなら……

許せないわね。」


リリサ(チラッと夕飯を見る)

「今日は“鶏の照り焼き丼”にしたのに……

もう冷めちゃってるじゃない……」


……


時計の針の音だけが響く。


カチッコチッ――


19時50分。


リリサ(ソワソワ)

「やっぱり……何かあったのかしら……

8時になっても帰ってこなかったら探しに行かないと……!」


――ガチャ。


ティナ

「ただいまぁ〜。」


リリサ(ホッとして)

「(あぁ……良かった……

無事だったのね……)」


……


リリサ(お説教スイッチON)

「ティナ!

こんな時間まで何してたの!?」


ティナ

「何って……

部活だよ?」


リリサ

「遅れるなら連絡しなさいよ!

こっちがどれだけ心配したと思ってるのよ!」


ティナ

「連絡……?

スマホも無いのにどうやって連絡するのさ?」


リリサ

「学校に“公衆電話”くらいあるでしょ?

電話の一本くらい入れなさい。」


ティナ

「公衆電話?

あ〜、あったかも。

でもわたし使い方わかんないよ?」


リリサ

「え?」


ティナ

「前世ではスマホ使ってたし、

公衆電話なんか使ったことないもん。

あと、この家の電話番号知らないし。」


リリサ(ハッとして)

「(……あ、番号教えてなかった……)」


リリサ(引くに引けず)

「と、とにかく!

今後、帰りが遅くなるならちゃんと連絡しなさい!

わかった?」


ティナ

「え〜……

なんか理不尽〜……」


リリサ(手鏡を差し出す)

「あなた、自分の顔を見てみなさい。」


ティナ(容姿チェック)

「え?なんで今?」


リリサ

「あなた、黙っていれば絶世の美少女エルフなの。

こんなに“可愛く作ってしまった”事に後悔しているわ。」


ティナ

「それ、わたしじゃなくて自分の美的センスを褒めてるよね?」


リリサ(きっぱり)

「当たり前でしょ。

こんな可愛い子が連絡も無しに帰りが遅くなるなんて、

お姉ちゃん心配しちゃうじゃない。」


ティナ(鏡を見ながら)

「まぁ……たしかに可愛いけど――

あ、ほっぺにソースついてた!恥ずかしッ!」


リリサ

「ん?ソース?」


ティナ

「いや……あの、リオナがさ?

“マクドンナルドンに行きたいですわ!”って言って……

みんなでマック食べてきたんだよね……」


リリサ(ピクッ)

「……はい?」


ティナ

「いや、でも!夕飯は頑張って食べるから!

今日のご飯なに?」


リリサ(ムスッ)

「鶏の照り焼き丼。

あなたが喜ぶと思って、和風テイストにしたの。」


ティナ、テーブルに置かれた丼ぶりを目にする。

光沢のある照り照りチキンにマヨネーズ、刻み海苔。

時間が経ってしまったのか湯気は出ていない。


ティナ(うぷっ……)

「(重……

これ食べたら後でリバースするやつだ……)


ティナ

「やっぱごめん……

今お腹いっぱい……」


リリサ(怒り80%)

「お腹いっぱい……?

私がこんなに心配して、お腹すかせて待ってたのに…?」


リリサ(怒り88%)

「あなたが喜ぶと思って……

照り焼き丼を作ったのに……?」


リリサ噴火まで

――3秒前。


リリサ(わなわな、90%)

「……」


――2秒前。


リリサ(髪の毛が逆立つ、98%)

「……」


――1秒前。


ティナ(ビクビク)

「あの……リリサ……?」


噴火ッ!!☆


リリサ(背後に暗黒オーラ全開、100%)

「ティィィィナァァァァァ!!!!」


ティナ

「ひぃッ!?

ごめんなさい!!」


リリサ(お説教モード突入☆)

「あなたって子はッ!!

私がどれだけ心配して、どれだけお腹すかせて待ってたかわかってるのッ!?」


リリサ(テーブルの正面を指す)

「そこ、正座。」


ティナ(しゅん……)

「はい……」


リリサ

「まずねッ!

帰りが遅くなる時は連絡するの!」


ティナ

「でも、公衆電話の使い方わから――」


リリサ

「言い訳しないッ!」


ティナ

「はい……」


リリサ

「あとッ!お友達と買い食いしてもいいけど、

夕飯いらないならそれも連絡しなさいッ!」


ティナ

「だから、番号もわから――」


リリサ(ギロッ)

「ティナ?」


ティナ

「はい……」


リリサ

「まったく……

あなたの分の照り焼きチキンは明日のお弁当に詰めるから。」


ティナ

「(リリサ、珍しく“ガチギレモード”だ……)」


ティナ

「あの、リリサ、ひとつだけ聞いていい?」


リリサ

「なによ?」


ティナ

「リリサって……

お腹すいてると機嫌悪くなるタイプ?」


リリサ

「……」


プッッチーーンッ!


……静寂……


リリサ(一周まわって笑顔、200%)

「……ティナ?」


ティナ(察し)

「(あ、多分余計なこと言ったな。

うん。死ぬかも。)」


リリサ(笑顔、だけどドスの効いた声)

「あなた、いい度胸してるわね?」


リリサ、スっと立ち上がりゆっくりティナに近づく。


ティナ

「ひッ!?

なに、何する気なのッ!?」


一歩、また一歩とゆっくり歩み寄る。


リリサ(終始笑顔、こめかみ青筋)

「さぁ?何してやろうかしら?

“一年間お小遣い無し”?

“試作ポーションの実験台”?

それとも――」


リリサ

「“一緒にお風呂に入る”?」


ティナ

「ひとつだけ邪念が混ざってるッ!!」


――ズイッ!


リリサ(ドスの効いた声、顔距離15cm)

「選ばせてあげるわよ♪」


ティナ(涙目)

「顔近ッ!!」


リリサ(にっこり)

「どれにするの?

ちなみに、お風呂はこれから毎日。

隅々まで洗ってあげるから♪」


ティナ(ガタガタ)

「怖い怖い怖い!!!」


その時――

ジリリリリッ!ジリリリリッ!


リリサ

「あら、こんな時に電話?」


リリサ、部屋の片隅に置いてある昔ながらの黒電話へ。


ティナ(へなぁ……)

「(た、助かったぁぁぁぁ……)」


リリサ(半オクターブ上がる)

「お電話ありがとうございます♪

エルフのポーション屋、フローレンスです♪」


ティナ

「(え?さっきまでと声色全然違うんだけど……

二重人格なの?)」


リリサ(半オクターブ上がったまま)

「あらぁ♪

先生、いつも妹がお世話になっておりますぅ♪

あ、ティナ?――はい、つい先ほど帰宅しましたぁ♪」


ティナ

「(そういえば

『お母さんに怒られてる時、電話が来ると“人が変わる”』って

友達が言ってたな……

都市伝説じゃなかったんだ。)」


リリサ

「はい♪はい♪

わざわざありがとうございますぅ♪

あ!先生、何かお体でお困りの事とかありませんか?♪」


リリサ

「お腹が痛い?

では明日、妹に胃腸に効くポーションのサンプルを持たせますので♪

はい〜、失礼しますぅ♪」


ティナ

「(商魂たくましいな。)」


――ガチャン。


ティナ(そろ〜り)

「今のって……ミラ先生?」


リリサ、ゆっくり振り返る。


リリサ(無表情)

「ええ。

先生から聞いたわよ。

部活の初活動で街レポしてたんですって?」


ティナ

「うん……」


リリサ

「それで、マックに?」


ティナ

「うん……」


リリサ

「何食べたの?」


ティナ

「テリヤキバーガー……」


リリサ

「それと?」


ティナ

「ポテト……」


リリサ

「それと?」


ティナ

「コーラ……」


リリサ

「それと?」


ティナ

「リオナが残したギガマックを少し……」


リリサ

「……」


リリサ

「ティナ。」


ティナ

「は、はいッ!」


リリサ

「お風呂。」


ティナ

「……え?」


リリサ

「だから、お風呂。」


ティナ

「選択肢が無くなったッ!」


リリサ

「私はご飯を食べるから、その間にお風呂の準備しときなさい。」


ティナ

「はい……」


リリサ

「覚悟しといてね?

“耳の裏”までお説教で綺麗にしてあげるから♪」


ティナ

「ヒィィィィッ!?」


湯上がり。リビング。


ティナ(死んだ目)

「ふぁ〜……」


リリサ(ツルテカ、興奮冷めやらず)

「ついにッ!

妹と一緒にお風呂に入れたわッ!」


リリサ、湯気ホカホカ。


リリサ(ガッツポーズ)

「私の夢が叶ったぁぁ!!」


ティナ(遠い目)

「じいちゃん……

わたし……もうお嫁に行けないよぉ……」


リリサ

「なら、これからもずっと一緒に暮らせばいいじゃない♪」


ティナ

「こっわっ……」


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