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★月夜に照らされる美少女——その名も


「追手(おって)はもういない。だから、そろそろ聞かせてくれないか?」

 グラップルガンで屋上へと移動したあと、念のためと言って屋上から他の建物へ何回も飛び移っては発狂して「うるさい」と言われ続け今に至る。

 ここは綺麗な月に照らされた知らない建物の屋上。

 そこで俺たちは互いに立ち尽くし、じっと視線を交わす。

 だが、見つめてもなおフードを深々と被っているせいで顔はよく確認できない。

 見えるのは顔から少しだけ覗く、綺麗な真っ白な肌と唇だけだった。

「私(・)は(・)暇じゃないから端的にお願い」

「悪意のある言い方だな……まあいい、端的に言う。お前は何者だ」

 それを聞いた女は、深々と下げていたフードをそっと上げて、

「私はルミナ。この世を調(・)和(・)する者」

 見えてきたのは、夜空のように美しい紺色のショートカットに、満月をそのまま取り込んだかのような黄金の瞳——ルミナ。

 彼女は文句なしの美少女だった。

 その魅力的な容姿に惹かれて思わずスルーしてしまったが『この世を調和する者』とはどういう意味だろうか。

「じゃあ、私行くね」

「えっ、ちょっと待てよ!」

「なに? しつこい男は嫌われるよ?」

 なんという塩対応。

 これがなにかの作品であれば運(・)命(・)的(・)な(・)出(・)会(・)い(・)というやつなのだろうが……違ったらしい。

「まだ聞くことは山ほどあるだろう」

「言ったでしょ? 私は暇じゃないの。あと、ヒーローは素性を明かさないのが鉄則だよ」

 言い得て妙だがそれもそうか。

 ただ、いくらヒーローでも都合良すぎじゃないか?

 あんな裏路地に、たまたま助けに来てくれるかね——そうか、もしかして。

「なあルミナ。最後に聞かせてくれ」

「……なに?」

「俺を助けたのは偶然か?」

 するとルミナは、吸いつかれるように視線を月へ……

「図星だな」

「チッ」

「え、今『チッ』つった? 言ったよな?」

「じゃあね」

「あ、おい! ……ってマジかよ」

 なんということだ。美少女が屋上から落ちていく。

 だが、華麗に着地してそのまま暗闇に消える。

 本当に何者なんだ? あの少女は。

「……帰るか。俺も暇(・)じゃないんでな」

 そう、俺は暇じゃない。

 今夜の二四時から第二期の放送がスタートする『料理人はもう、作っている。』を拝めなくてはならない。

 ファンたる者、万全な準備をしてからリアタイしなくては。

 こんな所で、変な冷(・)た(・)い(・)女(・)と話をしている暇などなかったのだ。

「てか、ここどこ?」

 スマホの地図アプリを開いてみると、自宅からの距離は約五キロ。徒歩で約一時間ってところか。

 命を救ってもらったことには感謝してる。だが、

「最悪だ」

 ここまで離れなくて良かっただろ。

 あの少女のことだ。もしかすると嫌がらせ……?

 いやまさかな。

 まあ、とりあえず帰ろう。この時間がもったいない。

「……ん?」

 数歩進むと、床に謎の紙(・)切(・)れ(・)が。

 なにも考えずにそれを拾って見てみると。


『今夜二四時 8843』


 と書かれていた。

 意味がわからん、意味がわからないのだが。

 二学期期末テスト、学年順位163位の脳内CPUが導き出した答えは——。

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