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ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!  作者: 今江彰人
第3部 【王を貫けプリンセス】

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2:懐かしき出会いの日

「つ、疲れたっ……!」

「おい、大丈夫かフレイ」

「はあっ、フレイさん、あたしも疲れたけど……い、一緒に頑張ろっ」

「うん……って、エーネじゃないからいつもの流れが無いね」


日が沈んで数刻。終わり無き平原に疲労困憊となり、私は膝を掴む。

振り返ると、そこには私より幾分背の低いキッズが。


「……おかしいよね、パーティの平均年齢が」

「僕に年齢の概念は無いよ」

「あたし? 光銃はいっぱい練習したから大丈夫よ!」

「戦わないんだからな?」


まあ、今更仕方ない。特にマインドが来てくれるのは願ったり叶ったりだ。


そんなこんなで火に当たると、少しずつ体が解れてくる。

しかし心は温まらない。隣に彼女がいないだけで、空気は陰鬱だった。


(水浴び、したいな……)


二人で裸になって大慌てしたあの夜が、遠い昔のようだ。


「ねえ、二人とも」


私達の心情を慮ってか、レトアが小さく言った。


「聞かせてよ、エーネさんのこと」

「え?」

「どんな出会いだったの? 可愛くて、優しい人よね」

「僕も気になる。知らない話、知りたいな」


「あいつのこと、か」


ザンが視線を空に向けた。


「割と見たままだけどな。臆病で鈍くて、心優しい。そんなやつだ」


────『私フレイ! フレイング・ダイナ! そっちのお名前は?』

────『あっ、えっ……ィネ……』

────『エネ? あ、エーネ?』

────『……ぁ……』

────『エーネちゃん、初めまして! ザンっ、何かボロボロの子いるー!』


「駆けつけたら、見たこと無い銀髪の子が泣いてた。急に叫ばれたからな」

「ご、ごめん。今思うと酷いよね」


出身を問われた少女は、ビートグラウズの方向指差した。

大人達はとても驚いていた。当時は治安は良くなく、非力な少女が無事だったのはとても幸運だったのだ。


「結局、エーネはそのまま村の子になったんだけど」


彼女は多くを語らなかった。エーネはビートグラウズ周辺から来た孤児……それが最近までの私達の認識であった。


フルネームを聞くと、彼女は吃りながら教えてくれる。


────『そ……エディネア。エディネア、も……モイスティ』

────『強そう! でもあだ名が可愛いから、エーネちゃん続行で!』

────『改めてよろしく、エーネ』

────『お、教えた意味……!』


エーネはくすくす笑う。笑顔を見たのはそれが初めてだった。


彼女が孤児院に入り、一緒に遊ぶようになった頃。ある事実を告げられる。


────『二人とも、わたしのこと小さい子みたいに扱うけど……ちょっと前に十歳になったんです! だから、一応はお姉さん、というか』


開いた口が塞がらなかった。

その時点で私は八歳、ザンは九歳。エーネはまさかの最年長者だった。


「背は若干エーネの方が高かったけど、痩せててびくびくしてたから、余計年下に見えたのかな」

「そっか。じゃあ、エーネは随分成長したんだ」

「ねえ、どこ見てんのマインド。え、エーネは私より二歳近く上だから────!」

「次行くぞ」


────『誕生日おめでとエーネちゃん! プレゼント買ってくるね!』

────『えっ。あ、ありがとう……! じゃなくて、つ、次が本題なんです』


エーネは青い顔で深呼吸する。

左腕を横に払うと、突如として空中に水の塊が生み出された。



────『わたし、魔法使いなんです』



私は、その澄んだ水に目を奪われる。


────『す、すごいすごいっ!! ザン、見た!? 水の魔法使いだよ!』

────『ああ、驚いたな。珍しいんじゃなかったのか?』

────『た、多分……一応治癒の力もあって……でも全然力は無くて』

────『気にするのそこ? てか二つもあるんだ! あ、私も見てて!』


私は広場の切り株に手のひらを向けた。


────『【走れ炎よ(ラン・フレイム)】』

────『ええっ!?』


宙を走る炎。燃え上がった切り株を見て、今度はエーネが声を上げる。

ドヤ顔をしている間に、火は隣の木に燃え移りそうになっていた。


────『あ、やばっ!』

────『このアホ! 村でぶっ放すなって前も!』

────『だ、大丈夫です。ほら……』


水塊が切り株に向けて落ちてきた。即座に鎮火が行われ、胸を撫で下ろす。


────『遠くからもやれるの!?』

────『う、うん……あの、フレイちゃん。ザン君』


エーネは死ぬほど不安そうな顔で、指を擦り合わせながら。


────『わたし、こんななんです。魔法があるのに怖がりで、強くも賢くもなくて……もし二人が嫌だったら、わたしはいつでも────』


私はエーネの手を取る。そこには嘘も駆け引きも一切無くて。



────『嫌なんてない! エーネちゃんは優しくて可愛いくて、良い子だから、良いんだよっ! これから魔法でいっぱい遊ぶの、楽しみだねっ!!』



エーネが泣き出すのに時間はかからなかった。私達は慌てるばかりだ。


「そこからだよ。エーネのほんとの性格が見えてきたの」

「色々収まるんだよな、あいつがいると」


────『水に乗って丘から下る!? そ、そんな怖い遊び絶対やらない!』


────『何故です! 三人もいて、全員料理が下手なんてことある……!?』


────『フレイ、その膝』

────『うん、ちょっとぶつけちゃって。気にしないで』

────『でも、血出てるじゃないですか。ほら、座って?』


エーネは私に寄り添い、そっと膝に手をかざす。

緑の柔らかな感触が、痛む足を包み込んだ。


────『えへへ、気持ち良い……』

────『もう十二歳でしょ、フレイ。気を付けないと』

────『ごめんごめん。エーネが治してくれるから、つい』

────『……普段は水しか注目しないくせに』


仕方ないなという風に笑うエーネ。

それは初めて見た笑みの何倍も眩しく、可愛らしかった。



────『でも、一緒にいて良いって言ってくれたから。フレイの傷は、これからもわたしが治します! 何があっても必ずっ!』



「……会いたいよ」


いつしか頬に涙が伝っていた。


「ふ、フレイさんっ」

「フレイ。ごめんね、泣かせるつもりじゃ……」

「ううん、私こそごめんね。ちょっと弱ってて」


ザンが背中に手を置いてくれる。

涙がこぼれぬよう空を見上げると、満天の星が輝いていた。


「リアンさんを想うグレイザーも、こんな気持ちだったのかもな」


代弁してくれたのはザンだ。彼の手の温もりと、マインドやレトアの暖かな優しさに触れ、本格的に眠気に襲われる。


「そろそろ横になろっかな。体も拭けないし、やることないもんね」

「風呂に拘るあいつの気持ちもわかるな」

「女子としては最悪よ……うぅ、あたしも水の魔法使いたいわ」

「あ、マインド! に、匂いとか勝手に探知しないでね!」

「うん、黙ってバイタルチェックだけするよ」

「だからそれが嫌なの!!」


このしょうもない会話こそ、私が大事にしているものだ。

またエーネに加わってもらうためにも、今は。


今だけは────



「パンパカパーン!!」



それは撫でるような、陽気な少年の声だった。

今にも手を叩きそうな物言いが、夜の雰囲気と合っていない。


「おめでとう、君達は記念すべき人間だ!」

「っ!? 誰だ!!」


弾かれたように立ち上がり、全員背中合わせになる。しかし四方向から見ても声の主は見つけられなかった。


「マインドさん、探知は!?」

「引っかかってはいる。でも途切れ途切れに……」

「【偉大なる炎よ(ノーブル・フレイム)】っ!!」


私が火柱を作り出したところで────


「うーん、そんなに警戒しなくても」


謎の人物が、それまで透明だったかのごとく眼前に出現した。


「ど、どこから……!」

「何でかなぁ。最近みんな、僕を見る目が怖いんだよねぇ」


少年は小柄だった。私より若干高い程度だ。声が高く物言いも子供のようだが、気品のある灰の外套を身に着けており、幼さは感じない。


何より目を引くのは、顔を覆う獣のお面。見慣れない動物を象ったそれは、火柱の残り火に照らされ、あたかも物の怪のような様相だった。


「安心して、僕は危害を加えたりしないから!」

「……君は誰? 目的は」

「決まってるじゃない。PRだよ! 僕らの里は現在、危機的状況なんだ」


彼はふと視界から消えた。その事実に気付くと同時に、背後から声がする。


「悪評が流れてね。人が寄り付かなくなったんだよ」

(い、今の一瞬で!?)

「そこで次通る人を、里に招待しようと思って!」


少年は指を立てた。


「滞在は数日、寝食無料! 帰った後は、里の良さを世間に広めてくれれば良い。楽しそうでしょ?」


彼は再び、私の背後に姿を現す。


「ああ、でも適当に選んでるわけじゃないよ? ちゃんと条件があるんだ」


少年は笑う。どこかくすぐったそうな、不思議と聞き覚えのある声だった。


「お客は、ある程度強くないとね。()()()()()()()()()()()()し」


夜風が肌に染みる。汗はすっかり引いて、ただ冷たさだけが体を覆う。


「安心して。君達はその条件に合致した! 共に最高の時間を過ごそう! ね……フレイング・ダイナさん?」

「フレイ」


私を正気に戻してくれたのは。

こちらを見ることすらできないザンが、かろうじて発した掠れ声だった。



「逃げろ」



「……っ!!」

「きゃあっ!?」


レトアの手を引いて駆け出す。二人も付いてきてくれることを信じて。

パニックで噴射は行えなかったが、体感は同程度のスピードが出た。


もう眠気は無い。私を突き動かしているのは、本能的な恐怖だ。


(何あれっ、何で、何で……ッ!?)


戦わずともわかる。少年の異常な強さ。きっと私が束になっても、容易に返り討ちにされる。


逃げなければ。今すぐここから離れ────


「傷つくなぁ」

「えっ……」


少年は目の前にいた。全力で走る私の前で、構えも取らずに。



「そんなことされたら、強制的に連れてくしかなくなるじゃない」



()()()()()。立っていられず、私は思わず地に手をついた。何かに振り落とされそうな気さえした。


次に周囲に現れたのは、先ほどと変わらぬ星空と、四方八方に掲げられた橙色の明かり。



そして私達を取り囲む、()()()()()()()()()()()()()()だった。

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


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を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

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