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 その後、周囲で見守っていたメンバーたちが次々と集まってきた。

 片手で深を支えていた長谷川に代わり、瞬が背中を支える。

 訓練前は疲労で倒れそうになっていた瞬も、今では多少回復しているらしい。笑顔を浮かべながら深に声をかけた。


「大丈夫? すごかったわね!」

「何がっすか?」


 どうやら本人は、自分がどれほど異常な動きをしていたのか理解していないらしい。

 瞬はちらりと長谷川を見る。

 だが長谷川はその視線にも気づかず、深の傷口を見つめたまま考え込んでいた。


(長谷川さんが困ってる……)



 瞬も、先ほどの訓練を思い返す。

 深の動きは明らかに異常だった。

 俊敏さを得意とする瞬ですら、かろうじて追える速度。

 おそらく他の新人なら、何が起きていたのかすら理解できなかっただろう。


 訓練初日。

 それなのに深は、すでに戦闘術士として成立しかけている。


「まっ、最初にしてはかなりすごいってこと!」


 結局、瞬も深くは説明しないことにした。

 ここは新人担当である長谷川に任せたほうがいい。


「そんなもんっすかねぇ……」


 深は実感の湧かない様子で頭をかく。

 すると今度は、周囲のメンバーたちまで順番に深を褒め始めた。

 その様子を眺めながら、長谷川は先ほどの戦いを反芻する。


(なんて才能……)


 だが同時に、疑問も大きくなっていた。


(あの現象は何……? この子の能力、かなり特殊だわ)


 そんな長谷川のすぐ横で、最後に春が口を開く。


「とりあえず治療室行きましょう! 深君、私が連れていくわ!」


 やたらテンションが高い。

 まるでスポーツ観戦で推しチームが勝った後のような勢いだった。


「長谷川さん、いいですよね? 他のみんなは床ならしお願い!」


 春の妙なハイテンションに少し驚きつつ、長谷川が苦笑する。


「そうね。春ちゃんお願い。私は少し用事があるから、先に戻るわ」


 その言葉に他のメンバーも頷き、訓練場は解散となった。



     ◇



 その後、深は春に肩を貸されながら治療室へ向かっていた。

 腹の痛みは引いている。

 だが全身の筋肉が震えており、まともに歩けない。

 疲労が限界を超えていた。


「どうだったっすか? 俺、ほんとにちょっとはやれてました?」

「ちょっとどころじゃないわよ。信じられないぐらいすごかったんだから!」


 春が興奮気味に答える。


「しかも持久力もあるし……やっぱり男の子だからかしら。攻撃力はもう私たちより上かも。防御を覚えたら、本当に手がつけられなくなりそう」

「そんなもんっすかねぇ……全然実感ないっす」


 深は苦笑した。


「それより、すいません。支えてもらっちゃって」

「気にしないの」


 そんな会話をしながら、2人はエレベーターへ乗り込む。


「治療室で少し寝ていくといいわ。あそこ24時間使えるから」

「それはありがたいっす……」



 やがて2人は『治療室』と書かれた部屋へ到着した。

 だがドアが開いた瞬間、深は思わず足を止める。


「……え? 病院?」


 そこに並んでいたのは、本格的な医療設備だった。

 大型モニター。

 処置用ベッド。

 各種医療機器。

 もはや“治療室”というより、普通に救急外来である。


 だが春は慣れた様子で中へ入り、大きな声を出した。


「すみませーん! 戦闘術士の怪我お願いしまーす!」


 すると医師と看護師たちがすぐに近づいてくる。


「こちらの子です。肘を怪我しちゃって」

「男性の患者さんは珍しいですね」


 やはりここでもその反応らしい。


「はい。どうやらレアキャラみたいっす」


 深が適当に返すと、医師が少し笑った。


「ちょっと腕見せて。動かせますか?」


 深は右腕を差し出し、肘を曲げてみせる。


「うん。折れてはなさそうですね。レントゲンはいらないかな。他に痛いところは?」

「そういえばお腹蹴られてたわよね?」


 春が思い出したように言う。


「腹はもう平気っす」


 深が腹をさすりながら答えると、医師がカルテを書き込みながら頷いた。


「じゃあ肘の治療だけで大丈夫そうですね。ここは初めてですよね? あとでカルテ用の書類お願いします」

「はい。あと、ここでちょっと休んでっていいっすか?」

「この子、今まともに歩けないんです。今日の訓練かなり激しかったので」


 春が補足すると、医師は苦笑した。


「もちろん大丈夫ですよ。点滴は?」

「そこまでは大丈夫っす。ちょっと眠いだけなんで」

「では処置後にベッドへ案内しますね」


 その後、深は肘へ丁寧に包帯を巻かれ、看護師に連れられてベッドへ移動した。


「じゃあ私戻るわね。お大事に!」

「あざっした。助かりました」


 春が手を振りながら部屋を出ていく。

 それを見送ったあと、深はベッドの上でもぞもぞと動き、一番楽な姿勢を探した。


(……眠っ……)


 異常なほど眠い。

 まぶたが重い。


(こういうもんなのか……?)


 疑問を抱いたまま、深は数分もしないうちに深い眠りへ落ちていった。





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