土下座と、忠誠心ホラー。
翌朝。
8時05分、学校の教室。
昨日の責任を感じ、いつもより早めに登校してきたティナ。
――ガララッ。
カレン
「おっ!
おっはよー!ティナ、今日早いじゃん!!」
ティナ(寝ぼけまなこ)
「おはよぉ……
カレン、もう来てたんだ。」
カレン
「まぁねー!
朝ランしてたら早く来すぎちゃった!」
ティナ
「出た!朝から脳筋思考!」
カレン
「朝イチ走ると気持ち良いんだから!
明日からティナもどう?」
ティナ
「無理無理、今日でさえ重い足引きずりながら来たんだから。」
カレン
「そういえば、なんで今日は早いの?」
ティナ
「部活の申請の事でさ、絶対申請通ってないから
先生にお願いしにいこうと思って。」
カレン
「なるほどね、ちゃんと責任感じてたんだ。」
ティナ
「そりゃ感じるよ……
わたしのせいで申請通らなかったら2人に申し訳ないし……
土下座の練習もしてきたんだから!」
カレン
「気合い入ってんじゃん!
あたしも一緒に行くよ!」
ティナ
「マジ?ありがとー!
でもリオナはどうしよっか?」
カレン
「まだ来てないし、とりあえずあたし達2人で良くない?」
ティナ
「そうだね!
じゃぁ職員室まで行こっか!」
カレン
「よっしゃッ!
あたしも土下座するぞー!!」
---
職員室。
――コンコンッ、ガララッ。
ティナ(恐る恐る中を覗く)
「失礼しま〜す……
ミラ先生いますかぁ……?」
ミラ先生(机の書類を片付けながら)
「あ、フローレンスさんにホワイトロックさん、おはよぉ〜……
どうしたの……?」
カレン
「おはようございます!
ミラ先生!創部申請の件で来ました!」
ティナ(ドキドキ)
「絶対申請通ってないですよね……
それでわたし達、もう一度お願いしに――」
ミラ先生
「あ、その件なんだけど……」
ティナ
「あの……!
わたしが余計な事書いたせいでダメだったんですよね……!?」
ミラ先生 (あたふた)
「え、えっと、あのね――」
ティナ(涙目になりながら覚悟を決める)
「土下座でも何でもするんで……
もう一度、お願いできないですか……?」
ティナ、職員室の前で正座になる。
カレン(隣で正座になりながら)
「あたしからも!
お願いします!!」
ミラ先生
「わわっ!
ち、ちょっと2人とも、落ち着いて!?」
ティナ(涙目)
「……いくよ……?」
カレン(小声)
「うん。」
ティナ(完璧な土下座を披露)
「お願いしますッ!」
カレン(土下座ッ!!)
「お願いしますッ!!」
職員室にいる他の先生がざわつく。
ミラ先生 (テンパりMAX!!)
「わぁーッ!?
ふふふ2人とも、頭上げてッ!
申請、通ってるからッ!
承認されてるからッ!!」
ティナ&カレン(頭を上げて)
「へ……?」
ティナ(カレンを見て)
「マジ……?」
カレン(ティナを見て)
「申請……通った……?」
2人、顔を見合せて硬直。
……
ティナ(涙目笑顔)
「……やっっったぁぁぁぁぁ!!!」
カレン(満天笑顔)
「イヤッフゥゥゥゥ!!!」
2人、喜びのハグ。
ミラ先生(冷や汗、胃キリキリ)
「あ、あはは……
詳しくはまた、お昼休みに話しするから……
ヴァレンシュタインさんにも伝えてあげて?」
カレン
「わかりました!」
ティナ
「ミラ先生、本当にありがとうございます!!」
ミラ先生
「い、いえいえ……
(私じゃなくて、執事さんのおかげなんだけどな……)」
ミラ先生
「じゃぁ、もうすぐホームルーム始まるから……
また、後でね。」
カレン
「はい!
じゃぁ教室戻ろ!ティナ!」
ティナ
「うん!
リオナも喜ぶね!」
---
教室までの廊下。
2人の足取りは軽く、テンションも高め。
ティナ(にこにこ)
「土下座、意味なかったなぁ……」
カレン(にこにこ)
「でも、練習の成果出せたからいいんじゃない?」
ティナ
「だね!
でもなんで申請通ったんだろ?」
カレン
「案外ゆるいんじゃない?」
ティナ
「かな?
それならわたしの“まっすぐお家に帰ろう部”も申請通ったんじゃない?」
カレン
「それは無理。」
ティナ
「なんでよー!」
カレン
「安直すぎるから。」
ティナ
「酷ッ!
まぁいいや、リオナもう来てるかな?
早く伝えたいな!」
カレン
「きっと
『わたくし、外の世界への探究心がとどまりませんわ!』
って騒ぐと思うよ!」
ティナ
「あはは!わかる!」
教室につく。
――ガララッ。
職員室に向かう前とは違って生徒たちはほぼ登校していた。
生徒たちの喧騒の中、1人だけ両目を手で隠し、椅子に座ってるお嬢様。
女子生徒
「あ!カレンちゃん、ティナちゃん、おはよ!
リオナちゃんなんだけど、朝からずっとああしてて……
具合悪いのかな?」
ティナ
「……また男子を視界に入れないようにしてる……」
カレン
「律儀だねぇ……」
ティナ
「大丈夫、あれ具合悪いんじゃなくて“仕様”だから。」
女子生徒
「???」
ティナ(リオナの肩を叩く)
「リオナ、おはよ!」
カレン
「おっはよー!」
リオナ(ビクッ)
「あ……
ティナ様、カレン様、おはようございますわ……」
ティナ
「リオナ!部活の申請通ったよ!」
カレン
「これで街に遊びに行けるね!」
リオナ(しゅん……)
「そうなんですのね……
それはとても喜ばしいことですわ……」
……
ティナ
「……リオナ?」
カレン
「どうしたの?やっぱり具合悪い?」
リオナ(俯きながら)
「いえ……
ただ、少し不安で……」
ティナ
「不安?街に行くのが怖くなっちゃった?」
リオナ
「違いますの。
今朝、登校する時の事なんですが――」
---
ヴァレンシュタイン邸。リオナの部屋。
リオナ(ウキウキ)
「さぁグレイ!
本日も学校へ行きますわよ!」
グレイ
「お嬢様、本日からお1人での登校をお願いいたします。」
リオナ(一瞬で表情が曇る)
「……はい?
な、なぜですの……?」
グレイ
「昨日、ワタクシが同行したのは学校内に危険因子がないか監視する為でございます。」
グレイ
「教師の方、クラスメイトの方の中にお嬢様に危害を加えるような人物が見つかりませんでした。
ゆえに、ワタクシが同行する必要はございません。」
リオナ(涙目)
「そ、そんな……!
わたくし、1人で屋敷の外に出るのは不安ですわ!」
グレイ
「お嬢様は1人ではございません。
ティナ様やカレン様、素晴らしいご学友がおられるではありませんか。」
リオナ(少し震えて)
「それは、そうですが……」
グレイ
「それと、万が一に備え“こちら”を用意しました。
忘れずにお持ちになってください。」
---
リオナ
「と言うことがありましたの。
昔からずっと、グレイがそばにいたので不安なのですわ……」
ティナ
「なるほどね。
グレイさん、リオナをひとり立ちさせようとしてるんだ。」
カレン
「それで、グレイさんに持たされた物って何?」
リオナ
「こちらですわ。」
リオナ、胸ポケットから小さなベルを取り出す。
カレン
「何これ?ベル?」
リオナ
「わたくしに万が一の事があった際、このポケットベル、
通称“ポケベル”を鳴らせと仰ってましたわ。」
ティナ
「(……ん?
ポケベルって昔、じいちゃんが持ってたような……
こんなんじゃなかったけど。)」
カレン
「それ、鳴らしたらどうなるの?」
リオナ
「……わかりませんわ。
試しに鳴らしてみましょうか。」
リオナ、ポケベルを鳴らそうと持ち替える。
グレイ
「お呼びでしょうか、お嬢様。」
ティナ&カレン(ビクゥッ!!)
「!?!?」
リオナ(ぱぁぁぁ!と明るくなる)
「まぁ!グレイ!」
ティナ
「え!?どっから来た!?」
カレン
「ベル鳴らす前に現れたよね!?」
グレイ
「お嬢様に不測の事態があった際、
即座に駆けつけられるよう、常に警護態勢は整えてあります。」
ティナ
「こわ……」
カレン
「今のって魔法?」
グレイ
「いえ、魔法ではございません。
お嬢様に対する“忠誠心”で駆けつけました。」
ティナ&カレン
「忠誠心ってすげぇ!!」
グレイ
「お嬢様、ご要件は?」
リオナ
「特にございませんわ!
グレイがすぐ駆けつけてくださることがわかりましたので、
それだけで十分ですわ!」
グレイ
「左様ですか。
それではワタクシは屋敷に戻ります。
また、何かご要件がありましたら何なりとお申し付けください。」
グレイ、教室の扉から退出。
ティナ
「帰る時は普通に帰るんだ。」
カレン
「てかさ、グレイさんもたいがいだよね。
子離れも親離れもしばらく時間かかりそう。」
リオナ
「それで、なんのお話をされてましたっけ?」
ティナ
「あ!そうそう!
部活の申請なんだけど――」
――カランカラーン♪
カレン
「あ、ホームルーム始まっちゃった!」
ティナ
「バタバタしてたせいで話しそびれちゃったよ……」
リオナ
「あら、申し訳ございませんわ。」
ティナ
「また、昼休みに詳しく話すから!」




