明日から、学校。
フローレンス家。
両手に沢山の紙袋を抱えたリリサが帰宅。
リリサ
「ただいま――あら?」
静かなリビング。
リリサ
「まだ帰ってきてないのね。」
リリサ、ソファに紙袋をドサッと降ろし、キッチンへ。
ポットに水を入れ、火にかける。
紅茶を淹れ、一休み。
リリサ(ソファに座る)
「……ふぅ。」
静寂。時計の針の音だけが響く。
リリサ(紅茶をひと口)
「静かね……
あの子が来る前に戻ったみたい。」
リリサ(カップを机に置いて)
「……それにしてもあの子、ちょっと遅すぎない?」
リリサ
「どこで道草食ってるのかしら。」
段々心配になってくる。
リリサ
「迷子になってるのかしら……
でも、メモも渡してるし、大丈夫なはず。」
リリサ(ソワソワ)
「……もしかして……誘拐とか!?
どうしましょう……私が可愛く作りすぎたせい!?」
その時。
――ガチャ。
ティナ
「ただいまー!!」
リリサ(安堵)
「……はぁー……良かった……
おかえりなさい。遅かったじゃない。」
ティナ
「ごめんごめん!ちょっと色々あってさ。」
リリサ
「あなたが無事に帰ってきてくれたのなら良かったわ。
おつかいはちゃんと出来た?」
ティナ(きょとん)
「……ん?」
リリサ
「え?」
ティナ(ハッとして)
「あ!!」
リリサ
「……もしかして、忘れてた?」
ティナ
「ごめん!すっかり忘れてた!」
リリサ
「……まったく、何しに街まで行ってたのよ……」
ティナ
「いや、だってさぁー……ちょっと聞いてよ!」
リリサ
「何よ?」
ティナ
「商店街歩いてたらさ、たい焼きの移動販売が来てたんだよ。」
リリサ
「それで?」
ティナ
「そんなの、もう買わなきゃ罪じゃん?お腹すいてたし。」
リリサ
「……罪ではないと思うけど……
まぁ、なんとなく言いたい事はわかるわ。」
ティナ (どや顔)
「そしたらたい焼き屋のおじさん、わたしが可愛いからってひとつおまけしてくれたの!!」
リリサ(大きく頷く)
「ええ。私が作った自慢の転生ボディですもの。」
ティナ
「まじラッキーだったよね!また見かけたら買わないと!!」
リリサ
「“道草”じゃなくて、“たい焼き”食ってたわけね。」
ティナ
「おっ!上手いこと言うねぇ〜!」
リリサ
「それで、たい焼き食べてたからってこんな遅くならないでしょ。
おつかい忘れて、こんな時間まで遅くなった理由は?」
ティナ
「まぁまぁ!落ち着いてって!
そしたらさぁ〜――」
リリサ
「私、お昼まだ食べてないの。」
ティナ(ムッとして)
「わかったよ。
じゃぁ要点だけ、3行で伝えるから。」
リリサ
「ええ。お願い。」
ティナ
「たい焼き買ったら
ヤンキーに絡まれて
パンチで壁壊す子と友達になった!!」
リリサ
「……??(どういうこと?)」
リリサ
「ごめんなさい……やっぱり詳しく聞かせて?」
ティナ
「もう!わがままだなぁ〜」
---
事情を説明し終えた後。
遅めの昼食を食べながら二人の会話は続く。
リリサ
「……なるほどね。カレンちゃんって子と仲良くなったのね。」
ティナ
「うん!
そんで、カレンが『学校に来なよ〜』って誘ってきてさぁ。」
リリサ
「あら、ちょうど良かったわ。」
ティナ
「なにが?」
リリサ
「私も“用事がある”って言ってたでしょ?
これを受け取りに行ってたの。」
リリサ、ソファに置いてある紙袋の中身を取り出す。
中身は深緑色のブレザーと教科書の束。
ティナ
「これ……制服?」
リリサ
「ええ。あなた用の制服。
手続きも済ませてあるから、明日から学校に行きなさい。」
ティナ
「えッ!?明日から!?
ちょっといきなりすぎない!?」
リリサ
「勉強に追いつけなくなったら困るでしょ?
こういうのは早めに動いておかないと。」
ティナ
「……じゃぁ、明日から早起き……?」
リリサ
「そうね。
ちゃんと早く寝て、早く起きて、朝ごはん食べてから行きなさい。」
ティナ(絶望、膝から崩れ落ちる)
「……アアアァァァ……」
ティナ
「ヤダ!早起きヤダ!学校行きたくない!!」
リリサ
「わがまま言わないの。学生は学ぶことが仕事なんだから。
それに、友達だって出来たんでしょ?」
ティナ
「じいちゃんみたいな事言わないで!!
カレンだって同じ学校とは限らないし……」
リリサ
「同じ学校よ。
湖畔の街に高校は一校しかないもの。」
ティナ
「……そうなの?
同じクラスになれるかな?」
リリサ
「そこまではなんとも。
明日、校門まで一緒に行ってあげるから。」
ティナ
「……わかったよ。
まぁ、なんとかなるっしょ。」
リリサ
「ふふ、あなたの性格ならきっとすぐ馴染めるわよ。」
ティナ
「え、なんで?」
リリサ
「ガサツだけど素直で、裏表ないもの。」
ティナ
「……それ、褒めてんの?」
リリサ
「あら、お姉ちゃんなりの“最高の褒め言葉”よ♪?」
ティナ(複雑な表情)
「……」
リリサ
「何その顔?
まぁいいわ。食べ終わったら一緒に薬局屋さんに行くわよ。」
ティナ
「あ!そうか。おつかいまだだったんだ。」
リリサ
「また忘れてたの?しょうがない子ね。」
ティナ
「ごめんて。
それより、あの封筒の中身って何?」
リリサ
「注文を受けてたポーションの納期リスト。
あとこの前、あなたと作った“疲労回復ポーション”の販促用ポップよ。
売り場に一緒に置いてもらう予定なの。」
ティナ
「へぇ〜。ちゃんと商売してるんだねぇー。
ちょっと見てみてもいい?」
リリサ
「いいわよ。今回の販促ポップ、結構自信作なの。」
ティナ
「ふ〜ん。どれどれ?」
ティナ、封筒からリリサ製販促ポップを取り出す。
ティナ(読む)
「【新発売!エルフ“秘伝”の疲労回復ポーション♪】
厳選された高地産酸陽樹の果実から抽出されたエキスを、贅沢に4万mg配合。
※コップ1杯に対して水で薄めて飲用した場合の含有量です。
独自の魔力抽出製法を使用し、飲みやすさにもこだわりました。
爽やかな酸味で、水で割るのはもちろん、炭酸や焼酎で割っても美味しくいただけます。
※5:1の割合がおすすめです。
愛用者の声(狩人Sさん)
「前まではさ、魔物討伐の後はしんどかったけど、これ飲み始めてから、素材剥ぎ取り作業がすごく楽になったんだよね!☆
次の日も、斧振るのめっちゃよゆ〜☆」
※個人の感想であり、効果を実証するものではありません。
ティナ
「……」
ティナ
「……胡散臭すぎない?」
リリサ
「そう?事実を書いてあるだけよ?」
ティナ
「……まぁリリサがいいならそれでいいんじゃない?」
リリサ
「何か含みのある言い方ね……」
---
同日の夜。
フローレンス家。ティナの部屋。
ティナ(布団に潜りながら)
「明日から、学校かぁ……」
ティナ(ころんと寝返り)
「……カレン、また会えるかな……」
ティナ(ランプの灯りを消す)
「……今日は早く寝なきゃ……」




