Lesson77 『王侯将相いずくんぞ種あらんや。』
王国が悪い国で帝国が良い国、などと子供染みた物の見方をするつもりはない。
グリーンタウンの占領軍たる帝国は寛治姿勢をPRした方が得なのでそうしているだけの話。
理由はシンプル。
この街を長らく実効支配していたのが王国であり、住んでいるのは王国人ばかりだから。
なので王国がグリーンタウンを再支配するのはそこまで難しくない。
何だかんだで、この一帯は王国人の文化圏なのだから、有無を言わささず占領すれば、即座に王国の辺境都市としての日常が戻る。
なので王国はグリーンタウンを奪還すれば元の重税を課すつもりだし、その意図を取り繕う姿勢すら見せない。
逆に帝国は領有権主張をしながらも本心ではグリーンタウンを自分たちの領土だと認識していない。
なのでその住民も徴税対象ではなく調略対象に過ぎず、王国を戦略的に封じる事が出来るのであれば税率なんぞ高くても安くてもどちらでも構わないと考えている。
この戦局から俺が学んだ真理は極めてシンプル。
税率は、いや待遇なんて時価なのだ。
その時その時の強者の都合によってもっともらしい額が提示されるが、そこに根拠も正当性もない。
こんな簡単な仕組みを理解するのに30年以上掛けてしまったのだから、俺は余程愚鈍な男なのだろう。
…出遅れた分、元を取らなきゃな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ケーニッヒ卿。
お疲れ様です。』
「おお、ウォーカー君。
そっちこそ昨日の合同葬儀お疲れ様。」
結局、膨大な戦没者の遺骸をそれぞれの故郷に送り返す余裕は王国にも帝国にもなく、全ての遺骸はこの地にて火葬されドッグタグだけが遺族に返送されることが決まった。
俺が提唱した神聖教の様式(実はクラークが3秒で考案したものだ)での慰霊祈祷は案の定どちら陣営からも反対されなかった。
帝国としては王国式の葬送さえ阻止すれば満足だったし、王国としては帝国式の鎮魂さえ却下出来ればそれで良かったからだ。
何より偉い人達がこの地に漂う死臭に耐えられなくなっていた。
なので埋葬実務を一身に担っていた俺の提案が自然に通ったのだ。
『停戦協定は本当に結ばれるんですか?』
「水面下ではもう話は付いてる。
ただ、先方の面子を立てて実際に調印されるのは半年後だ。
王国さんとしては開いたばかりの戦端をすぐに閉じるのは体面が悪いそうだ。」
『ああ、偉い人はそこを気にするんですね。』
「まあ、専制国家なんて体面ありきだからね。
それは我が国も王国さんも大した違いはない。」
休戦協定破りの奇襲が失敗した段階で、王国の戦略構想は全て破綻している。
対帝国戦に配置されていた将官が多く討ち死にし合衆国・連邦と交戦状態に入った今、グリーンタウン奪還戦に割くリソースは残っていない。
これはまだ確報では無いのだが、王国軍は合衆国と長年帰属を争ってきたバルバリ峡谷攻略戦に失敗し甚大な被害を出したと噂されている。
「だから王国軍はレッドタウンまで撤兵する。
我が国も国境線まで後退する。」
『?
じゃあグリーンタウンはどうなるのですか?』
「現時点ではどうもしないよ。
書類上は戦争地帯なんだから。」
『な、なるほど。』
「ただ、皇帝陛下は王国軍の駐屯だけは絶対に阻止するつもりでいる。」
だろうな。
そもそも両国間の緊張は、この辺境の地に王国側がグリーンタウンを築城したことが原因である。
それくらい、ここを侵攻起点にされると帝国にとって辛い。
「無論、王国側だって我が軍に対して即時撤兵を強硬に主張し続けている。」
そりゃあそうだろう。
ここからレッドタウンまではあまりに近すぎる。
仮に帝国軍がグリーンタウンに駐屯してしまったら、王国はレッドタウンの防衛に数万の大軍を張り付けざるを得なくなるからな。
「不遜にもブンゴロドがこの街の管理を申し出たが、当然却下。」
マジかー。
最長老攻めるなー。
絶対に逆効果だよな。
「ドワーフ贔屓の皇帝陛下もこの厚顔な提案にはご立腹されたようでな。
ブンゴロドの租借地の隣の山脈を丸々ゴブリンの居留地として承認された。
ふふふ、ドワーフ共の慌てた表情ww
今思い返しても笑いが止まらんなww」
どうやら俺が提出したゴブリン情報はこういう形で活かされたようだ。
ブンゴロドは日頃から口癖のように「人間種以外にも目を向けるべきだ。」と強く主張している。
(当然自分達は人間種に全く目を向けるつもりがないのだが)
皇帝はそれを逆手に取る形でゴブリンという第三極を強引に持ち出した。
ブンゴロドは尊重するが、尊重されるのが自分達だけとは思わないように。
如何にもあの青年皇帝らしいスマートな牽制である。
『え?
あの河が国境線になるんですか?』
「いやいや、あの河が本来の国境だよ。
王国さんが条約を破棄するまではずっとそうだったんだ。
キミは大昔の話だというかも知れないけど。」
参ったな。
戦争というのは恐ろしいもので、国境すら簡単に書き換えてしまう。
俺はまさしくあの河の両岸に点在する村々を活動拠点にしていたのだが…
さて、どうするかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
グリーンタウンの城壁から王国軍の撤兵を見守る。
ロキ爺さんの所属氏族であるニヴル族ドワーフが完全に寝返ってしまったらしく、合衆国戦線がとんでもない苦境に立たされているらしい。
(バルバリ峡谷における大敗の原因である。)
なので去り行く王国軍は極めて足早。
1個師団のみをグリーンタウンから1㌔離れた地点に駐屯させて2個中隊のみを監視部隊として送り込むとのこと。
秘密協定により同数の部隊しか残せないので、帝国軍もマイヤー陸軍大佐の師団のみを南方1㌔地点に残して撤兵する事となった。
無事に停戦条約が締結されれば、城外に陣を張る王国帝国の計2個師団が【平和維持軍】という名目でグリーンタウンに駐屯する算段とのこと。
どう転ぶか分からないので、大半の者が河沿いの村か瓢箪池に戻っていく。
グリーンタウン内に不動産を保有している者すらである。
『ケヴィンさん。
宿、本当に畳んじゃうんですか?』
「畳みはしないですよ。
単に休業期間に入るだけで。」
そう言って最強冒険者のケヴィン・コリンズは胡桃亭のドアに掛けてある胡桃のイミテーションを丁寧に外した。
そして馬車の中でキーキーと喚く妻娘を宥めながら瓢箪池に戻る。
商売をしている者ほど【平和維持軍】などという怪しげな体制を信用していないのだ。
「で、師匠はどうするんですか?」
『んー?
ケーニッヒ卿が所領に帰るから、人面キノコ狩りでも手伝うよ。』
「帝国人になっちゃうんですか?」
『どうだろ。
そもそも奴隷階級の私は国家から王国人と認識されてなかったような気もするしね。
きっと最初から王国人でも帝国人でも無かったんだよ。
私の故郷は旅の空だけさ。』
「冒険者って師匠の天職かも知れませんね。」
『そりゃあ、私の考えた職業だからねえ。』
弟子ととりとめのない話をしながらロバのブラッシング。
車輪と車軸も仲間に頼んで最新の物に替えた。
この機動力さえあれば、帝国人にも王国人にもならずに済む。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よーし黒鍬共!
グリーンタウンの北半分は我ら王国軍が統括する事に決まった!
直ちに駐屯場を整備せよ!」
それが乗り込んできた王国将校の第一声。
階級は少佐、恐らく監視中隊の隊長。
武装からして市街戦特化の特殊部隊である。
『あ、どうも。
整備と言われても、みんな各地に散ってしまいましたよ?』
「それを何とかするのがキサマらの仕事だろうが!
早く人夫を集めてこんか!」
『あ、はい、分かりました。
それで日当は幾ら程で募集を掛ければいいですか?』
「え?」
『え?』
「いやいや。
我々は帝国の不当占拠からキサマらを解放してやろうとしているのだぞ?」
『え?』
「え?」
どうやら彼は我々を無償労働させるつもりらしい。
と言うよりも、軍が声を掛ければ労働者は喜んで参上するものだと考えているフシがある。
尤も、彼に対して憤りはない。
顔つきからして軍隊以外は知らないタイプなのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次にグリーンタウンの南半分を管轄しているケーニッヒ卿を訪れる。
諸々の引継ぎが終わるまでは、彼は帝都にも所領にも帰れない。
「え?
人夫の需要?
勿論あるよ。
ちょっとした運搬仕事からゴミ収集まで頼みたい事は山程あるからね。」
『日当とかは、どうなりますか?』
「えーっとねぇ。
今、マニュアルを読むね。
雑用夫で銀貨1日20枚。
荷馬を持ち込んでくれたら10枚の車両手当を加算。
厩舎はこちらで割り当てるけど、飼い葉は自己負担。
あ、但し王国銀貨での支給は不可だから、その点は理解してね。」
『なるほどー。』
ケーニッヒ卿は部下を呼び付けて、書類を読み合わせる。
「とりあえず仲介はウォーカー君に任せるよ。
雑用夫30人、清掃員を20人、炊き出しの調理婦を20人募集かけて。」
『あ、はい。』
「酌婦や娼婦の類を斡旋してくれたら礼金を弾むけど…」
『スミマセン。
女性に縁のない人生だったので、そういう事には疎くて…』
「ああ、ゴメンゴメン。
前に苦手って言ってたよね。
忘れてくれて構わないから。」
『お役に立てずに恐縮です。』
「話を戻すね。
それと荷馬車を30台、用意出来る?
勿論御者付きで。」
『ええ、その程度なら。』
「Good!
娼婦集めが得意な軽薄者よりも余っ程信用出来る。
じゃあ申し訳ないけど、早速着手して。」
「あ、はい。」
冒険者の宿に戻った俺はクラークに頼んで両国の依頼を掲示板に張り出す。
そして俺が戻って来た事を知った冒険者達に帝国本部への推薦状と身元保証証を渡していく。
「ウォーカー君。
清掃の仕事ってまだ残ってる?」
『ああ、すみません。
もう締め切っちゃいました。』
「マジかー。
困ったなー。
他に何か仕事残ってる?」
『いやー、申し訳ないんですけど…
王国案件しか残って無くて。』
「…あのさ、日当欄が空白なんだけど。
ぶっちゃけ幾らなの?」
『いやー、そもそも先方に報酬を払う意図があるかすら不明で。』
「マジかー。
タダ働きさせられるかもってこと?」
『ええ、しかも監督してるのが特殊部隊の人達で…
アタリがキツいんですよね。
だから、近づかない方が無難かと。』
「何か仕事ないの?」
『あ、グリーンタウンから離れちゃうんですけど。
今、帝国駐屯部隊の責任者を務めておられるケーニッヒ伯爵が領内でのモンスター退治要員を募集しています。』
「おお、マジ!??
掃除なんかより、そっちの方がいいよ!!
推薦状発行してよ!
俺の腕前はウォーカー君も知ってるでしょ?」
『ええ、それは大丈夫なんですけど。
帝国領ですよ?
多分泊まりになると思うんですけど。』
「ははは、今年に入ってから俺達全員野営してるじゃんw」
「そっか、確かにそうですよね。」
そんな会話があったので、翌日に討伐希望者を集めてケーニッヒ卿に挨拶させる。
思った以上に喜んでくれたので、本当に困っていたらしい。
「おお!!!
ウォーカー君!!
キミ、凄いね!!
こんなにも人数を集めれるんだ!!」
『あ、いえ。
凄いのは私ではなく、皆さんおひとりおひとりです。』
「えっと…
人面キノコと戦闘になると思うけど大丈夫?」
『ええ、その点は問題ありません。
彼らは対キノコ戦の経験が豊富なので。』
「おお、頼もしい!!
あ! 後だしになってしまって申し訳ないんだけど。
この季節だと飛びモグラが活性化していると思う。」
『承知しました。
仲間にモグラ退治の名人がいるので、討伐チームに誘ってみます。』
「うおー! うおー!
キミに頼んで正解だった!!」
『えっと、彼らの日当だけ補償してやって欲しいんですけど。
我々、帝国に入った事がないので、その点だけ不安で。』
「うむ!
それでは半金をキミに預けるのはどうだろう?
これなら皆も安心感があると思うが。
無論、領地には家令のセバスチャンを同行させるし、滞在日数の上限も決めよう。
2週間、2週間経ったら帰還は自由というのはどうだろう?
無論、がっつり稼ぎたいのなら延長申請を出して貰っても大丈夫だ。」
仲間達に尋ねると大いに乗り気だったようなので、家令セバスチャン氏と契約の詳細を詰める。
結果、翌日には馬車20台の冒険者パーティーをケーニッヒ伯爵領に送り込める体制が整う。
リーダーには支部長を務めているグレッグ・グッドマンを指名した。
彼は人相柔和でコミュ力があり場を和ませる人徳の持ち主である。
グッドマン支部長ならば問題は起こすまい。
セバスチャン氏も最初は【冒険者】という聞き慣れない職業の者を領地に入れることに警戒していたが、グッドマンと挨拶を交わすとようやく安堵の表情を見せた。
今ではすっかり打ち解けて冒険者パーティーとケーニッヒ家の郎党団は談笑している。
「セバスチャン、冒険者の皆さんに粗相のないようにな。」
「畏まりました御屋形様。」
「よーし、ウォーカー君。
彼らを見送ったら廃屋の撤去計画だけ一緒に練らせてくれ。」
『はい、承知しました。』
そこまでは円滑に話が進んでいた。
グリーンタウンの城門から出立する馬車を見送り終わったら、そのまま帝国軍本営に戻り配給物資を貰う予定もあった。
「その車列待てィッ!!!」
不意の怒号だったので、数頭の馬が驚いて身体をよじった程だった。
「帝国さん!!!
一点抗議宜しいか!!」
驚いた俺達が振り返ると城門の脇から王国軍の一団が駆け寄って来る所だった。
抜刀こそしていないものの、全員が鯉口に指を掛けていた。
「これはこれは王国さん。
何か御用でしょうか?」
「何か御用ではありませんよ!!
貴国ッ!!
我が国の労働者を勝手に徴用しているでしょう!!!
そういう卑劣な行為は控えて頂きたい!!!」
王国兵達は憤怒の形相で馬車の前に立ち塞がる。
冒険者達が《判断求む》とハンドサインを送ってきたが、強行させる訳にも行かないので待機させる。
「いやいや、徴用とは人聞きが悪い。
我が国は国際標準の賃金を貴国民に支払って仕事を発注しております。」
「え?」
「え?」
【賃金】という単語を聞いた瞬間に王国兵達は拍子抜けした顔つきになる。
「…。」
「…。」
「払ってるんですか?」
「いや、流石に他国民をタダ働きさせる訳にはいかないでしょう。」
「…え、ええ。
我が軍も他国民には軍票(但し換金方法は不明)を発行しておりますよ。
ですが、彼らは王国人だ。
使役するなら我が軍に優先権がある!」
「いやいや、もう労働契約を結んでしまいましたし。」
「では、まだ労働契約を結んでいない人夫は我々に使用権があると言うことですな?」
「いやいや、それは協定には盛り込まれていないでしょう。
突然言われても困りますよ。」
「困っているのは我々の方だ!!
貴国が人夫を盗ったからゴミ処理すらままならんのだ!!」
大体事情が見えて来た。
平和維持軍の上限は王国・帝国がそれぞれ1個師団ずつという取り決め。
グリーンタウンに入城出来るのは互いに2個中隊まで。
つまり街を数百人ずつが二分して支配している現状。
帝国軍は輜重隊をちゃんと残しているので生活が成り立つのだが、王国軍は全員を純粋な戦闘員で編成しているらしい。
どうやら生活支援に関してはグリーンタウンの住民を徴用することを前提としていたらしい。
だが、残っていた住民は俺が各地に疎開させた為に、王国軍は労働力を得られずに困っているのだ。
まあ、そりゃあそうなるよな。
この近辺の余剰労働力=冒険者だからな。
別にそういうルールがある訳ではないのだが、何となく俺を通してしか仕事を請けない風潮になっている。
これは俺に人徳があるとかそういう問題ではなく、雇用主から身を守る為に自然にそうなったのだ。
そもそも雇用サイドというのは労働者を平然と騙す生き物である。
虚偽の労働条件、払い渋られる賃金、横行するパワハラやセクハラ。
それらの悪徳から労働者が個々に身を守るのは非常な困難を伴う。
だが冒険者として団結していれば、雇用サイドが横暴を働きにくい。
少しでも不正があれば俺達はすぐに情報共有し派遣を見合わせるからだ。
結果、きちんと約束の報酬を支払う雇用主が選別されて残っている状態。
逆に冒険者の宿が契約を打ち切った事業者は粗悪な者ばかりだ。
「おい!
黒鍬!!」
『あ、はい。』
「キサマ!!
早く手の空いている者を集めてこんか!!」
『そうは仰いましても。』
「キサマは王国人だろう!!!
だったら王国軍に従うことこそ道理ッ!!
怠けるようなら縛り首にするぞ!!」
…やれやれ、この手だけは使いたくなかったがな。
俺は無言で荷馬車に貼ってあるステッカーを指差す。
「ん?
何だそれは…
あッ!!」
王国将校は目を見開き唇を噛む。
『私も事情はよく分からないのですが、新しい条約が結ばれて国境線が変わったんですよね?』
「…クッ。」
『それで私の住んでいた辺りはブンゴロド氏族の皆さんの受け持ち区域に入ってしまったようなので。』
「ば、バカな…」
『ええ、当事者の我々が一番驚いております。
ただ国と国が決めたことに私如きが口を挟む訳には行きませんので…
ブンゴロドの皆さんにミカジメ料を納めました。』
「…あり得ん、あってはならんことだ。」
『実は我々は今回の戦争の経緯が全く分からないのです。
何せ突然始まって突然終わったものですから。』
「…。」
『…いずれにせよ、私共には発言権がありません。
なので帝国やブンゴロドの方と取り決めて下さい。』
俺は王国兵達に殊更に深く頭を下げるとセバスチャン氏に《Go!》とハンドサインを送った。
数名の王国兵が尚も制止しようとするが、「これなるはルドルフ・フォン・ケーニッヒ伯爵閣下の車列なるぞ!!」とセバスチャン氏が一喝すると道を開けた。
そりゃあね、名乗りを受けた上で道を塞いだらその時点で停戦協定破棄だからね。
「おう!!
間違いねぇ。
ワシらがコイツラのケツモチさ!!!
このステッカーはブンゴロドの代紋よ!!!」
気は進まなかったが、ブンゴロドを呼んで冒険者との関係を証明する。
面と向かって宣言されてしまった以上、王国兵は俺達には簡単に手を出せなくなった。
王国にドワーフと揉める余裕があれば共同統治なんて絶対に受け入れてないだろうからな。
『では、我々はこれで。』
俺は王国兵に一礼してから皆を川向うに帰し、ケーニッヒ卿と共に本営に向かった。
「大丈夫?
私達が撤兵したらウォーカー君が仕返しされるんじゃない?
ヤバくなったら私の領地に亡命してきなよ。」
『ありがとうございます。
ただ、所帯が大きくなり過ぎましたので、亡命は迷惑が掛かってしまいます。』
馬車1000台と冗談めかして言うとケーニッヒが「キャーw」と笑う。
問題は冗談ではない事なんだよなあ。
敵国人が1000台押し掛けたら、例え敵意がなくても侵略になっちゃうからね。
『私も報復が怖いので王国側に撤兵して貰う事にします。』
「え?
そんな事出来るの?」
『出来なきゃ吊るされるだけなので、打てる手を頑張って思案します。』
再度ケーニッヒが「キャーw」と笑う。
いやいや、俺にとっては笑い事ではないんだけどな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まあ、所詮俺は奴隷身分だ。
打てる手なんて殆どない。
出来ることと言えば、王国軍に使役されていた労役夫達をこっそり瓢箪池に逃がすことだけである。
幸い、ずっと底辺仕事をしていた俺は清掃員や道路人夫や車夫や汲み取り人との面識が誰よりも多かった。
例え俺が知らなくても、相手はテッド・ウォーカーの存在を知っていてくれた。
それも、信に足る者として。
『みんな聞いてくれ。
日常が苦しければ苦しいほど、逃げ場がないように感じるよな。
俺もそうだった!!
自分は一生この地獄で朽ち果てるものだと思い込まされていた!!
でも、それは違う。
金持ちや権力者に植え付けられた間違った認識だ。
俺達は自分でも思っている以上に遠くまで行ける。
その気になればどこにだって向かう事が出来る!!
意志は全ての人間に生まれながら備わっている!
居場所は自分で選べるんだ!!
俺達はどこにだって行ける!!!
何にでも成れる!!!』
王国軍がレッドタウン周辺で徴用し連行してきた労役夫は55名。
その全員を同志として迎え入れた。
夜陰に紛れて全員で奔った。
何度も転びながら全員で冷たい河を押し渡った。
Lesson77 『王侯将相いずくんぞ種あらんや』
【名前】
テッド・ウォーカー
【職業】
神聖教団信者総代
フカヒレの人
黒鍬者
冒険者
ウナギの人
【スキル】
食材鑑定
高速学習
ウナギ捕獲
【資産】
銀貨21枚
鉄貨62枚
【所持品】
折り畳み釣り竿
簡易テント
大型リュック
万能ナイフ
ポートフォリオ
騎士用手袋
トラバサミ
ハンモック
業務用肉醤製造セット
荷馬車
討伐チップ (ウナギ)
ゴブリン漁網
ブンゴロド通行証
ドワーフ式の軍用テント
グリーン図書館蔵書 (2万2918冊)
帝国通行証
【生産可能品目】
山椒粉
フカヒレ
ラー油
肉醤
ジャガイモ (少量)
ウナ肝
マーガリン
墓穴
【ポートフォリオ】
ホーンラビット
スライム
サンドシャーク
猪
山椒
ドブネズミ
薬草概要
蝶類概要
風琴鳥
ドワーフ
蛇モグラ
廃棄物処理法
ウナギ
ジャム
バター
共和制
【仲間】
リコ・クラーク (司書)
ジェフリー・フィッシャー (漁師)
キース・ポーター (運送業)
レオナ・レオナール (受付嬢)
グスタフ・グリルパルツァー (狩人)
トーマス・トンプソン (バディ)
ヘレン・ヘイスティング (冒険者)
ノリス・ノーチラス (修理屋)
ハンス・ハックマン (農夫)
マーガレット・リンドバーグ (油脂製品製造業)
グレッグ・グッドマン (支部長)
テルマ・テイマー (飼育員)
^7@7@:;++ (先導者)
ブルース・ボブソン (漬物職人)
クロード・クーパー (田舎支部長)
ケヴィン・コリンズ (宿屋の入婿)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(あとがき)
最後までお読みいただきありがとうございました。
このLesson(教訓)が有意義であったと感じていただけましたら、冒険の道標としてページ下部の【☆☆☆☆☆】やブックマークで評価して下さると幸いです。
ご安全に。




