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ダブル  作者: 茶の字
第1章 幼稚園時代
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第103話 束の間のこと

 ティリオーダウンからの主砲攻撃を、その周囲を風壁と状態固定で封殺しつづけてるが、ダブルで作った盾にはまだ活躍する機会が与えられてない。

 盾の影に入ってるアミック隊は、ただ黒い盾に守られてるなぁとでも思ってるだろうが、実はこの盾がティリオーダウンと同じ外装だとは夢にも思うまい。


「これで諦めてくれたらいいんだけどな」

「はい。そちらはどうします」

「オレ? オレたちは上に行こうと思ってる。家族がいるんでね」

「父親ですね」

「うん、まあそう」

「我々はアミック隊長に合流しようと思います」

「そう? じゃあ心配だから深度一をかけとくよ」


 オレがまた強襲制圧艦に狙われた時でも対応出来るよう大サービスを奮発した。

 連立相手でもあるしね。

 するとメアリー副隊長が訝しげにした。


「ええっと、エー・トゥールは持ってないですよね?」

「魔法で潜れるんだ。オレたちは」

「そうなんですか」

「深度一」


 論より証拠だ。オレはアミック隊の全員にこの場で深度一に潜ってもらった。もちろんオレたちも一緒に深度一に潜る。

 するとバカがまた暴発しやがった。

 かかったばかりの深度一がブースト深度一によって引き剥がそうとして位相の拒絶に引っかかっている。

 青いキラメキが分かたれて行くのを見るのは、これで何度目だろう。


「これは」

「すまんね。許されないみたいだ」

「本当に第三勢力なんですね」

「謎のね」

「時々我々の味方をしてくれたりして、そちらの罠かと思ってたのですが」

「罠ならオレたちがこのブースト深度一に入って、さっさと逃げちゃうよ。気づいた時にはオレたちがいなくなってるって寸法さ」

「それはまた盛大な罠ですね。我々は徒労と知りつつ探し回ることになってたでしょうね」


 オレは肩をすくめた。


「というわけでオレから離れたらすぐに引き剥がされることになる」

「ではない方がマシですね。あんなのをぶつけられたら余計なことまで計算しないといけなくなるので気が散ります」

「了解した」


 オレは深度一を解除して、そのままアミック隊と別行動に移ろうとした。

 するとマークがギョッとしたように盾の方を見た。

 それは動物が危険を察知したとたんに瞬時に振り向くのに似た行動だった。



 ◇



 ノーラは憤慨していた。


「あの悪ガキ。本当に悪ガキだよね」

「はいはい、聞きますよ」


 キューロも適当に話を合わせる。正直今はケーフのことで頭がいっぱいだ。何しろノーラの言うところの悪ガキが、事もあろうに風壁らしき物を張ったのだ。それもいつ張ったのかもわからない内に、いつの間にか張ったのだ。


 恒星十二精の目を欺くとは──。


 この一点である。

 つまりそれだけの腕を持ってると云う事でもある。それは恒星十二精よりも腕の立つ精霊魔法の使い手であることを意味する。


 ケーフは無事なのだろうか。

 どんな状態でいるのか。

 女の子に憑いて、せめて女の子を守ってるのかも知れない。


 あいつはああ見えて義理と人情に生きる精霊だからな-。


 しかも悪ガキに合流したのは、さっきまで悪ガキと戦ってた者達だ。戦ってた者達がいきなり味方のようになってるのだから、キューロとしても我が目を疑う。

 暗示系、催眠系、いろいろとあるが、ケーフが捕まってるような現状を鑑みると、可能性としてはやはり風覚だろうと思う。


 風覚。


 風が敵の情報をもたらしてくれる精霊魔法。これをかけられたら呼吸器系がある生物は丸裸も同然になる。だって精気は惑星中にあるのだから。その精気、この星では何と呼ぶのかは知らないが惑星の纏う大気のことだが、その大気をエネルギー源にしてる生物は、すべて身体中に大気を行き渡らせる。

 そうしないと生物は生命活動を維持できないからだ。

 そしてそれは頭脳にも神経にも行き渡る。何を考えてるか、何をしようとしてるか、いつ動くか、その情報が風を伝って全て精霊に伝わってくるのだ。

 その操作を酸素を行き渡らせる時に細工をするのは、実は容易い。神経に直接働きかけることも、ケーフなら出来る。


 私たちは精霊だ。精霊とは原初の存在だ。その私たちが宇宙にあまねく物の根源を行き渡らせた以上、その功績から逃れることは出来ない。


 だがその精霊である我々が、我々の中でも特に優秀な恒星十二精のひとり、ケーフがいいように操られているのである。

 しかもより速く、的確に、精霊魔法を駆使してるのである。


 たかが風壁とは侮れない。

 あの悪ガキに対峙するのは最後は自分とノーラは思ってるようだが、おそらくそうはならないと思う。あの悪ガキに対峙できるのは、ケーフから発する情報を読み解いた自分しかありえないと今は思う。

 しかも精霊魔法を使う被害者の女の子も、その悪ガキによってこちらの敵に回る可能性もある。


 ああ、こんちくしょー。


 思考放棄してもう遊びたくなってきたぞ。


「遊んじゃおうかな」


 そのひと言にノーラが食ってかかった。


「駄目よ。神様に言われたでしょ。よく見とけって」

「ああー、ハイハイ」


 そう言えばそんな事もあった。でもとてもそんな状況ではないんだけどね。


「神様らしき人にもサービスしちゃえっ。えいっ」


 そしてノーラはチャッター仕様の位相のずれを寛司にかけた。


「チャッター仕様だもん。喜んでくれるかな」

「守って上げるんだもん。そりゃ喜ぶに決まってるでしょ」


 もう面倒臭い。お気楽なノーラと違ってこっちはケーフ達のことが頭にあって考えなきゃいけないことがいっぱいあるんだから。


 その脇で青いキラメキが下層へと景気よく放たれた。


 そしてチャッター仕様の位相のずれを受け取った神様が驚いた顔をしてる。


「いいことしちゃったー」

「はいはい。これで神様の覚えも目出度くなるね」



 だがこれで寛司は状態固定を引き剥がされた。なぜなら寛司は、位相の拒絶を自分にはかけていないのだ。

 かければそれにかかり切りになり、他のダブルと併用できない。



 ◇



 でも(あに)さま達に、位相の拒絶をかけることを止めるわけにはいかない。

 兄さまには時折ブースト深度一をぶつけられるのだ。そして無防備でぶつけられたら、兄さまの動きはその場で固定されてしまう。

 しかも今のオレと同じように丸裸にされて、自らの深度一に入ることを遮られてしまうのだ。

 そしてもしもその瞬間に攻撃でも喰らったら──。

 その時には例え兄さまと言えでも命の保証はないだろう。

 降りかかる火の粉をことごとく払いのけてきたおかげで、セプトの攻撃はどんどんその切る手札が強力になってきてる。


 警告を発したい。


 だが今それをすることは出来ない。

 してしまえばこちらの状況を報告する羽目にもなる。

 オレは一度真理ちゃんをセプトに奪われた。

 その精算が済んでいない以上、手を借りるわけにはいかないし、むしろオレが手を貸さねばならぬのだ。


 それが野性の人間ではないオレの為すべき事のはずだ。そしてオレは今、その()最中(さなか)にいる。


 位相の拒絶だけは──、


 絶対に外さぬ。


 こんにちは、茶の字です。

 明日は活動報告にも書きましたが身内の手術があり更新できません。十月の病院関係で書けないと思われる日も明記したので、よかったら見て下さい。その間、小説家になろうには面白い小説はたくさんあります。そちらをどうぞ堪能して下さい。私も頑張ります。皆様に幸せな人生を、心からそうお祈りします。

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