友情は、たい焼きから始まる。
おつかい中、ナンパ師に絡まれたティナ。
ナンパをカツアゲと完全に勘違い。
一部始終を見ていた黒髪ショートの少女が仲裁に入る。
少女(激おこ)
「さっきから見てたけど、その子怖がってんじゃん!!」
ティナ
「(また知らん奴が来た……!)」
ヤンキー魔族
「いや、多分こいつ怖がってねぇよ。
俺も変な奴に絡んじまって、後悔してるところだったし。」
少女
「ハァ!?
自分から声掛けといて、変な奴呼びとか失礼じゃない!?」
ヤンキー魔族
「だってよー!
せっかくかわい子ちゃんだと思って声掛けたら――」
少女
「ムカつく!!
言い訳なんかしてんじゃねぇよ!!」
――ドゴォォォン!!!
少女が建物の壁を殴る。
砂煙が晴れると、レンガ製の壁に拳がめり込んでいた。
ヤンキー魔族&ティナ(驚愕)
「「やっば……」」
少女(眉間にシワ、ギロリと睨む)
「……あんたも、こうなりたくなかったら、
早くどっか行きな……」
ヤンキー魔族
「ひぃッ!?暴力反対ッ!!
わかった、もう行くから!!
ったく、今日はなんなんだよー……」
小走りで立ち去るヤンキー魔族。
残されたティナと少女。
少女
「……」
ティナ(呆然、口ぽかん)
「……。
(すげぇ……)」
少女、ヤンキー魔族が見えなくなったのを確認。
少女
「……痛ったぁぁぁ……!!
めっちゃ手痛いんだけど!?
真っ赤になってるし!!」
少女、手をブンブン振る。
ティナ(ハッとして)
「えッ!?
大丈夫!?……ですか……?」
少女(ひきつり笑顔)
「う、うん。だいじょぶだいじょぶ!!」
ティナ
「全然大丈夫そうじゃないんだけど……
ちょっと待ってて。」
少女
「?」
ティナ、ポーチからポーションの入った小瓶を取り出す。
ティナ
「“転んだ時用”って持たされた、痛み止めのポーション。
これ、あげる。」
少女
「え?いいの?
ありがと!!」
少女、ポーションをぐい!っとひと飲み。
少女
「……あれ?」
手をグーパーしてみる。
少女
「もう痛くない!!凄い!!」
ティナ
「(リリサ製ポーション……ちゃんと効くんだ……)」
少女
「ありがとー!!
ってか、大丈夫?さっきの奴に変な事されてない!?」
ティナ
「大丈夫!
君が来てくれたおかげでたい焼きを死守できたよ!」
少女
「え?たい焼き?」
ティナ
「あいつ、『可愛いね』とか『お茶しよう』とか言ってきてさ!
狙いはわたしのたい焼きだったんだよ!」
少女
「へ、へぇ?
(多分、違うよな……)」
ティナ
「まじ助かったよ!ありがとう!!」
少女
「いやいや、ああいう奴見てるとムカついちゃってさ!
我慢できなかった!!」
ティナ
「ちょっとわかるかもー!
他人の食べ物をたかるよりさぁ、自分が食べたいんだったらちゃんと買えって話だよねー!」
少女(愛想笑い)
「……あはは……
そ、そうだね……」
ティナ
「でも君は助けてくれたから!
お礼にひとつあげるよ!」
ティナ、たい焼きをひとつ、少女へ渡す。
少女
「え?いいの?」
ティナ
「いいよ!
『恩を受けたらちゃんと返せ』ってじいちゃんによく言われてたし!」
少女
「じゃぁさ、あそこのベンチに座りながら一緒に食べない?」
ティナ
「いいよ〜!」
---
ベンチに腰かけ、たい焼きを食べる二人。
少女(たい焼きは頭から)
「君、この辺じゃ見ない子だよね?
エルフ族って珍しいし。」
ティナ(たい焼きは背びれから)
「あー、うん。
最近ここに住み始めたんだ。」
少女
「……ちょっと待って。
背びれから食べる人初めて見たんだけど!!」
ティナ
「え?そう?
背びれの部分、カリカリしてて美味しいからすぐ食べたいの!」
少女
「……たしかに。
ちょっとわかるかも!」
ティナ(ドヤ顔)
「でしょ〜?
時間がたつとふにゃふにゃになったり、
逆に固くなったりするから、早く食べなきゃもったいないよ!」
少女(感心)
「なるほど……」
ティナ(誇らしげ)
「ふふん♪
“タイヤキリスト”のわたしが言うんだから間違いないよ!」
少女
「あはは!
君、面白いね!名前はなんていうの?」
ティナ
「ソラ……じゃなくてティナ・フローレンスだよ!」
少女
「あたし、カレン・ホワイトロック!
カレンって呼んでいいよ!」
ティナ
「わたしもティナでいいよー。」
カレン
「じゃぁよろしくね!ティナ!」
ティナ
「よろしくねー、カレン!」
カレン
「さっき、最近この街に住み始めたって言ってたけど、どの辺に住んでるの?」
ティナ
「えっと……
湖畔沿いの木造の山小屋?みたいなところだよ。」
カレン
「あ、そこ知ってる!
湖畔のロッジでしょ。
昔から“怪しい魔法使い”が住んでるって言われてるとこ!」
ティナ
「そうなの?
たしかに“怪しい魔法使い”と一緒に暮らしてるよ。」
カレン
「特に“若い女の子を見る目”が危なそうなんだって!
女の子を誘拐して生贄にしたり、儀式にしてるんじゃないかって噂だよ。
あたしは会ったことないからわかんないけどね。」
ティナ
「あー、うん。
その噂、大体合ってると思う。」
カレン
「えッ!?
ティナは大丈夫なの?」
ティナ
「うん。
多分、その噂の魔法使いよりわたしの方が強いから。」
カレン
「……へぇ?」
ティナ
「でも強さで言ったらカレンも強いでしょ!
グーパンでレンガの壁壊すってどうなってんの?」
カレン
「まぁね!
昔から運動好きだったし、筋トレとかもしてるから!」
ティナ
「筋トレでどうこうできるレベルじゃないと思うんだけど?」
カレン
「何言ってんの?
物理は全てを解決するんだよ?
筋力こそ正義。」
ティナ
「(うわぁ……脳筋思考だぁ……)」
カレン
「それよりさ、ティナは学校に通ってないの?
見た感じ同い年くらいに見えるんだけど。」
ティナ
「えッ!?
この世界にも学校あるの?」
カレン
「普通にあるよ?
ティナが前住んでたところにはなかったの?」
ティナ
「あったけど……
異世界に来てもJKやる可能性が出てきた……」
カレン
「??」
ティナ
「宿題やって……早起きして……テスト勉強……
最悪だー……」
カレン
「あー、わかる!だるいよねぇー!」
ティナ
「ねー!」
カレン
「でも、ティナが学校来てくれたら楽しいかも!今いくつなの?」
ティナ
「15歳だよーJK1年!」
カレン
「まじッ!?タメじゃん!!
絶対学校来てよー!」
ティナ
「んー……まぁ考えとくよ。」
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たい焼きを食べ終えた頃。
カレン
「たい焼き、ごちそうさま!」
ティナ
「いえいえ、助けてくれたお礼だから!」
カレン
「あはは!そうだったっけ?
じゃぁまた、どこかで会おうね!」
ティナ
「うん、またね!」
お互い手を振って別れる。
ティナ
「(久しぶりに同年代と話して……楽しかったな)」
ティナ(ぽつりと)
「……学校かぁ。」
ティナ(ぐいっと伸びをしながら)
「なんか色々あって疲れたし……もう帰ろ。」
たい焼きの入っていた紙袋をくしゃくしゃに丸め、ポーチに突っ込む。
ティナ
「……なんか忘れてる気がするけど……
まっ、いっか!」
ポーチの中はリリサが用意した
小銭の入ったがま口財布
転んだ時用の絆創膏
痛み止めポーション(成分不明。カレンにあげたので空き瓶)
くしゃくしゃに丸めた紙袋
そして、薬局屋までの道順が書いてあるメモと大切にしまわれた封筒。
――こうして、はじめてのおつかいは失敗に終わり、代わりに新しい世界での友情が少し芽生えた。




