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シナリオⅣ 4 前章 第8話〈前編〉

(^ー^)ノ開戦編…前編ですっ

シナリオⅣ 4.8〈僕らには皆運命があるのか、それとも風に乗ってただ彷徨ってるのか?

たぶんその両方だろう。両方が同時に起こっているんだ〉

I don’t know if we each have a destiny, or if we’re all just floating around accidental-like on a breeze. But I think maybe it’s both.Maybe both are happening at the same time


草創歴0449年7月(7/15)〈前編〉


綿津見(わだつみ)色の海原が天を()める。

まるで海の中にあるかのような錯覚。ここは海と海との境界線の狭間(はざま)

(ゆえ)に、それは「海府の郷」(ニライカナイ)と名付けられた…。


たゆたう波の音だけが、この世界の全てである。

この波間に浮かぶ機械都市は、発掘された生体プラント「結界神殿(フレイル・ザ・ヨルムンガルド)」を安定維持させる為の、超巨大調整ユニットとしての意味合いが強い。


()でる「ニライカナイの力」が、この空間を形成し、次元間の狭間(はざま)に都市を押しとどめていた。


「天都の郷」(ディウム)は冬歴1632年、これに目を付け、南東諸島群本州島に住まう先住民を懐柔(かいじゅう)し、初めの聖女たる「月天使(フレイル)」を用いて「結界神殿(フレイル・ザ・ヨルムンガルド)」に人柱(ひとばしら)として捧げた。


精神増幅振動生体炉…その(みなもと)は人の魂である。

結界神殿(フレイル・ザ・ヨルムンガルド)」と称されるこのシステムは、この「月天使(フレイル)」が魂を統合し続ける事で、その因子が水の世界たる「月世界(ヴェネディス)」とを繋ぎ止め、「月光菩薩(ラ・リューヌ)」の加護を住民に与えた。


この境界線を維持する為には、聖女「月天使(フレイル)」の血を受け継ぐ末裔の因子が必要不可欠であり、その因子を移植された血族こそが「ヴァヴズワスティカ」の名を持つ。

()の伝説の魔女「アルウェリカ・ヴァヴズワスティカ・ラーマス」と、その子孫たる「ヒビヤ・ヴォルケーノ・ラウム」にもまた、その因子が引き継がれているのだ。


だが、彼の「太陽を統べる者」(ジ・ヘリオドムス)は、月天使(フレイル)の因子が世代を重ね、融和性(ゆうわせい)が極限にまで高められた「第五世代型結界因子」である。

第三世代型「ジ・タリスム」のごとき、定期因子摂取型とは根本的に異なり、無尽蔵に「ニライカナイの力」を引き出す事が可能であった。

まさしく、イレギュラーな規格外因子として再調整された個体である。


(おさ)、エポナロッド・キロペーの指示により、体内の霊子回路の封印 施術(せじゅつ)(ほどこ)され、「ケルーナー法治国家(ファズペイゴジャ)」に派遣されたヒビヤ・ヴォルケーノ・ラウムは、摂政官(ダツン)として、国家当主(ジュンワン)「キースヴェルヌ・スウイツエ・シピン」に取り入った。


筆頭 摂政官(ダツン)として、(なが)らく「ケルーナー法治国家(ファズペイゴジャ)」を(かい)し、「法王院(ファゴンスンディアン)」の動向を監視し、情報を漏洩(ろうえい)し続けてきた。

それも全ては、「結界神殿(フレイル・ザ・ヨルムンガルド)」に幽閉された弟の身柄(みがら)、ナウリの為であろう…。


月天使(フレイル)の因子を強く受け継ぐナウリは、時期の因子維持の為の「人柱(サクリフィキウム)候補者」でもあり、彼等の血族は皆、魔女の子孫として(しいた)げられ、ラーマスの名を剥奪(はくだつ)されている。


だが、エポナロッド・キロペーの心を誰が知るであろうか?

「カインの娘」と称される彼女が帝国に(くみ)し、何を思い、この南東諸島群に波乱(はらん)をもたらそうとしているかを知る(よし)もない。


しかし、「天都の郷」(ディウム)が管理してきた霊子機関(エクス・マキナ)「ティアマトの瞳」を、安置されていた「アン・ノウン海域」から持ち出した時点で、その決裂は決定的となった。

命を受け、これを運び出した俺自身が、それを一番良く理解している…。


とは言え、我々、綿津見(わだつみ)は彼女の命に逆らう(すべ)を持たぬ。

それが「ジ・タリスム因子」に組み込まれた「主従の印」(オプリガーティオー)である。


綿津見(わだつみ)によって持ち出された「ティアマトの瞳」は、現在、本州島(ほんしゅうとう)アイゾンゲウアイスオ島のオルカイ区、「鎮政府(ザイディ)」内部に()え置かれ、「御霊ごりょう」との相克(そうこく)接続が着々と進められている。


御霊ごりょう」を源とする鬼脈の力を転用し、霊子として循環(じゅんかん)再生させ、この本州島ごと包み込もうと言うのだ。

机上(きじょう)空論(くうろん)とまでは言わぬが、正気の沙汰(さた)とも思えぬ恐るべき計画である…。


それは、この「海府の郷」(ニライカナイ)あっての(わざ)だ。

それでも、しばしの猶予(ゆうよ)が必要とされ、それを稼ぐ為の時間がいる。

平静を保ってはいても、その仮面の奥底から感ずる焦燥感(しょうそうかん)を痛いほどに感じた。


既に、ケルーナー法治国家(ファズペイゴジャ)傘下(さんか)に配し、さほどの障害もあるまい。

法王院(ファゴンスンディアン)さえも瓦解(がかい)した今、もはや烏合の衆を相手に遅れを取る筈もなし。


何より、彼等の力の(みなもと)たる「御霊ごりょう」は我々が握っているも同然。

(あん)じるべきは「天都の郷」(ディウム)であろうが、我ら綿津見(わだつみ)がある限り、この機械都市が()ちる筈もあるまい。


…何をそれ程までに焦っておいでであるのか?


()に落ちぬ「ロム・テッド・ラーマス」は、急ぎ足を進める。

第三回廊を越え、相位空間 転移門(ゲート)を抜けるや、その先に広がる幾何学模様(きかがくもよう)の摩天楼。

そのひとつひとつが歯車を成し、刻々と姿を変えてゆく。

全てのものが、まさに部品としてこの都市を構成するパーツとなっている。


また、その全ては居住区画としても使用は可能であるが、元より、住民数は減少の一途(いっと)辿(たど)っていた。

今では総人口も五百人に満たぬであろう…。


それは遺伝子の劣化の為に、受精卵の耐性が低下し、新たに子が産まれぬ傾向となった事に起因する。

婚姻統制を(つかさど)る機関を「海宮城」と称し、機械都市中央に位置するは、人工子宮を管理運用する名目(めいもく)の中枢部だ。

ロムが向かう場所、それこそが「海宮城」の天守、エポナロッド・キロペーの(いま)す居城であった。


火急(かきゅう)の呼び出しとは言え、この機械都市全域に()いては、空間転移は不可能な「月世界(ヴェネディス)の加護」に覆われている。

もっとも、相位空間を利用した技術は、この「月世界(ヴェネディス)の加護」の研究成果でもある。


これらの技術は「海府の郷」(ニライカナイ)独自の研究開発によって得られた極秘成果でもあった。

既に「天都の郷」(ディウム)のそれを上回っていると言っても過言ではいと自負をする。


今、ロムの視界を()めるのは、まさに見上げるばかりの、それは円錐形(えんすいがた)ドーム状の尖塔であった。

外壁は()らめく鏡面の(ごと)き、綿津見色(わだつみいろ)が反射し、光に満ちている。


発光体に導かれ、自動生成される通路を通過した(そば)から、背後の空間が閉ざされてゆく。

天守へと続く、螺旋状通路によって上階に持ち上げられ、ロムは数分とかからず、高度330メートルに至った。


そこには何も無い。

天も地もなく、ただ一つ置かれた王座が浮かび上がるのみ。

まるで無重力空間であるかのような錯覚。


ロムは何もなき空間に膝を()く。

その機械化装甲「イージス」が静かに揺れる。


(かしず)く王座に、スウッと人影が生じた。

それは尋常ならざる美貌と肢体を持ち得た、妖艶なりし女性(にょしょう)の姿。

肌も(あら)わな姿で降臨せしも、その素顔は(うれ)いに満ち、その(まなこ)より(しずく)が流れ落ちる。


『おお、エポナロッド様、何をそれ程までに悲しまれるのです?』


『…よくぞ戻ってくれました、ロムよ。』


悲しみに耐える女性(にょしょう)、なれど仮面はせずとも、それは第参帝国総軍を率いる肆(四)大総統の一人、「ハーリィー・ハーピーズ」に相違なし。


『今一度、命じましょう。急ぎ、あのナウリ・ヴォルケーノ・ラウムを()らえ、結界神殿へ連れて来るのです。もはや時間がありません。』


これは異な事を(おっしゃ)る。


『しかし、結界神殿に捧げる為の、ナウリの複製体の調整は終了したとお聞きしましたが?』


そもそも、変異因子とも言うべきヒビヤを拘束(こうそく)する為に幽閉した彼に、それ以上の価値は見出せない。

結界神殿(フレイル・ザ・ヨルムンガルド)」に捧げる人柱(サクリフィキウム)ならば、他にも候補者は多数いる。無論、ラウムの名を持つ者達だ。


『それでも、(わらわ)危惧(きぐ)しているのです。お願い出来ませぬか?』


『はっ!このロム・テッド・ラーマス、一命に代えましても。』


ナウリに(こだわ)る理由が()に落ちぬ。

何か、我々に言えぬ理由があるのかと勘繰(かんぐ)れる。


なれど(こうべ)を垂れ、今は(ひるがえ)りて王座を(あと)にする他なし。

火急(かきゅう)の案件ならばこそ、こちらとて急ぎ取って帰らねばならぬ事案が発生していた。


よもや、この()に及んで我らが「海府の郷」(ニライカナイ)に挑む愚か者共がいようとは驚かされる…。

ましてや、それを率いる者達の中に、()のヒビヤ・ヴォルケーノ・ラウムの姿があるとの報告を受けては、ロムは笑う他なかった。


まさに、転んでもただでは起きぬ男だ。

昔から変わらぬと思い起こされる。


ロムを送り出し、エポナロッド・キロペーの姿は溶けるように消えた。

同時に、この円錐型の尖塔は(はかな)げに鳴動するのであった…。


…海面を機影が通り過ぎて()く。


飛空船団は一糸乱れず、時速50ノットを保ち、空を引き裂きて突き進む。

編成数は10機。

旧型「虚空蔵級(ヨンユアン・ガン)」に比べ、速力及び耐久性は大幅に上昇している。

これも、レーヴ・ソムニウムの残した改装零号機「摩多羅號(ケュドゥサ)」の改造データ流用の成果であった。


動力として簡易型「ソウティウス(星辰公)エンジン」が搭載され、高機動性能を付与している。

だが、空中戦は元より想定外の為、当初より地対兵装のみを組み込んで再設計された。


従来の「超水素」を(おさ)める気嚢体は小型になり、より比重の小さい「ハイドロニウム」錬成機構が施され、大型化した推進用フィンが装甲翼に備えられている。


この虚空蔵級(ヨンユアン・ガン)改修機、量産型「大胎蔵級(ケウアンウ・ガン)」は、旗艦「白毫號(バオス)」を筆頭に魚鱗の陣形にて、海上を西へと(かじ)を取っていた。


首都「ギーズィア」を()ってから丸一日が経過している。

本州島(ほんしゅうとう)アイゾンゲウアイスオ島のオルカイ区、「鎮政府(ザイディ)」を目指す内部艦橋にて、彼等は顔を突き合わせていた。


机上には立体型海図が映し出されいる。

船団の進行方向には激しい磁場が発生しており、それは本州島一帯にまで及んでいる。

だが、この異変の原因を探っている(ひま)はあるまい。

既に(さじ)は投げられたのだ。


ヒビヤ・ホスヤンは当初の予定通り、船団を率いて鎮政府(ザイディ)へと進軍を開始。

三箇所の同時攻撃の(かなめ)()け負っていた。


皇女陛下(ツニュイウアンディ)「セラフィン・オルド・ハナ」が率いる第一編隊は「御霊山(リンヘウンスアン)」を目指し、先行中である。


海図より目を離し、ヒビヤは外周モニターに写し出された、先方の黒雲を眺めやった。

心境(しんきょう)としては複雑である。

思いもよらず、ケルーナー法治国家(ファズペイゴジャ)を我が国よと、思っていた自身の心から迷いが生じている事に驚きを隠しえぬ。


国家当主(ジュンワン)たるシピン家を監視する中で出逢った、幾多(いくた)もの友。

裏切っているとの心の迷いを抱き、(えん)じ続ける事に限界を感じてもいた。

そしてまた今、(おろ)かしくも「摩皇軍(モゲウイジュンテウアン)」を頼り、本州島(ほんしゅうとう)アイゾンゲウアイスオ島を戦火に導こうとしている…。


これは誰がための戦いかと、問いたくもなる。


「ヒビヤ殿、迷っているのか?」


迷いがないと言えば嘘になる。

迷いを察し、副官として同乗する「テリオ・オーガ・ハナ」が問い掛けた。


「孔雀庚申塔甲冑」を(まと)いしテリオは、本来であれば「東海の鬼兵団」(オリエンス・ドウティアンス)を束ねる立場にある「第二皇位 継承者(ワンズ)」である。

降格にも等しいこの措置(そち)は、先の失態の責任を取らされた形であり、ヒビヤの免責(めんせき)()ねたものであった。


だが、当の本人はあっけらかんとし、まさしく世道人心(せどうじんしん)を地でゆく男。

なんら言い訳をする事もせず、姉であるセラフィンの下賜(かし)を受け入れ、今に(およ)ぶ。

とは言え、この第二編隊に配備された「鬼兵(ドウティアンス・スピン)」等、計300兵を配下とする立場に変わりない。


実質上、テリオを補佐する形であるが、進軍立案を提示し、進行ルートを策定したのはヒビヤである。

また先に、進軍の(さまた)げとなる法王院領の駆逐(くちく)を提案したのもヒビヤであった…。


法王院(ファゴンスンディアン)領は4つあり、「サルワティオ」を始め、「マルティフォラス」と「マルモルアエロル」はともかく、「カーラルト」はその位置的に進行ルートに重なり、障害となりうる可能性が高いと見越す。

法王院棺護軍(ジタンジュンテウアン)」が陣を張り、足止めとする想定もありうる。

ましてや、ジャミイアン島の「漆箔曼荼(ウトバン)城郭(じょうかく)」は難攻不落と伝わる。

(よう)する「曠野虎軍(ウアンイェフウ・ジュンテウアン)」も、猛者揃(もさぞろ)いの武者(ジジアンスオ)集団と知れ渡っていた。


だが近日、属領主(リンズウ)バイセ一門の内部でいざこざが起きたとの報があり、旧体制派が一掃されたとのこと。

前属領主(リンズウ)、アティルフィア・カーラルト・バイセは討たれ、混乱に陥っている今こそ、一網打尽にするは容易(たやす)きこと。


虚空蔵級(ヨンユアン・ガン)改修機、量産型「大胎蔵級(ケウアンウ・ガン)」の性能調査を()ねた侵攻を受けて、「漆箔曼荼(ウトバン)城郭(じょうかく)」は落城。

頭上より落とされたプラズマパルス拡散弾「雷禅」を雨霰(あめあられ)と注がれ、これを防ぎようもなく、また闇夜に乗じては機影も見出せず、跡形も無く炎に包まれた。


無論、指揮を()ったのはヒビヤ・ホスヤンである。


この戦果を()って、彼は摩皇軍(モゲウイジュンテウアン)の軍師として正式に重用(ちょうよう)される(むね)となった。

これは皇女陛下(ツニュイウアンディ)の命である。


傍目(はため)には、摩皇軍(モゲウイジュンテウアン)に誓いし服従は(まこと)のものに見える。

鬼兵(ドウティアンス・スピン)達からも、復讐に取り憑かれた彼をこう呼ぶようになった。


恩讐(おんしゅう)の軍師殿」と。


だが、一筋縄ではゆかぬ男であろうと、対面した時分より警戒していた自分にとっては、その予測は当たらずも遠からずであった。

「シェイン・ティアンコン」は第三編隊を率いる内部艦橋でほくそ笑んだ。


秘密裏に内偵を仕込み、漆箔曼荼(ウトバン)城郭(じょうかく)武者(ジジアンスオ)共を、事前に地下壕へ退避させていた事を知った。

もっとも、それを明るみに出したところで、つまらぬ事だ。

彼の出方(でかた)(うかが)うのも面白かろう。


第三編隊は、もう間もなく目標地点であるキサラ区、地底の城郭(じょうかく)樺色(かばいろ)の声院」(ヴァーバル)に到達する見込みであった。


今や「東海の鬼兵団」(オリエンス・ドウティアンス)の「団将(ジュングアン)」へと繰り上がったシェイン・ティアンコンは、即刻の戦闘準備を示唆(しさ)する。

船団の配置は魚鱗陣形のまま、大量搭載されたプラズマパルス拡散弾「雷禅」の試行投下動作が繰り返される。


鬼兵(ドウティアンス・スピン)の生体覚醒を開始せよ。」


シェインの指示を受け、母体(モタイ)等が調整槽に内蔵された人工筋肉繊維が()き出しの重甲冑に、魂魄封入機構を接続し立ち上げる…。

調整槽を満たす赤い溶液が、重々しい赤合金装甲へと転化し、人工筋肉繊維を包み込む。

生体部位に火が灯り、凍結されていた人造血管が解凍され、鬼兵(ドウティアンス・スピン)の魂が目を覚ます。


各部位から火花を散らしながら、(きし)みと共に関節が稼働を始め、調整槽から身を()い出した。


鬼兵(ドウティアンス・スピン)」は一隻あたり、30兵を搭載し、現在、電算処理にて情報を統制中である。

これが終わればすぐさまにも、戦線に投入可能であった。

元になった人格データは、多少は個体差があるも、再利用魂魄に大差は無い。


実際に肉体を(とも)なった指揮官級鬼兵はごく少数である。

摩皇軍(モゲウイジュンテウアン)も又、その「鬼」の因子の為、子を成す能力が年々低下しているのは、誰の目にも明らかであった。


そんな中にあって、このシェイン・ティアンコンは鬼兵(ドウティアンス・スピン)筆頭として育成された指揮官級鬼兵にて、先日までは「東海の鬼兵団」(オリエンス・ドウティアンス)の副将の地位にあった。


「雷禅」を用いた空からの攻撃の有利性は既に実証されている。

殲滅後、鬼兵(ドウティアンス・スピン)による残存戦力の排除を行う予定に変更は無い。


…到達予定時刻は正午30分前を切った。


三箇所同時侵攻の先陣を切り、本州島(ほんしゅうとう)アイゾンゲウアイスオ島の海岸線への侵入を果たす。

天候は荒れ、寒風が吹き(すさ)ぶも、「大胎蔵級(ケウアンウ・ガン)」の編隊を止める事は出来ない。


だが、(あなど)っていたと言うほかなかった。


右翼の「大胎蔵級(ケウアンウ・ガン)」が次々に頓挫(とんざ)してゆく。

黒煙を上げるや、(もろ)くも地表に墜落、もしくは空中分解して四散する。

中には爆散し、隣接する船を巻き込む船体も見受けられた。


「何事かっ!?」


シェインは状況報告を求めた。

各船体の艦橋コントロールは、この旗艦「白毫號(バオス)」3號機の電算処理機構が統制している。

編隊コントロールに異常は見られていない。

内部的要因は認められず、コンソールには、自己診断によって内部侵入者による破壊工作の可能性を示唆(しさ)する。


「馬鹿な…ここは地上200メートルの高度を維持しているのだぞ?」


シェインの顔色が曇る。


目標を前にして、空中から侵入者などとは考えられぬ。

電算処理に異常が発生しているのでは、と疑うしか無い。


「…侵入者がいると言うのならば、それは何者か?」


取りも直さず、その場を母体(モタイ)に預け、シェインは旗艦長専用調整槽へと引き下がった。


調整槽に内蔵された指揮官級鬼兵甲冑「眞月(マガツ)」に身を任せ、人工筋肉繊維が素肌を覆ってゆく。

触覚が遮断されると、調整槽内部を赤い溶液が満たし始めた。

これは「御霊山(リンヘウンスアン)」から奪取した鬼脈を含有(がんゆう)する形状記憶赤合金溶液であり、赤銅色の装甲を瞬時に形成する。


視覚モニターが灯り、調整槽が開く。

シェインの意思を電気信号として受け取り、人工筋肉繊維が動作を補正し、四肢をしなやかに稼働させる。


ガガガ…ガガガ…ガガガッッ…。


右の(かいな)(ふち)を掴む。


「視覚モニターに…ノイズが生じているが…?」


その(とき)、思わぬ衝撃が我が身を貫いた。

ふいに視線を降ろすと、眼前にそれが立っていた。


「…!?」


唖然としたまま、続けての第二射、第三射がシェインの胴体を貫く。

綿津見(ワダツミ)の放った「ディヴァナガライ粒子砲」が肉体に風穴を開けていた。


機械化装甲「イージス」の洗練された形状は個々で異なるものの、霊子統制機関「ジ・タリスム」によって強固に霊子結合され、被服者の生体情報を刻み込み、相位空間転移を可能とする。

つまり、次々と墜落してゆく「大胎蔵級(ケウアンウ・ガン)」には、綿津見(ワダツミ)が空間転移によって入り込み、内部から破壊していると言う算段か…。


過剰に詰め込まれたプラズマパルス拡散弾「雷禅」もまた、(あだ)になったと言えよう。

内部から攻められては防ぎようも無い。


()かったわ…。」


一手(いって)(むく)いる事も出来ず、シェインは口惜しくも絶命した。


樺色(かばいろ)の声院」(ヴァーバル)に辿り着く前に、かくして第三編隊は地に()ちたのであった…。

(^ー^)ノ主人公、無活躍っww

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