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ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第1部 【偉大なるキラー・ガール】

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9/30

9:共に『最強の街』を

三日間の潜伏を経て。

ゼノイに集められた私達は、酷く重たい事実を告げられた。


「え、ドレス着れないの……!?」

「君達の任を考えなさい。そんな動きづらく目立つ格好でどうするのかね」

「そ、そうですけどっ」


正直言ってかなり残念だ。「パーティに潜入する」なんて心躍る響きだから、期待したのに!


「君達は指名手配されているし、何せ可愛らしい容姿だ。ここは清楚な普段着にとどめてほしい」

「か、可愛い、って……!」

「あ、ありがとうございます……」

「チョロすぎだろお前ら」


そんなこんなで、今日はついに守護者打倒作戦が決行される。


ゼノイ曰く、グレイザーは大規模行事の前後には必ずパーティを催すそうだ。今回の場合は開戦前夜。主役はハンガーズ(飢えた群衆)なので、護衛は逆に手薄になる。


そして、万をゆうに超える軍勢を収容できるのは……


「ノーブルタワー、か」


作戦はシンプルだった。


私とザンはハンガーズに扮し、パーティに潜入。隙を見てグレイザーに会心の一撃を与え、拘束する。

その後、ゼノイを始めとする旧体制の主軸達が、改めて政権奪取を広く報じるのだ。無論抵抗が予想されるが、魔法使いの存在自体が抑止力となる。


とはいえ、そもそもグレイザーの警戒心は伊達ではないので……


「モイスティ嬢の役目は作戦の補助だ。君には、ハンガーズ全員の足止めをしてもらう」

「ええええええっっ!?」


当然すぎる反応だった。


「む、無理無理、無理ですっ! わたしって捨て駒!? そりゃあ最近は水魔法ばっかりですけど、わたしにも治療師になるって夢が……!!」

「落ち着きなさい、君は意外と早く喋れるのだね」


水流で会場内をかき回し、敵を一網打尽にする────それがエーネに与えられた役目。


もちろん私達は反対した。結局負傷者はいなかったが、先日水流で人を巻き込んだエーネは、激しく後悔していたのだ。それしかなかったと何度も言い聞かせ、ようやく少し立ち直ってくれた。

けれどゼノイは聞かない。加えて政権交代後は、自身が交渉役としてシュレッケンに乗り込むとまで言う。その覚悟にはもう、黙るしかなかった。


「とはいえ、やはり変装無しではいけないね」


出立直前、色とりどりのウィッグが手渡される。

着替えを済ませて集まった私達は、各々の全力コーデに感嘆の声を上げた。


「どう、ですか? この髪とか……ちょっと複雑な気分だけど」


エーネはいつもの白基調で、ややふんわりした統一感のある装いだ。意外にもウィッグは短髪で、中性的な出で立ちである。これはこれでありだ。


「何か慣れないな、これ」


一方のザンはやはりスタイリッシュ。黒ベースの服と茶髪のウィッグは、変わらず凛々しい印象ながら、しっかりイメチェン効果を発揮していた。


「……ねえ、私やっぱ、村娘感抜けてないよね?」


暖色系で固め、黒ウィッグを被った私は、くるりとその場で身を翻す。

安定の上着に動きやすさ重視のスカート。センスがいまいちな自分なりに考えたコーデだ。


「そんなことない、ちゃんと可愛いです」

「えへへ、ありがとうね。エーネもだよ」

「ザンもその髪、良いですね。あとフレイも……何か黒がしっくりきます。目が黒いからかな?」

「……わかる。結構わかるぞ、エーネ」

「な、何急に。私は、ザンは元の髪が好きかな。でも服はカッコいい!」

「何だろうな、褒められてるのかよくわからん」


他愛の無い会話を終えた私達は、玄関に立つ。

もう時は来てしまった。


「身の安全を最優先にしなさい。武運を」

「はい……!」


そうして出立した私達だったが、私は再度、一人で部屋に戻った。


「ダイナ嬢、忘れ物かね?」

「そうじゃなくて……大事な事を確かめにきたんです」


その場に立ち尽くしながら、真顔で訊く。



「グレイザーのこと。()()()()()()()()()()()()



ゼノイは絶句した。努めて手の震えを抑えながら、彼は頷いて。


「……作戦は伝えた。君達に……全てを委ねるよ」

「わかりました」


眼前で息絶える誰かを想像して、私は目を細めた。


「行ってきます」


今宵の天気はあいにくの雨。この雰囲気だと、否応にも思い出してしまう。



あの路地裏で聞いた────守護者と呼ばれる青年が、まだそうでなかった頃の、雄々しくも儚い物語を。



********



名も無き村に生まれた少年は、生まれながらのリーダーだった。

エルドや他の子供達を束ね、独り立ちに夢を馳せる────そんな、何の障害も無い日々。


しかし十二歳の頃、村は野盗の大規模な襲撃に遭う。

ゼノイ率いるビートグラウズの衛兵達が到着した頃には、ほとんどが手遅れだった。かろうじて生き延びたグレイザーとエルドは、街で保護される。


『今日からここが君達の家だ。私はゼノイ……この街の市長を勤めている』


新たなる門出。為政者の卵となった少年は、目覚ましい才覚を見せた。

故郷を悼むよりも、未来を見据えて励む毎日。その才はやがて、政界の重鎮達をも凌いでいく。


「そんな折だった。彼に、人生で最後の友人ができたのは」


少女の名はリアン。美しい銀髪を持つパン屋の娘で、出会いは二人が十四の時だった。

神童として時の人であったグレイザーを、何と彼女は知らなかったらしい。


『お前には市民たる自覚が足りねェ! そもそも政治全般に興味がねェとは……!』 

『な、何よ! あんただってパンの絶妙な焼き加減とか知らないでしょ!』

『あー、今日もですよゼノイさん』

『またパン屋で政治を説いているのか。エルド、仲介してくれないかね』

『いえ、面白いのでこのままにさせてください』


初めは険悪だった二人。しかしその関係は、緩やかに変容していく。


『おいリアン、何だこのパン』 

『新作よ。政務しか脳がないあんたに、うちの味を思い知らせてやろうと思って』

『はっ。それで開店前から待ってたっけわけか。ご苦労なこった』

『あんただってわざわざこんな時間に来てるでしょ!』


グレイザーにとって、リアンとの会話は間違いなく安らぎであった。でなければ、わざわざ文句を言いに足繁くパン屋に通いはしない。


『こんな夜更けに急に呼び出したかと思えば、星見だと?』

『ふっふっふ。今日はビートで星が一番綺麗に見える日よ? 行かない手はない!』

『オレは忙しいんだ。あと略すな』

『リアンさん、ボクも仕事が────』

『ああもうっ! 仕事人間ども!』


喧嘩相手から友へ。友から、無二の親友へ。


やがてリアンも、執務室に差し入れに来るようになった。空気が華やぎ、彼らは人生で最も幸福な時間を過ごす。


『リアン。お前、夢はあるか?』

『急ね。うちのパン屋をもっと大きくすることかな? あんたは?』

『オレにもある。誰もが誇れる、最強の街を作ることだ』


それはかねてからの、少年の願いだった。


『ふふっ、あんたらしい。でも誇りって言っても、政治はとっつきにくいし……あ、じゃあ講演の時に、派手なパフォーマンス付けたりとかは? 火が噴き出たりとか!』

『何だそりゃあ、やるわけねェだろ。だが別の構想はあってな。技術を手に入れたら、お前の好きな星が近くに見える、でかいタワーを……』


しかし、水が下流に流れるかの如く────当然と言わんばかりに。

天は再び、グレイザーを修羅に引きずり下ろす。



『オレは信じない。あいつが……不治の病などと』



一度臥せったリアンは、日に日に生気を奪われていく。そんな彼女から、グレイザーは目を背け続けた。


だが、誰もが予感していた最期の刻が訪れる。

彼から全てを奪ったその日は、静かな雨が降っていた。


『グレイザー、大変だ。盗賊共が近隣の村を! かなり大規模な組織で、誘拐された人もいるとか────』

『……どの道間に合わん。オレはこれからリアンの元へ行く』

『っ、軍務長官のキミが動けばあるいは……!』

『すまねェ、エルド。それでもオレは、あいつが────』


今発てば、もう会えなくなる。その前に行かねばならない。


受け入れられなかった現実に────向き合わなければ。


『えへへっ……グレイザー。来てくれて嬉しい』

『リアン……ッ!!』

『あの時の星空、最高だったわ。グレイザー、あたし……信じてるから』


痩せ細ったその手に、誰にも見せたことのなかった滴が落ちた。



()()()()()()()()()()()



あの日、グレイザーが後回しにした例の盗賊は。

勇敢な少年の犠牲のおかげで、壊滅に追い込むことができたとか。


『グレイザー……この要項は何だね?』

『この街には最も必要なものが足りねェ。有無を言わさぬ武力……自ら状況を動かす力だ』


リアンを失い、グレイザーは変わった。

「最強の街」に固執し、有志を募って私兵(ハンガーズ)を増やしていく。


「あの日死んだのは、リアンだけではなかったのだ」


やがて訪れた市長選で、彼はゼノイ相手に歴史的大勝を果たした。無論、決して褒められはしない手段で。


『グレイザー、目を覚ますんだ! 街のためになるなら、私は喜んで身を引こう。しかしそのやり方では、いつか必ず身を滅ぼす!』


リアンは誰かに殺されたわけではない。ただ不幸だっただけで、それでも最期は笑顔だった。

自分を追い詰めないでほしい。誰も顧みずに進み続けるなど間違っている。


「私の訴えは、ついに届かなかった」


これはリアンに報いることだ。最後に彼はそう言った。


群都市の長に、市長という呼び名は物足りない。街の平和は彼ありきだと謳う民衆に呼応し、グレイザーは肩書を改める。



最強の街を創り、守り続ける────絶対的な力を持った【守護者】。



そんな彼を、()()()()()()()()()()

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


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を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

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