↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!  作者: 今江彰人
第3部 【王を貫けプリンセス】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/60

14:十字架のプリンセス

「今のって……!」


建物の外で立ち止まる。ソフィはこの振動を覚えていた。

数日前、ある少女を救うべく、フレイング・ダイナが屋上で放った一撃だ。


「ふ、フレイ……!! フレイがっ!!」

「やはり、奴も来ていたか」


こうしてはいられないとばかりに、鋭い視線が向けられる。


「急ぐぞ。この機に乗じて、今度こそ奴の首を獲る!」

「は、はいっ!!」


駆け出したグレイザーに置いていかれぬよう、ソフィも走り出した。

もう一度みんなに会いたい────その願いだけが、体を奮い立たせる。


最後の関門に突き当たるのに時間はかからなかった。


「あっ……」


八年前と比べ、すっかり錆び切った連絡通路の出入口。

またしても、忘れられない顔がそこにはあった。


「……ソフィネアか」

「元気そう、ですね……二人とも」


槍を手に、背後の出口を守るように立つ彼らは、ある意味因縁の相手だ。


「オーヴェン君、カイル君。そこを退いてください」


意外なことに、視線を交わした二人はとても申し訳なさそうな顔をした。

しかしすぐに、俊敏な動作で槍を向けられる。


「この期に及んで、邪魔をするか」


グレイザーがナイフを握った。


「もう一度だけ言う。そこをどけ! さもなくば────」

「退かないっ! どうなるかわかってて、みすみす行かせるものか!」


必死な形相だった。唇も、槍の持ち手すらも震えている。


「この先に行ったら、ソフィネア、お前は殺される! あいつに勝てる人間なんていないんだ!!」

「!!」

「ずっと後悔してた……くだらない妬みでお前に喧嘩売って、そのくせあの日……お前を助けられなかったこと」


二人の警告と懺悔は、ソフィの心に強く響いた。

根拠も無く絞り出していた勇気が、萎んでいく。


「ソフィネア、俺らはもう、お前に悲しんでほしくは────」


その時だった。


「はあっ、はあっ、みんな、早く!!」


良く知る少女の声が、扉越しに聞こえた。


「? 誰だ」


二人が知らないのも無理はない。ソフィですら、訳がわかないのだから。


「レトア、ちゃん……? レトアちゃん!? な、何でここにっ!?」

「え、エーネさん!? やった、無事だったのね! くっ、んぅ……扉、全然開かないぃ!!」

「かなりの人間が大挙しているようだな」


グレイザーの言う通り、ソフィもわずかに人々の気配が感じられた。

そして腑に落ちる。フレイ達が戦っている隙に、彼女は────


「ふ、二人共!! 扉を開けてあげてください! 多分避難しに来たんです!」

「避難って……確かにさっき、爆音が聞こえたけど。でも絶対開けるなってあいつに言われて────」

「小僧、死にたいか!!」

「わ、わかったよ!」


あまりにも獰猛な一喝に、涙目になった二人はすぐさま開錠に取り掛かる。恐ろしすぎてソフィまで泣きそうになった。


「エーネさーーーーんっ!!」


数多の住民を引き連れたレトアが、下りてくるなり抱きついてくる。


「あ、あぁ、ぐすっ、レトアちゃん……また会えたっ……!」

「泣かないでっ、フレイさん達も来てるの! あ、グレイザーさんよね?」

「レトア・ロベインか。母親はどうした」

「ママやエルドさんは、『別の決戦』に備えてるわ。それよりも────」


レトアは青ざめた顔で、住民達が通り終えた出入口を見やった。


「みんなが、あいつと戦い始めたの! どうにかしないと危ないかも」

「えっ……」


あの爆音が聞こえた時点でわかっていたことだった。けれど無意識の内に、本能が可能性を排除していた。


だって、ライと戦うなんて。そんなの────


「好都合だ。奴らと連携し、モリアデスを討つ! 行くぞモイスティ!!」

「っ、え、えっと」

「おい、あ、あれは何だ?」


オーヴェンが扉の隙間から見える空を指差した。

奇妙だ。先ほどまで完全な晴天だったのに、もう日が暮れたような金色で……


「も、もしかして」


レトアが呆けた声を出した。


「フレイさんの……?」

「あの技は────!!」


グレイザーが何を思い出しているのか、手に取るようにわかる。


「は、早く下に!! 扉を閉めてくださいっ!!」


ソフィは無我夢中で叫んだ。カイルが扉を閉めたのを確認し、全員で両親が住む広場まで下る。

すぐに、先ほどの比ではない轟音が響き始めた。断続的に、地表が打ち付けられていく。


「ひゃああああっ!!??」

「ダイナ、無茶を……!」


やがて音が止む。嘘のように静まり返った広場は、段々と焦げ臭さに包まれていった。


「か、勝ったの……?」

「まさか、倒したのか? あのライグリッドを!?」


フレイの必殺技を知らない者達が、期待に声を弾ませる。両親も家から出てきていた。

が、グレイザーの顔は険しい。得も言われぬ不安がソフィの胸中を満たす。


「どう思う? モイスティ」

「…………っ」

「その沈黙が答えだ」


彼は結論付けた。



「確率は五分か、それ未満。人外の脅威を、オレ達は良く知っているはずだ」



握った拳に汗が落ちる。涙かもしれなかった。


「あ、あたし、行くわ! 光銃だってあるし!!」

「女の子はダメだ、俺達が!」

「無駄だ。今の攻撃で出口がイカれた。脱出の術は無い」

「嘘だろ!?」


少年達が出口を確認しに走り去る。

しかし、まだ話は終わっていなかったらしい。


「ただ一つを除いて、な」


グレイザーは天井を指差した。ビートグラウズの建物くらいには高い、光が漏れている場所だ。


「脱出するならあそこが最適だ。恐らくここは里の中心部、その真下だろうからな」

「無茶だ、この子によじ登らせる気か」

「愚かな。モイスティに魔法を温存させたのは、何のためだと思ってやがる」


もはや心配を隠しもしない両親に、グレイザーは吐き捨てた。


「水流で体を浮かせ、天井まで突き進め。俺も同行し、壁を破る役を担う」

「え、ええっ!?」


信じられない。一体何を言っているのだ。

言うまでもなく、ソフィは無類の高所恐怖症だ。そもそも水で飛ぶなんて────


「お前自身も気付いているはずだ」


グレイザーの声には確信がこもっていた。


「ダイナは手からしか炎を生み出せず、連続使用に制限がかかる。しかしお前は、遠隔かつ長時間の噴射が可能だ」


鼓動が大きくなる。嫌な汗が再び滲み出した。



「エディネア・モイスティ。お前は、空を飛べる」



もし、ビートグラウズでそれができたなら。自分もタワーの頂上で、援護に回れたかもしれない。

もし、シュレッケンでそれができたなら。上から素早く研究所を見つけ出し、迅速に破壊できたかもしれない。


どこかでわかっていたのかもしれない。村で暮らし始め、フレイと共に力を磨く中……自身の水流が、それに足るまでの強さになったこと。


けれど。



────『永遠に……さよならです』



全てを諦め、ソールフィネッジから飛び降りた日。あれが最も死に近く、そして生への渇望を自覚した日であった。


ただ、怖い。もう二度とあんな思いはしたくない。

高所に行く度に、血染めの弟の笑顔を思い出す。ましてや彼と戦うなど。


「奴とて、俺たちが中心部から来るとは思うまい。そこを一気に叩き、及ばずとも、里から飛び降りて逃げられる」


グレイザーの世界には、守るべき友と民が映っている。

自分も同じはずなのに。居場所をくれた大切な仲間が、危険かもしれないのに。



フレイのことが────命よりも、大切なのに。



「ご……ごめん、な、さい……っ」



縛り付けられたかのように、体が動かない。



「わたしっ、ど、してっ…………たすけ、たい、のにっ」

「エーネさんっ……!」

「なんで……からだ、うごかなっ…………!!」



すぐそこで、少年が嗤っている気がした。



「おーいっ!! 二人とも!」


オーヴェンとカイルが戻ってくる。

そばに来たカイルが、懐から黒光りする武器を取り出した。


「それは、オレの拳銃か」

「やっぱあんたのか。くすねてた事思い出してさ。いつか役に立つかもって」


きまり悪そうにしながら、彼は拳銃を返却する。


「これ、使ってくれよ。さっきはああ言ったけど、こんな事態になっちまったし。あのビビりなソフィネアが立ち上がったんだ」

「…………」

「だから俺達も……って、ソフィネア?」


もう何度目だろう、こうして涙を流すのは。


レトアが。オーヴェンとカイルが。両親が。グレイザーが。

何も言わずに自分を見ている。対するソフィは、ただの一言も返せない。



────『ああ、愚かなソフィ……君には無理だってわかっていたよ』



結局彼が正しかった。八年の時を経てもソフィは変わらない。

何も守れない。いつも泣いてばかりで、肝心な時に役に立たない。


「ごめん、なさい。ごめんなさい、ごめんなさいっ」


うわごとの様に繰り返す。



「フレイっ、ザン、マインド…………えぐっ、ぐすっ、ごめん、なさいッ…………!!」



ふと、グレイザーが隣に膝をついた。

彼のような人間にとって、自分は許せない存在だろう。殴られるか、あるいは刺されるか。


もはやそれでも良いとさえ思っていた時。



「オレも、人のことは言えない」



頭の上に、重く────そして優しい感触が生まれた。

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


・ブックマーク追加

・下の☆☆☆☆☆を★★★★★に!


を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。