表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
78/116

シナリオⅣ 3 後章 第10話〈後編〉

(^ー^)ノ後編

シナリオⅣ 3.20〈私が変わったときに変わり、私が頷いたときに頷くような友は必要ない。そんなものは、私の影がずっとうまくやる〉

I don’t need a friend who changes when I change and who nods when I nod; my shadow does that much better


草創歴0449年9月(9/22) 〈後編〉


ヤーマンターカ・ハヒキが戦場に降り立った。


(ともな)いしは、右にタッキーノ・アルジェントムニツィオーネ。左にユウラーレ・ル・ドゥスの2名のみ。

(いかづち)の刻印」を()ってしても、共に連れて行けるのは、この2人が限度であった。


「いやぁ~。にしてもっ、でっかい蛇だよなぁ~。」


第一声。

素直な感想が口を突いて出た。


眼前の脅威(きょうい)を前に出た言葉としては、まるで緊張感が無い。

そこが彼らしいと言えば彼らしい。

彼ならば何とかしてくれるのでは?そんな(あわ)い期待が広がっていく。


「ヤーマンターカ卿、よろしいか?」


馬上より不躾(ぶしつけ)ではあったが、待ち人まで歩を進ませ、一礼を(はい)す。


「私は公王国の第一 公王子(プランス)、ノーヴァルと申します…。」


「おっ!じゃあ、ちゃっちゃっと、やっちゃおうかぁ?」


引き合い同調する力は、言葉を()わさずとも(わか)り切っているかのようで、頼もしい背中を振り向かせることは出来なかった。


ヤーマンターカの(ひたい)に、一際(ひときわ)強く輝く「(いかづち)の刻印」。


呼応(こおう)し、ノーヴァルの眉間に藤色(ふじいろ)の紋様が浮かび上がる。

同時に、彼の瞳の光彩(こうさい)紫紺(しこん)に染まった。

深く深く知性に(いろどられ)られた双眸(そうぼう)だ。


「…我は深淵からの門 (パーゴット・コクマー)なり。」


騎乗したまま、騎馬をも藤色(ふじいろ)の霊子が包み込む。

ノーヴァルの両足首から発生した美しき(はね)が、まるで天馬(てんま)のごときシルエットを騎馬に与えていた…。


まず先陣を切り、(ほとばし)(あお)き雷光を()びたまま、ヤーマンターカが飛び立つ。


「先に行かせてもらうぜぇぇ!!」


重力を無視し、()を描きて赤き蛇の(あぎと)対峙(たいじ)したまま、虚空に(とど)まる。

これに追随(ついずい)するは、天馬を(ぎょ)するノーヴァルである。


(あお)き光と、藤色(ふじいろ)の光。

二つの光が交差しながら、「赤き蛇の王」(オウロボス)を威嚇(いかく)し、牽制(けんせい)し続ける…。


この虫ケラごときに(わずら)わされ、赤き蛇は身を(よじ)った。

瓦礫が粉微塵(こなみじん)に弾け、大地が陥没(かんぼつ)し、地下空洞は崩壊した。


とは言えども、いまや大した問題でもない。


『…我を裏切りし一族もろとも、この大陸を滅ぼしてやろう。』


赤き蛇が咆哮(ほうこう)を上げた。


ギシャァァァーーーーァァァアアア!!!


それを待っていたとばかりに、毒煙(どくえん)吹き上げる口腔(こうくう)に吸い込まれる(あお)き雷光。


「いやっほおぉぉぉーーーーー!!」


雄叫びを上げて、ヤーマンターカは蛇の口に飛び込んでいた。


その突撃を(さえぎ)る力及ばず、実体化を果たしたが(ゆえ)の内部的弱点を白日の元に(さら)け出す。

それは(すなわ)ち、「赤き蛇の王」(オウロボス)の心臓である…。


ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…ドクンッ…。


巨大なる心臓は脈打(みゃくう)ち、赤く明滅(めいめつ)を繰り返す。

白骨化した頭蓋(ずがい)のみがこの地に封ずられ、ここまでの質量を伴った再生を果たした。

それは生命の樹たる「比類なき銀の台地」(アルジェント・ウィルダネス)から流入する精霊力の顕現(けんげん)である。


「…かつて、世界の始まりの地より追放されし人類の始祖(しそ)は、赤き蛇にそそのかされ、知識の実を食したと言う。」


「赤き蛇の王」(オウロボス)は怒り狂い、怒号(どごう)を上げる。


なれど、天馬と共に宙を駆けるノーヴァルを(とら)える事は出来ない。

赤き蛇には未だ、あるべき翼は剥奪(はくだつ)されたままであったのだ…。


「…そうして自らは生命の実を食し、七つの大罪 (セプテム・アラストール)にあって、それを大きく上回る存在となった。」


それは、ノーヴァルの内にある「(しき)の刻印」がもたらす過去の情景(じょうけい)であった。


『…我こそが本来、お前達、人間を愛し、導く者であったのだ…故に、お前達は我を(あが)(たた)えるが道理。』


「だが、お前が愛した者はお前の愛を受け入れなかった…ゆえに、お前はその男を己が物にせんと欲した。」


『それの何が悪い?それを、あやつらが(ねた)み、この我から力を奪い取ったのだ。』


憎しみの奔流(ほんりゅう)がノーヴァルに突き刺さる。

「七つの大罪」(セプテム・アラストール)に対する復讐(ふくしゅう)のみが、この(かわ)いた妄執(もうしゅう)を癒やしてくれよう。


「そんなテメぇ勝手な都合を押し付けんなぁ。そんな後悔(こうかい)は、過去に(さかのぼ)って自分でやり直せやっ!!」


神だって言うなら、それぐらい出来るだろうと言わんばかりに、ヤーマンターカが()えた。


(しか)り…この次元は(すで)に、人の手に(ゆだ)ねられた世界。神の介在(かいざい)する余地(よち)はないっ!」


ノーヴァルもまた、その道理を拒絶(きょぜつ)する。


(しき)の刻印」は、ありとあらゆる意思伝達機能の共有化を果たす。

人と人との意識を結合し、それぞれをシナプスとして、膨大(ぼうだい)な意識の統合を()て、ニューロン神化へと至る。


それは、例え相手が神性のものであろうとも同様だ。


「何故ならば…あらゆる神性もまた、人間の信仰という心から生まれたものであるからだ。」


ノーヴァルのニューロン神化が(いちじる)しく発現(はつげん)し、輝きが増す。


この瞬間、北ソルティア周辺、生き残り、赤き蛇を見上げる人々の意識が共有化された。

からくも、残骸から抜け出したサスティン・インデックスもまた、その(いち)シナプスに組み込まれていた。


そもそも、鉄鎖騎士団(ケッテ・アルメーコーア)見限(みかぎ)り、サン・アガスティア不在のカエルム・キルクルス(天宝輪)の指揮官に収まった直後の惨劇(さんげき)である。


驚くべきことに、その瞬間、自己とも言うべき概念(がいねん)が消失し、その他大勢もまた一人一人が自身であるかのような、そんな超越感覚を味わう事となった。

それを統括(とうかつ)して、一段高い高次元にノーヴァルの意識と融合した「識の刻印」が存在している。


何よりも、サスティン・インデックスが(おのの)いたのは、自身の中にもう一人の自分が存在していた事だ。


「…お前は誰だ?」


顔形(かおかたち)は同じなれど、思慮深(しりょぶか)い眼差し。


「私はお前であり、お前は私でもある…。」


その言葉は真実であると知れたが、全ての意識は今や統合され、「赤き蛇の王」(オウロボス)という神性を拒否する為の意思統一に(いた)った。


『またしても…我と言う存在を消し去るつもりか?だが…実体を得た今の我が易々(やすやす)と封印されると思うな…。』


そう。口惜(くちお)しくも封ずられた、あの(とき)とは状況が違う。

我を裏切りし「火の一族」(ギディエール)め…。


だが、状況が違うとは言い得て(みょう)だ。


「俺がここにいるって事をなぁ、忘れるなよぉ!?」


ヤーマンターカから(ほとばし)(あお)き雷光が、全身を透過(とうか)し、周囲の霊子を()らい尽くす。


「俺の(いかずち)が、お前の心臓を止めるぜぇぇ!!」


血煙(ちけむり)を上げ、心臓細胞を蒸発させる。


ドドドドォォォ…ォォォオオオンンン!!!


激しい鼓動(こどう)苦悶(くもん)とが、赤い蛇を絶叫(ぜっきょう)させていた。

文字通り、その動きを止めさせる事に成功している。


その間隙(かんげき)を突き、ノーヴァルのニューロン神化が(きわ)まった。


「人の記憶より消えよ…赤き蛇の王 (オウロボス)よ!!」


その刹那(せつな)、「赤き蛇の王」(オウロボス)との意識接続を()て、膨大な情報量が上書きされてゆく。

記憶容量には限界があり、存在を空間に(とど)める為の許容量も定められている。二つの摂理は同義(どうぎ)である。


それを上書きし、記憶共々消去する「オーバーウェルム」。


シナプスとして取り込まれたタッキーノとユウラーレの両名は、この(とき)、「赤き蛇の王」(オウロボス)の意識の内側、深層心理の深淵(しんえん)(まぎ)れ込んでいた…。


急がなくては、自分達も「オーバーウェルム」によって、存在を消去されかねない。

その前に…目的のものを見つけ出さねばならない。


『…私の第三の目 (アージュニャー)で必ずや見つけ出す!!』


記憶が混在(こんざい)し、激しく(うつ)ろうこの場所で、タッキーノは記憶に(まぎ)れ、幽閉(ゆうへい)された人格を探し求める。


『頼む…。』


続くユウラーレの懇願(こんがん)を背に、底へ、底へと沈んでゆく…。


だが、未来の事象(じしょう)を読み取る禁断の力…それは選び取れる選択肢(せんたくし)が二つある事を示唆(しさ)する。


…分かり切っていた事だ。


何を(えら)び取り、(つむ)ぎ出す事が最も最善(さいぜん)であるのか。


『ユウラーレ、そこだっ!!』


タッキーノがその場所を指し示す。


ユウラーレの全身を「照日月主(ダーエワ)」の禍紋(かもん)(いろど)り、(きら)めきと共に「捕縛光鎖結界(タルタルクス系)」の鎖が伸びる。


キュルキュル…キュルキュルッ!!


光鎖が標的を(から)め取ると同時に、「赤き蛇の王」(オウロボス)と言う存在が崩壊の(とき)を迎えた。


『…ここまでかっ!』


止む無く、タッキーノはユウラーレを送り出そうと、外界への道を強行的に探し当てる。

「第三の目」 (アージュニャー)から血潮が流れた…。


雪崩(なだれ)のごとく渦巻く「オーバーウェルム」の口蓋(こうがい)に引き()られ、潮流(ちょうりゅう)に足を取られる。


『行け!!振り返るなっ!真っ直ぐ進めっ!!』


私は…お前を選べなかった。

ならば、友である私も共に行こう…サンよ。


ユウラーレは静かに眠り続ける我が弟の魂を、両手でしかと抱えたまま、タッキーノを振り返る。


足を止めるなと叱咤(しった)され、駆け抜けたその先に、突如として足元に大地を感じた。


「!?」


いつの間にやら、実体をもって超感覚から解き放たれていた。

寸前まで見上げていた赤き蛇は虚空(こくう)の果てに消え去り、光差(ひかりさ)す天を見つめる己を取り戻していた…。


「…戻って…来たのか?」


あの暗雲(あんうん)は千々(ちぢ)に乱れ、天変地異の予兆は人々の記憶と共に()すれてゆく。(とき)さえも超越したかのように、日が登っていた…。


残されたのは、北ソルティアの崩壊した大地だけか?


それでも、天より降り立つ2つの輝きがその証拠だ。

一つは藤色(ふじいろ)の輝き…。

もう一つは(あお)き輝き…。


ノーヴァルとヤーマンターカは共に、ユウラーレの元に降り立った。


慟哭(どうこく)の涙を流す彼の両手から抜け出し、その魂が(またた)く。


『ありがとう…お兄ちゃん…。』


その魂は(はかな)く微笑む。


…消えるわけじゃない。


元の自分に戻るだけの事。


ユーキ・オンベリーコの魂は、「比類なき銀の台地」(アルジェント・ウィルダネス)と言う名の樫の木が、長い年月を()て精霊に昇華(しょうか)したもの。


「ユーキ…また、いつかきっと…会えるよな?」


ユウラーレの肩をヤーマンターカが叩く。


見送る者達を背に、幼き魂は遠ざかって行った。


光差(ひかりさ)す廃墟の美しさが、門出(かどで)のようにも見えた。


この世界はまだ、人による可能性を秘めていると、そう確信させてくれたのだ。


ありがとう…。


シナリオⅣ 3 後章 完

(^ー^)ノ10話…完結。

とりあえず、ヤマさんの物語もここで終了。


明日は終章をちょちょっと書いてみますw


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ