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その後、深と花南はエレベーターで地下へ降りた。
訓練場と呼ばれる部屋は、地下とは思えないほど広い。まるで体育館のような空間だった。
しかし、2人が中に入っても人影はない。
「あっ、あっちだ。ほら、行くよ!」
花南はガラス越しに見える隣のウェイトトレーニング室を指差した。
深も後について行く。
その部屋には春、瞬、礼子の3人のほかにも20名近い女性たちがいた。談笑したり、ウェイトトレーニングをしたりしている者もいるが、むしろ疲れ果てて動けずに休んでいる人間のほうが多い。
ウェイト室のドアを開け、花南が中を見渡す。
「いたいたッ!」
その声に10人ほどが振り返ったが、花南は気にせず奥へ向かっていく。深も適当に会釈しながら後を追った。
部屋の一番奥にいた3人組へ近づくと、花南が疲れ切った様子の彼女たちに声をかける。
「ねぇねぇ、みんな! 昨日言ってた子、早速連れてきちゃった!」
「うそ、早ッ! でもほんとに男の子なんだね」
瞬がまじまじと深を見つめる。
その視線に気まずさを覚えながら、深は花南へ声をかけた。
「えーと……この方々は?」
「この人たちが私の班のメンバー。つまり、深君と同じ班のメンバーだよ。この人が渡部春さん」
黒いロングヘアーの女性が軽く会釈した。
「よろしくね、深君」
深も会釈を返す。
「こちらが佐久間瞬さん」
「よろしく」
茶髪ショートの女性が軽く手を挙げた。
深も再び頭を下げる。
「この2人は年上だよ。年齢は言わないでおくから、自分で聞き出してね」
瞬が花南のすねを軽く蹴り、その場に笑いが起こった。
そして花南が最後の1人を指差す。
「で、この子が新山礼子ちゃん。歳いくつだっけ?」
「21ですぅ。よろしくお願いしますぅ」
礼子が深々と頭を下げ、深も慌てて頭を下げ返した。
「じゃあ、自分のひとつ下になりますね。よろしくお願いします」
そして花南が続ける。
「とりあえず、何かあったらこの人たちに聞く感じでお願いね。あと、この人たちは……」
花南は腕を回しながら周囲を示した。
そこには、彼らを囲むように10代から20代と思われる女性たちが興味津々といった様子で立っている。
深も振り返った。
「しばらく一緒にカリキュラムをこなすメンバー。私の担当じゃないけど、もしかしたらそのうち任務で合同チーム組むかもね」
女性たちに、深も軽く頭を下げて応じる。
その後、年齢や住んでいる場所、彼女の有無など他愛ない質問が飛び交い、しばらくすると多くの女性たちは元の場所へ戻っていった。
頃合いを見て、花南が3人に尋ねる。
「んでね、明日からなんだけど、どうしよう。深君っていきなり合流なのかな? 誰か長谷川さんに聞いた?」
ベンチプレス台にもたれながら、春が思い出すように答えた。
「あっ、なんか午前中はしばらく別カリキュラムらしいわよ。講習とかじゃない?
でも午後はまだ未定って言ってた。本人に聞いてみたら? まだいるんじゃないかな」
「そうですね。じゃ、長谷川さんのとこ行ってきます。みんなはもう帰るんですか?」
今度は瞬が答える。
Tシャツから見える両腕にはところどころ青あざができていたが、訓練によるものだろうと深は何も聞かないことにした。
「うん。休憩終わり。やっと動けそう……今日も2時間くらいで全滅だったのよ。私たちさっきまで完全にダウンしてたし。長谷川さんは相変わらずピンピンしてるし。ほんと自信なくすって」
「そうね。深君にも会えたし、帰って寝るとするわ。もう疲労困憊」
春が落ち着いた声で続ける。
その間に、瞬がへたり込んでいる礼子の腕を引っ張った。
「ほらっ、礼子。動ける?」
「はい……なんとか……」
礼子がよろよろと立ち上がる。
その様子を見ながら、深はどれほど過酷な訓練なのかと不安になった。
腕中にあざを作っている瞬も含め、詳しく話を聞きたい気持ちはあったが、花南が別れの挨拶を始めたため、深もそれに合わせてウェイト室を後にした。
「ね? いい人たちでしょ?」
部屋を出ると、花南が歩きながら尋ねる。
「まぁね。なんとかやっていけそうだよ。次は? その長谷川さんって人?」
「うん。新人育成トレーニングの担当官の人。さっきの人たちをあそこまでへとへとにさせた人だよ。でも見たらびっくりするよ。すごい綺麗な人なんだから」
深は軽く笑った。
「期待しとくよ」




