シナリオⅣ 3 後章 第9話〈前編〉
(^ー^)ノ南ソルティア決戦編〜〜前編
シナリオⅣ 3.19〈私が変わったときに変わり、私が頷いたときに頷くような友は必要ない。そんなものは、私の影がずっとうまくやる〉
I don’t need a friend who changes when I change and who nods when I nod; my shadow does that much better
草創歴0449年9月(9/22)〈前編〉
軽々と刃が弾かれた。
刃同士が衝突し、激しい火花が格納通路に舞い散る。
ガキィィィ…ン!!
思いもかけず防戦一方となり、鋭利な剣先を躱すに精一杯となった。
こちらが躊躇しているとは言え、よもやここまでの斬撃を打ち込んでくるとは…思いもよらず、だ。
ユウラーレ・ル・ドゥスは歯がゆくも、距離を置くべく区画を走り抜ける。
複雑な内部構造を把握している訳では無い。
ここは帝国領「壇上伽藍」を維持調整する為の補給兼用施設の内部である。
だが追撃は止まず、「響音結界(トララメス系)」を宿す魔剣が壁面を切り裂き肉迫する。
「くっ!?」
皮肉な事に、身を屈めて躱し、再度の斬撃を受け止める自身の魔剣もまた、「響音結界(トララメス系)」を帯びたものだ。
その魔剣「ウィズダム(知恵)」で弾き返すも、質量的にも大剣相手では分が悪い。打撃によりダメージが蓄積されていく。
ましてや、小柄な肉体に腕力の限界を見せず、攻め入る手数の多さに押され始めていた…。
対して、クリシュナ派に於いて、弓の使い手として名を馳せるユウラーレ。
不得手と言う程でもないが、この敵には手を焼いた。
「やめろっ!何故、俺たちが戦わねばならないんだっ!?」
だが、ユウラーレの言葉に聞く耳を持たず、この甲冑の戦士は手を休めない。
「やめろっ!俺の声が聞こえないのか、ユーキっ!!」
弟として育ててきたユーキ・オンベリーコが、今や「銀の種族」(アエテルニタス)の三眷士として牙を剥く。
ドルイド(自然崇拝者)であるユーキが、一体、何をレヲン・ギ・ルに吹き込まれたものか…?
地上に於ける防衛戦はとうに崩壊し、「公国王位騎兵団」及びクリシュナ派の騎兵は、都市内部へと雪崩れ込んでいた。
…この日、帝国の支配に一矢報いる開戦が開かれた。
刻に草創歴449年9月22日。
帝都戦争を翌年に控えた寒風吹き荒ぶ南ソルティアの地。
天を埋め尽くすは「銀の種族」(アエテルニタス)の第弍帝国総軍。
その銀の帆船群18機である。
率いるは若き王太子レヲン・ギ・ル。
南ソルティアを上空で包囲旋回しつつ、メデュース海峡正面からの対空砲火を受け凌ぎ、隙あらば「重複型捕縛光鎖結界(タルタルクス系)」の光鎖を撃ち放つ。
その標的となりて、これを一手に引き受けるのが人工島「アルキストラテゴス」である。
サクトリフ・ヴォルフォルターによる電子領域への直接精神融合によって、全ての重火器コントロールはラグタイム無しに稼働している。
対空改良型炸裂ボルトが銀の帆船群の動きを爆炎で圧倒し、一分の隙も与えず撃ち尽くす覚悟の総決戦。
ドドドォォォ〜〜〜ン!!ゴゴゴゴ…ゴゴゴォォォ…。
誘導型防壁反応弾がサクトリフの意思を伝達し、光鎖を掻い潜り、刻々(こくこく)と帆船を撃墜してゆく。
また、公国王位騎兵団を援護すべく、「アルキストラテゴス」側面に設置された速射型高出力熱弾頭が海峡越しに咆哮を上げる。
陸戦はその時点で、あらかた決着はついていた…。
南ソルティアの都市防衛を司るは銀の種族 (アエテルニタス)の三眷士が一画、ユーキ・オンベリーコ。
駐留する帝国兵は微々(びび)たるものだ。
問題は、大型複合軍事施設と化した都市一体構造の外郭を構成する自衛設備、固定型超電磁粒子加速器砲塔(フェブリス砲)の壁。
自動装填される積層型湾曲封入弾頭が脅威となって迫る。
高度に圧縮された貫通力は、空間を湾曲させ、着弾すると同時に特異点の渦を生み出す。
物理防御を無効とする雨霰の砲撃。
ドドドドォォォーーーォォォン!!ドドドド…ドドドドォォォ…ン!!
…このままでは近付く事もままならぬ。
と、砲撃の波が止まった。
当初の目論見通り、伏兵400騎兵からなるクリシュナ派の精鋭が都市に取り付いたか…?
「…しかし、想定時刻よりも多少、早いようだが?」
閣僚ケイスケ・ソリッドシメールに疑問が生じた。
開戦より僅かに1刻。
同様に伏兵の指揮を執るのはタッキーノ・アルジェントムニツィオーネである。
「…なんだ?」
地響きを上げて、都市の外郭に張り出した砲塔が次々に断ち切られ、半ばから轟沈してゆく。
…煌めく霊糸。
アター・ラ・ラセンは確かに、遠目ながらも、それを確と見定めた。
そして歓喜に震えた。
「…リュー君、戻ってきてくれたんだね。」
翳した手の指の隙間から見上げる頭上。
『都市上空より緊急接近する機影ありっ!』
レヲン・ギ・ルは、ただちに銀の帆船群の散開を命じ、その襲来に備えるべく立ちはだかった。
「散開したまま待機せよ。標的を捉え次第、撃ち落とせっ!!」
だが予測するよりも早く、天を斬り裂きて、それが肉迫した。
クリシュナ派の旗艦「イーンスルターレ」である。
甲板中央、風圧に屈せず、仁王立ちのハイランダー(貴戦士)K・アルザードキングが刃を引き抜く。
その背後に控えるは、和装の衣を風にはためかせながらも、一層優雅なる、リュー・シュレンメイの姿あり。
その面差しは「左近の橘」か。
「…頼んだぞ。」
左近の橘が頷きて、指先から霊糸を紡ぐ。
「承知した。」
それは霊符を組み込まれ、霊子によって編まれた糸。
霊符術を内包し、いかなる障壁さえも寸断する極小の「奥の院」(エウブレウス)。
更には、その硬度は「金剛石」と同等。
ひらりと、Kがその身を空に投じた。
距離にして50メートル弱。
レヲン・ギ・ルの乗る銀の帆船と「イーンスルターレ」との距離は隔たりがある。
だが「イーンスルターレ」は脚を止めず、銀の帆船群の統制を乱すべく、空を滑空する。
「重複型捕縛光鎖結界(タルタルクス系)」の光鎖が「イーンスルターレ」を撃ち落そうと縦横無尽に迫り来る。
ゴゴゴゴ…ゴゴゴォォォーーーー!!!
旗艦外装に掠り、躯体が揺れるも速度は落ちない。
舵を取り仕切るのは、問答無用でガチャトーレから奪い取ったレーヴ・ソムニウムであった。
「北極の学問の塔」(コネサンストゥール)から参画した超霊者である。
「多少の損害ではこの船は沈まぬ。ギリギリまで時間を稼ぐのだ。」
これを横目にKが駆け抜ける。
空を駆け抜けるかの如く、リューの指先から放たれた鋼の霊糸を辿り、その細き道を突き進む。まさに神業に等しい疾走だ。
「はあぁぁぁ!!」
銀の帆船の甲板に降り立つKは、覇気と共に、一凪ぎにて人垣を打ち砕く。
予期も出来ぬ上空での無断乗船。
かつて無き事態に銀の種族 (アエテルニタス)達が慌てふためく。
よもやの接近戦を想定する者も無く、船内に入られては一貫の終わりかと思われたその時…。
「…自ら死地に飛び込むとは、何という愚かな人類種よ。」
だが、ただ1人で乗り込んだのが運の尽きと言わんばかりに、レヲン・ギ・ルは嘲笑った。
「殿下、なれど相手は騎士…ここは私がお相手しましょう。」
銀の種族 (アエテルニタス)達を押し分け、一際長身の女剣士が姿を覗かせた。
銀の種族 (アエテルニタス)の中にあっては珍しく筋骨粒々(きんこつりゅうりゅう)とした体格の持ち主である。
女性ながらも、身長程もある両刃の大剣を扱うに不自由ない様子。
ましてや、その大剣からは禍々(まがまが)しいばかりの「瘴気」が迸り、危険極まりない気配をひしひしと放っている。
「我が剣、ヴィクティム・ヲォーパルは魂を喰らう。故に、先に名を聞いておこうか?このヴロンズ・ナン・ナの手にかかり、餌食となる名をな…。」
レヲン・ギ・ルの側近中の側近であり、三眷士が1人、「銀の種族」(アエテルニタス)のヴロンズ・ナン・ナである。
その険しき眼光がKを射抜く。
されど、聖剣「イスマイール」を正眼に構えしKに一分の隙も、微塵の動揺も無い。
ましてや、ただ1人で乗り込んだ覚えも無いのだがな…。
両者が対峙する最中、甲板を半壊させ、その男が降下した。
ドカーーーーンッッッ!!
凄まじい衝撃に、銀の種族 (アエテルニタス)の幾人かが地表に墜落した。
「まったく、俺は曲芸師じゃないんだぞっ?あんな細い糸の上を走れるかよっ!!」
屁理屈を言いつつも、リューの霊糸を辿り、危うくも途中でバランスを崩し、跳躍にて何とか到達を果たした。いやぁ、危ない。危ない。
砂埃から姿を現したものの、肩に担いだ人物がジタバタと暴れ、一悶着あったようだ。
「おいっ、あんたが暴れるからだろうがっ!?」
ヒロト・グラーティア・ドゥーロは憤慨した。
「獅子回帰」の鋼の筋力と骨格あってこそ、墜落の危機を脱したと言うものを…。
「背骨が折れましたあ~。」
ガチャトーレ・クリシュナ・ラ・ウルが頬を膨らませ、憮然として抗議する。
折れてたら暴れられないだろうが…。
「貴様らっ、何をふざけた事を…。」
ヴロンズ・ナン・ナが激昂し、戦況は千々(ちぢ)に乱れた。
そもそも、それが目的である以上、邪魔なお荷物はほっぽいて、ヒロトは脱兎のごとく駆け出す。
ガチャトーレを投げ出すと同時に、長刀「オルサ・マッジョーレ」の白刃を抜き放つ。
「貰ったぞっ!!」
落とされて大騒ぎをするガチャトーレ。それもまた、レヲン・ギ・ルの注目を引くのに十分であった。
ガキィィィ…ン!!
銀の種族 (アエテルニタス)の首魁の首を刎ねんと、繰り出された一刀は、だが、あとの一歩の所で防がれていた。
「伏兵を配するは戦場の常…よもや、人類種ごときに遅れを取る我々と思うてか?」
レヲン・ギ・ルの身を護るのはヴロンズ・ナン・ナのみに非ず。
「円環重力型防壁結界(ヘドロン系)」がヒロトの刀身を捉えている。
のみならず、それがヒロトの四肢までも捉えていた。
この紅い円環が肉体に重なり合い、重しのように彼の身動きを封じていたのだ。
「殿下の盾たるが、この私…オクト・ニーヲァの役目。我がその身に宿す天地分主の禍紋こそは…結界魔道に特化せしもの。もはや、一歩たりとも動けると思うな。」
三眷士が一画、オクト・ニーヲァはそう名乗り出ぬ限りは、他の「銀の種族」(アエテルニタス)と大差なき青年であった。
剣士と言うよりも、魔道士と言った風体である。
些か頼りなげであったが、今や全身から煌き発光する禍紋こそが、その力の証である。
「…俺も易く見られたもんだなぁ…。」
だが均衡を打ち破り、苦笑を漏らしたのはヒロト・グラーティア・ドゥーロであった。
「こんな重しでなぁ、本気で俺を止められると思ってんのかぁ?」
言うは一見にしかず。
ヒロトは一歩、また一歩と歩を進める。重さなど意にも返さずに…。
「…ば、馬鹿なっ…。」
それ見た事かと、意気揚々(いきようよう)とガチャトーレが背後で騒いだ。
途端、紅い円環の一つがガチャトーレを襲い、彼は甲板に突っ伏していた。
バタ〜〜〜ン。
「あ~。重たいです…。」
ガチャトーレの醜態はともあれ、Kとヴロンズ・ナン・ナとの斬り合いは見境なく始まっている。
巻き込まれまいと、甲板は荒れた。
なれば、こちらはこちらで片を付ける他はない。
第一の標的がレヲン・ギ・ルである事に変わりも無い。
ちょっと手足が重たくはなったが、船上に於いては退路無し。
それは敵味方ともに言える事だ。
「さあ、始めようか?」
何の気兼ねも要らぬ。
「鉄鎖騎士団」と言う鎖から解き放たれた今、高揚する自身をヒロトは抑える事が出来なかったのだ…。
(^ー^)ノ急げっ、ヤマさんw




