↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!  作者: 今江彰人
第3部 【王を貫けプリンセス】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/60

13:機人マインド

「【煌炎(フレイム)────破壊砲(バスター・キャノン)】!!!」



最大出力で炎を放つ。

ブレイン砲を穿ったあの日よりも強く、ずっと強く。


「わお」


ライグリッドはおどけながら、私の渾身の一撃を真正面から受け止めた。

地を抉るような爆音。里全体が揺れる衝撃に、確かな手応えを感じる。


「はあああああっっ……!!」


ライグリッドは速い。普通に戦ってもスピードに翻弄されるだけだ。

ならば最初から、圧倒的物量で押しつぶしてしまえば良い。


「ど、どう!? これならっ!!」

「いや……!!」


マインドが腰を低くする。そこで、撫でるような笑いが聞こえた。


「んふふっ。いいじゃないか、お姉さん」

「────!?」


「ソフィの友には、似つかわしくない力だ」


広場を埋め尽くす炎が、瞬く間にかき消される。煙が晴れた先にいたのは────


「そ、そんなっ!?」



変わらぬ立ち姿の、ライグリッドだった。



「ちっ! だが、まだだ!」

「じゃあ行くよ?」


人外が視界から消える。瞬間、風を切る音がした。


「っ、ぐうっ……!!」

「ザンっ!!」


私の眼前に迫っていたライグリッドの一撃。それを、ザン・セイヴィアは刀で受け止めてくれた。

力のこもった腕に筋が浮く。対するライグリッドは、拳を押し付けるのみ。


「させるものか……フレイには、指一本触れさせないっ!!」

「格好良いじゃない、剣士さん」

「覚悟しろっ!!」


腱と素手の、目にも留まらぬ打ち合いが始まる。

エルドやレイティを打ち破った男の怒涛の連撃を、彼は事もなげに捌き続けた。


「っ、フレイ、アレを!!」

「う、うんっ!! ────【火炎跳躍(フレイム・バウンド)】!!


彼の意図を組み、私はその場から離脱する。

マインドが狙いを定めたのはほぼ同時だった。


「【雷電裂手(スパーク・ハンズ)】」


ライグリッドの額を目掛けて突き進む、光の塊。

距離はほとんど無い。命中すれば彼とてただでは済まないだろう。


しかし────


「甘いよ、機人さん」


ライグリッドは首をあらぬ方向に曲げた。刀を振りかざしていたザンは顔を引き攣らせる。


軌道はそのまま、光は奥のモリアデス邸に直撃した。

天井が音を立てて崩れるも、住民の悲鳴は聞こえない。きっと彼女がやってくれたはずだ。


「ねえ、何か企んでる?」

「くっ……!!」

「見たいなぁ、君達の全力。でも君の剣技は、僕に届きそうもない」

「ザン、諦めないで。【破散電砲(ヴォルト・ストライク)】」


マインドが複数の弾を放つ。一か所に留まらない彼を捉えるための散弾だ。


「好機ッ!!」


「【煌電破壊砲《エレクトリック・マグナム》】!」


岩をも砕くザンの剣撃。それを囮として、マインドが放った必殺光線。

ライグリッドの腹部が弾けた。閃光で視界が遮られる。


「んっ」

「────!!」

「あぁ……光は効くんだよねぇ」


黒煙と煙が晴れ、状況が明らかになっていく。

彼の服は破けていた。脇腹から腰にかけて、ごっそり布地が無い。


そして肝心の肌は────軽い火傷の痕がある。た(・)だ(・)、(・)そ(・)れ(・)だ(・)け(・)だ。


「信じられない」


腕から煙を発するマインドが、無表情のまま後ずさった。


「このままじゃ、エネルギーが」

「ところでさぁ、剣士さん」


刀を押さえつけるザンの顔を、ライグリッドは下から覗き込んだ。


「いつまでこの『おもちゃ』に付き合えばいいの?」


「────は……?」


小気味良い音がした。とはいっても、大抵は良い思い出の無い音だ。

例えるなら、皿を割ってしまった時だろうか。


ザンの愛刀が、今この瞬間────同じ音を立てて砕け散った。


「馬鹿、な…………っ……」

「消えなよ」


突きがみぞおちに直撃する。声を上げる間も無く、ザンの体は直線状に吹き飛ばされた。民家の壁が受け止めてくれなければ、更なる惨事になっていただろう。


「ザンッ!」


マインドの濁声。ザンの身を案じつつ、私は自分に言い聞かせた。


無駄ではない。彼らが時間を稼いでくれたおかげで────


「準備、完了……っ」

「ん?」

「受けてみろっっ!! 【無限の焔よ(インティ・フレイム)────!!」


雄叫びを上げ、天に左腕を掲げる。


最大限の集中をもって。森羅万象を破壊する────全身全霊の攻撃を!



「────────星を穿て(メテオ・ストーム)】!!!!!」



エーネ、待っててね。



民家が密集している所にはなるべく着弾しないよう、気を遣った。

それ以外の全域を飲み込むつもりで、私は終末の隕石を降り注がせる。


もはや逃げ場など無い。


「マインド、来てっ!!」

「うん!」


二人でザンが飛ばされた方に走る。彼もしっかり意識はあるようだ。

全員を壁で囲み、最大級の衝撃に備える。


「【炎の防壁(フレイム・バリア)EX】!! よしっ、いけえええええっっっ!!!」


ライグリッド・モリアデスは、里を覆い尽くす火焔の雨を見上げていた。

そしてただ、誰にも聞こえぬ声で。


「面倒だなぁ」


夥しい炎の塊が、爆音と共に降り注ぐ。無尽蔵に思えた私の力────初めてその消耗を実感した時、信じられない出来事が起こった。


ほとんどの隕石が、着弾の直前にかき消されていた。特に建物に当たりそうなものは、残らず消滅する。



全てが終わったのち、私は見た。本能が拒否する、恐るべき光景を。



「君は運が悪いねぇ」



ライグリッド・モリアデスは、ほとんど負傷した様子も無く。

唯一変わらない青天の中、悠々と仁王立ちしていた。


「…………あ、あっ……あ……」


衝撃のあまり、バリアが解ける。

ザンが倒れ込んだまま光銃を構えたが、引き金を引けていなかった。


「連絡通路の扉に当たったみたいだよ? 仮に君の仲間がいても、出て来れないかもね」

「嘘、で、しょ……」


愕然として、もはや涙すら流れない。マインドが支えてくれなかったら、背面に倒れ込んでいただろう。


勝てない。


これだけ本気で戦ったのに。



絶大な犠牲を糧に手に入れた、絶大な力も────彼には届かない。



「嘘なんかじゃないよ」


ライグリッドはゆっくりと近づいてくる。

もう攻撃を繰り出そうとする者はいなかった。視界が真っ白になった私は、ただ後ずさるのみ。


「君たちは選択を誤った。余計にソフィを悲しませる結末を選んだんだ。残念ながら、お姉さん……」


眼前の少年は、微笑みながら腕を振りかざす。


「報いを受けないとね」

「待って」


しずしず立ち上がったのは、エネルギーもあまり残っていないマインドだ。


「フレイ怪我はさせられない。当然、ザンにも」

「へぇ、ならどうする?」

「…………」


機人はただ両腕を広げ、人外の前に立ち塞がった。


「ま、マインド!?」

「……君達は、甘い世界に慣れすぎなんだ」


ため息交じりに掲げられた拳の先は、マインドへ変わる。

幻影と彼が、まさにこの瞬間重なった。


「だっ、ダメっ────ダメっっ、マインドっ!!」

「フレイ、ありがとう」


今はもう、濁声さえも澄んで聞こえる。


「僕を信じてくれて。君といられて、僕は自分を確立できた」

「やだっ! やだっ、ねえっ!! ライグリッド、やるなら私をっ!!」

「出るな、フレイ!!」

「ああ……きっとそうだ」


造り物の瞳から、涙が伝った気がした。



「一度死んだ僕は。君を守るために、また蘇っ────」



彼が言い終えることは無かった。



ライグリッドの雷の如き攻撃が、その顔面を貫いたからだ。



右目が粉々になり、多数の部品が飛び散る。残った方の瞳も、一切の色を無くした。

マインドが脱力し、ライグリッドの体に体重を乗せた瞬間。


「…………っ、は……え………………ま……」



フレーは初めて、仲間の「死」を実感した。



「マイン、ド……マインドーーーーーーーッッッ!!!」


「あははははは、あはっ、はは、あはははははははははッッ!!」



自分でも知らない絶叫が空気を裂く。


「やっぱり機人も人間と同じだね! そうだよねぇ、誰だって頭を砕かれたら終わりだもんね!」


機人は力無くずり落ちた。もしもこれが人間なら、しばらくは動くのかもしれないけれど。彼にそんな常識は通用しない。


惨たらしくも静かな、成れの果てがそこにはあった。


「よくも……っ、よくもっっ!!」

「……………………殺して、やる」


再び光銃を構え、怨嗟の呻き声を発するザン。

私は顔を涙濡れにしながら、それにも勝る怨念の怒号を放つ。


「殺してやる、この手で殺してやるっ!! ライグリッド・モリアデス!! 私は、絶対にッ……!!」

「絶対に?」


冷ややかな視線。

決死の身代わりで一度は逸れたはずの拳が、再び私に向けられていた。


(あ……)


避けられない。防壁(バリア)も間に合わない。

何度目かの死の予感は、かつてなく色濃くて────恐ろしかった。


「もう飽きたんだ」


人外はしとやかに嗤う。



「さようなら、炎のお姉さん」

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


・ブックマーク追加

・下の☆☆☆☆☆を★★★★★に!


を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。