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転生はかすり傷に入りますか?――エルフJK、好物は干し芋。  作者: ひなゆづ
部活創部編

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31/34

有能執事、仕事する。


放課後。職員室。

ミラ先生が創部申請用紙を教頭先生に渡す。


ミラ先生(指を組んでもじもじ)

「……」


教頭先生(申請書に目を通す)

「……ふむ。」


ミラ先生 (ドキドキ)

「……あ、あの、どうですか?」


教頭先生

「“却下”ですな。」


ミラ先生

「え……

な、なんでですか?」


教頭先生

「まず、活動名『放課後ぶらり探検倶楽部』

ここは問題ありませんな。

活動内容の

“地元、湖畔の街を探索し、おすすめスポットをレポート”

ここまでは素晴らしい。」


ミラ先生

「はい……」


教頭先生(腕を組んで)

「だが……その後の

“自由に帰ったり遊んだり買い食いもする”

これはなんだね?」


ミラ先生

「ヘッ!?

そ、そんな事書かれてたんですか!?」


ミラ先生(申請書を確認)

「(あ……フローレンスさんの字だ……)」


教頭先生

「更に

“執事も同伴しますので心配はございません”

……執事を雇う気かね?」


ミラ先生

「(……こっちは絶対ヴァレンシュタインさん……)」


ミラ先生(胃がキリキリ)

「(もぉ〜……

2人とも余計な事書かないでよぉ……)」


ミラ先生

「あ、あの……

その2項目は消しときますので……

それで何とかなりませんか……?」


教頭先生

「無理ですな。

建前で素晴らしい内容を書いたところで、

生徒たちの本音を見てしまえば許可は出せませぬ。」


ミラ先生

「そ、そんな……」


ミラ先生

「(私、オカ研か武道の顧問確定……!?

やだよぉ〜……)」


その時、職員室のドアがノックされた。


――ガララッ。


入室してきたのは黒い執事服に無表情、だがどこか気品を感じさせるリオナの専属女執事、グレイ。


グレイ(礼儀正しくお辞儀)

「失礼いたします。」


教頭先生

「む……?

君は誰かね?」


グレイ

「ワタクシ、リオナ・ヴァレンシュタイン様にお仕えする執事のグレイ・グレイシアと申します。」


ミラ先生

「えっ!?

ヴァレンシュタインさんの執事さん?

どうしてここに……」


グレイ

「ワタクシからも、創部の申請承認をお願いしに参りました。」


教頭先生

「むむ、部外者が口出しする気かね?

――待て、今誰にお仕えしていると言った?」


グレイ

「ヴァレンシュタイン家のご令嬢、リオナ・ヴァレンシュタイン様でございます。」


教頭先生(青ざめる)

「ま、まさか……!」


部員名を確認。


・カレン・ホワイトロック

・ティナ・フローレンス

・リオナ・ヴァレンシュタイン


教頭先生

「ヴ、ヴァレンシュタイン家の娘殿がなぜこの学校に!?」


グレイ

「お嬢様の意見を尊重し、外の世界での社交経験を伸ばすためでございます。」


グレイ

「……それよりも教頭殿、先月は随分とお楽しみになられてたみたいですね。」


グレイ、1枚の写真を教頭先生に差し出す。


教頭先生 (ビクつきながら)

「な、なんだね、この写真は……

――なッ!?」


グレイ

「先月行われた、地域交流会の二次会での写真でございます。」


ミラ先生

「(え……なに?写真?)」


ミラ先生(さりげなく覗く)

「(何が写って――あ……)」


ミラ先生、俯きながら終始無言。


教頭先生(顔が青になったり、赤くなったり)

「これは地域活性化活動でしてな……!」


グレイ

「存じております。

実に活性化されております。」


教頭先生

「(この写真が生徒たちに見られでもしたら……

私の教頭としての尊厳が……

それはちょっと困るッ……)」


グレイ(察して)

「ワタクシはこの写真を晒そうなどとは思っておりません。」


グレイ

「教頭殿もこの写真の様に

大勢で楽しく、笑顔で過ごされている時間があるのです。」


グレイ

「生徒たちにも、

同じ様に“楽しい時間”を体験させるのが教師の役目ではないのでしょうか。」


教頭先生

「……わかった……

放課後ぶらり探検倶楽部を承認しますぞ…… 」


ミラ先生(俯きながら)

「……あ、ありが、とう……ございます……」


グレイ(ピシッとお辞儀)

「ワタクシからもお礼申し上げます。」


---


学校の廊下。


ミラ先生

「あ、あの……

本当にありがとうございました……!」


グレイ

「ワタクシはお嬢様の為に行動したまでです。」


ミラ先生 (あたふた)

「あ、そ、そうですよね……!

で、でも、なんであんな写真を……」


グレイ

「いかなる可能性も加味して、屋敷の者たちに用意させたまでです。」


ミラ先生

「そ、そうなんですね……

(貴族って凄い……)」


グレイ

「それでは、ワタクシはこれにて失礼いたします。」


ミラ先生

「あ……

執事さんって明日からも学校に来られるんですか……?」


グレイ

「本日、学校に危険因子が無いか監視させていただきました。」


グレイ

「お嬢様に対して危険と思われる因子は見つかりませんでしたので、

明日からはお嬢様1人での通学になります。」


ミラ先生

「あ……そうなんですね……」


グレイ(微かに微笑んでお辞儀)

「生徒の方達も優しく、仲間想いの素晴らしい方達ばかりでした。

どうかお嬢様をよろしくお願い致します。」


ミラ先生

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……!」


グレイ

「なお、お嬢様に危険を及ぼす様なことがあった場合、

瞬時にワタクシとヴァレンシュタイン家護衛隊が駆けつけますのであしからず。」


ミラ先生

「ひっ……

わ、わかりました……!」


グレイ

「では、失礼いたします。」


ミラ先生

「(助かった……!

執事さんのおかげでなんとかあの子たちの顧問になれる……!)」


ミラ先生(肩を震わせ思い出し笑い)

「(でも、さすがにあの状況では笑えなかったけど……)」


ミラ先生

「(教頭先生のあの写真……

凄いもの見ちゃった……)」


グレイが用意した写真には――

オカマ達に囲まれ、ラメにまみれ満面な笑みの教頭先生。

BARのカウンターには教頭の頭部にあるはずの毛の塊。頭頂部はいつもより風通しの良さそうなヘアスタイル。


ミラ先生

「……」


ミラ先生

「よし、明日あの子達に報告してあげなきゃ……!

私も頑張るぞ!」


---


夕方の湖畔の街。


ティナ(通学路を歩きながら)

「あ〜あ、リオナはいいなぁ……

馬車で送り迎えしてくれるんだもん。」


カレン

「まぁまぁ!

でもさ、こうやって一緒に歩いて帰るのもいいじゃん?

話しながら帰れるんだし!」


ティナ(ちょっと照れて)

「まぁそうだけどさ……

同好会の申請、通るかな?」


カレン

「大丈夫でしょ!

グレイさんに言われた通りの活動内容書いといたし!」


ティナ

「わたしはちゃんと自分の活動内容も書いたよ?」


カレン

「え?そうなの?」


ティナ

「うん!

“好きに帰ったり遊んだり、買い食いもする”って書いといた!」


カレン

「」


ティナ

「え?なに?」


カレン(怒)

「お前ぇぇぇ!!

そんなの絶対申請通るわけないじゃんッ!!」


ティナ

「だって!

“嘘つくな”ってじいちゃんに言われてたんだもん!」


カレン

「たまには必要な嘘もあるでしょ!

あとは言い回しとかでどうにでもできるじゃん!」


ティナ

「なんでよ!

わたしは正直に書いただけだもん!」


カレン

「だって考えてみなよ!?

好きに帰って、

遊んで、

買い食い

って帰宅部そのものじゃん!!」


ティナ(想像中)

「……」


ティナ(ハッとする)

「……そうじゃん……やば……」


カレン

「これで申請通らなかったらティナのせいだからね?」


ティナ(汗がツーっと頬を伝う)

「まじごめん……

そこまで考えてなかった……」


カレン

「しょうがないなぁ……

もし申請落ちたらあたし達も直接お願いしにいこ?」


ティナ

「うん……

土下座してでもお願いしてみる!」


---


ヴァレンシュタイン家、馬車内。


リオナ(窓から外の景色を見ながら)

「コインランドリー……?

ドラッグストア……?

わたくしの知らない物だらけですわ!」


リオナ

「あら、あちらにいらっしゃるのは……

ピエロさん?

マクドンナルドン……どんなお店なのかしら?」


リオナ、マックのピエロに小さく手を振ってみる。


ピエロ(手を振り返す)

「i'm lovin' it!」


リオナ(目を輝かせて)

「まぁぁ!」


リオナ(ウキウキ、ルンルン)

「(明日から、この馬車の外の世界へ降り立つのですね!

わたくし、楽しみで今日は眠れそうにありませんわ!)」


リオナ

「しかし、グレイはどこへ行ってしまったのでしょうか……

“少し野暮用があります”と仰ってましたが……」


リオナ

「グレイなら大丈夫でしょうが……」


グレイ

「お呼びでしょうか?お嬢様。」


リオナ(ビクゥッ!)

「グレイッ!?

いつ、馬車内へ!?」


グレイ

「今しがた、用事を済ませ戻りました。」


リオナ

「今しがた!?馬車ずっと動いてましたわよ!?」


グレイ

「ワタクシ、お嬢様の専属執事ですので。」


リオナ

「理由になってませんわぁッ!!」


――こうして、有能執事によって同好会申請却下を回避したことを少女たちは知らないままだった。


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