Lesson80 『劣情に大義名分を与え得る者は万人から支持される。』
ケーニッヒ領でモンスター駆除を請け負っているグッドマンと軽く打ち合わせ。
執事氏への謝辞のみを伝言して馬車を進ませる。
三叉路でドライゼ一家の馬車と合流し王国を目指す。
一瞬の滞在であったが、帝国側にしたって帝国の女衒を長逗留させたくないだろう。
往路で世話になった店舗や役人に深々と黙礼しながら王国への道を進む。
ドライゼ一家の先導の甲斐あって、関所でのチェックも形式的なもので済んだ。
「おお、ドライゼ親分。
いよいよ遠征軍需にもガッツリ喰い込むんだな。」
「お久しぶりです。
軍曹殿。」
「どうせなら関所支店も開業してくれよー(笑)」
「ははは、民生部の皆様に提案しておきます。」
やはり娼館を経営しているだけあって顔が利くようだ。
現場の下士官や兵卒と面識があるのは大きいようで、勝手に向こうが融通を効かせてくれる場面を何度か見かける。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
途中、王国の国境防衛柵跡を越えたのでドライゼに先導を代わろうかと、何気なく提案する。
「いや!
もうグリーンタウンまでが帝国領だから!」
こちらに領土主張の意図は無かったのだが、彼にはそう聞こえたようである。
土地勘の無いであろう道をズンズンと先行していく。
参ったなー。
俺ああいう頑質なタイプに弱いんだよなー。
「ウォーカー。」
『あ、どうも。』
小休止ポイントでドライゼがやって来る。
「さっきは感情的になって済まなかった。
改善を約束する。」
『あ、いえ。
こちらこそ紛らわしい物言いをしてしまって申し訳ありませんでした。』
話はそれだけ。
道中は他に何事もなく拍子抜けする程あっさりとグリーンタウンに到着した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、ここからは女共が好き勝手するターンなので、更に語る意欲が沸かない。
【戦没者供養臨時神殿】
明らかに妓楼のノボリなのだが、そう記されているらしい。
クラークだのドライゼの妹だのが嬉しそうな顔で売春用テントを飾り付けている。
要は、神事の体を取って売春させるだけの話。
いつの間に用意したのかドライゼ一家の娼婦達も巫女姿に着替えている。
「テッドさん♪
これは性産業などではありません。
神聖教の神事なんです♪」
いや、売春だろ。
とは思うのだが娼婦達がノリノリなので口を挟む意欲が湧いてくれない。
要は眼前の売春テントは性行為の為の施設ではなく、巫女が兵士達にカウンセリングを行う準医療施設という屁理屈。
(PTSD緩和やら戦没者慰霊とかそういうの。)
兵士達が支払うのは売春代ではなく、戦友達への供養料とのこと。
『…。』
「これなら兵隊さん達の体面も守られますし、何より女性の心理的負担も和らぎます♪」
詭弁もいいところなのだが、カスタマーであるケーニッヒ卿がこのタテマエを喜んでしまっているからな。
各部隊長も「これなら安心して部下達に推奨出来る」と胸を撫で下ろしてる。
「どうです、テッドさん♪」
『あ、いえ。
流石だなー、と思って見てました。』
「流石なのはテッドさんですよ。
この企画はテッドさんの信用を切り売りしているだけですから♡」
まあな。
クラークの言葉は大袈裟だが一理ある。
確かに俺が背後に立っているが故の説得力は厳然として存在するのだ。
兵士達は全員、黒鍬者として戦死者の埋葬を続けて来た俺を知っている。
知っているからこそ、このコジツケ染みた建前が通用してしまう。
娼婦に花代を支払うのは反社に資金を流しているようで後ろめたいが、巫女に供養料を寄付をするのならば戦士としての矜持も保てる。
加えて、黒鍬の俺にカネが流れたところで、それは埋葬経費への支援という事になる。
軍隊としての整合性が取れてしまったのだ。
「ウォーカー君!
素晴らしいよ!
いや! キミを指名して正解だった!
それも大正解だ!
皇帝陛下も必ずやお喜びになるだろう!」
『あ、いえ恐縮です。
考案者は彼女達ですので、どうか褒めてやって下さい。』
眼下には巫女服を着て芝居掛かった祈祷をとっている娼婦達。
…どう見てもアイツラおちょくってるよなー。
ケーニッヒ卿は苦笑して首を振った。
後ほど下士官名義でチップが贈られるとのこと。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は不快だが、皆が喜んでいるので文句が言えない。
兵士は慰霊の大義の元に性欲が処理出来るので満足。
将校は気の立っていた兵士を鎮静化出来て満足。
娼婦は軍人にチヤホヤされて満足。
壁の向こうから覗いている王国兵は王国女が穢されずに満足。
「慰霊でーす♪」
「供養でーす♪」
「カウンセリングでーす♪」
「宗教行為でーす♪」
淫売共がテントの前で無遠慮に笑いながら客引きをしていた。
流石の巫女装束も性根までは覆えないようだ。
「「「「だから遊んで行って下さーい♪」」」」
兵士達は満面の笑みで行列を作る。
まあな、気持ちは分かるよ。
敵地に駐屯なんて生きた心地がしないだろうからな。
どこかで息抜きをしなければ精神が持たないのだろう。
「お姉さんおっぱい大きいねぇ♪
何カップ?」
「Fでーす♥
遊んでってくださーい♪」
「本当w?
盛ってないw?」
「神に誓ってFカップでーすww」
「「ギャハハハハハwwwww」」
…嘆かわしい。
タテマエとは言え慰霊だというのに。
「キャハハハwww」
「巫女服蒸れるよねーww」
「客単価上がるからいいんじゃんww」
俺が憤りを噛み殺しながら歩いていると、こともあろうに淫売共が慰霊碑の台座に腰掛けて噛み煙草をクチャクチャとやっているのを見かける。
どうやら勝手に休憩区画的に使っているらしかった。
『…。(プルプル)』
「あ、王国側の店長さんだーw」
「給料あげてくださーいww」
「店長さん、やっほーww」
『…。(プルプル)』
「あれー? 聞こえてない?」
「店長さんも
カウンセリング受けますかーww」
「安くしとくよーww」
『キサマらぁぁッ!!
神聖なる慰霊碑に腰掛けるとは何事かァッ!!!
その腐った性根を英霊の皆様に詫びよッ!!!』
「「「ギャハハ、店長が怒ったーwww」」」
淫売共が逃げ去った後には地面に吐き捨てられた無数の噛み煙草だけが残った。
俺は大きく溜息を吐いてから、無言で慰霊碑を掃き清める。
途中、ドライゼの妹がやって来たので、慰霊碑を粗末に扱わせないように厳重に抗議。
日が暮れかけていたが、砂埃が溜まっていたので隅々まで拭き清めた。
不快な嬌声は、こんな離れた場所にまで響き続けた。
断じて認めたくはないのだが、これがグリーンタウン正常化会談の端緒となった。
Lesson80 『劣情に大義名分を与え得る者は万人から支持される。』
【名前】
テッド・ウォーカー
【職業】
女衒
冒険者
神聖教団信者総代
フカヒレの人
ウナギの人
黒鍬者
【スキル】
食材鑑定
高速学習
ウナギ捕獲
【資産】
銀貨19枚
鉄貨62枚
【所持品】
折り畳み釣り竿
簡易テント
大型リュック
万能ナイフ
ポートフォリオ
騎士用手袋
トラバサミ
ハンモック
業務用肉醤製造セット
荷馬車
討伐チップ (ウナギ)
ゴブリン漁網
ブンゴロド通行証
ドワーフ式の軍用テント
グリーン図書館蔵書 (2万2918冊)
帝国通行証
身分証明証
【生産可能品目】
山椒粉
フカヒレ
ラー油
肉醤
ジャガイモ (少量)
ウナ肝
マーガリン
墓穴
【ポートフォリオ】
ホーンラビット
スライム
サンドシャーク
猪
山椒
ドブネズミ
薬草概要
蝶類概要
風琴鳥
ドワーフ
蛇モグラ
廃棄物処理法
ウナギ
ジャム
バター
共和制
【仲間】
ジェフリー・フィッシャー (漁師)
キース・ポーター (運送業)
レオナ・レオナール (受付嬢)
グスタフ・グリルパルツァー (狩人)
トーマス・トンプソン (バディ)
ヘレン・ヘイスティング (冒険者)
ノリス・ノーチラス (修理屋)
ハンス・ハックマン (農夫)
マーガレット・リンドバーグ (油脂製品製造業)
グレッグ・グッドマン (支部長)
テルマ・テイマー (飼育員)
^7@7@:;++ (先導者)
ブルース・ボブソン (漬物職人)
クロード・クーパー (田舎支部長)
ケヴィン・コリンズ (宿屋の入婿)
ドミニク・ドライゼ (風俗店経営)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(あとがき)
最後までお読みいただきありがとうございました。
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ご安全に。




