↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!  作者: 今江彰人
第2部 【銀の心の救世主】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/47

18:レトアの未来

「で、何!? この衣装!!」


パーティ参加を表明した翌日。

私は貸し出された衣装を身に纏い、戦慄していた。


布の質感や艶やかな黒味は、完全に高級ドレスのそれだ。ただ、胸下から下腹部までを大きく露出させた、謎のセパレートでさえなければ。


「お、お腹丸出しじゃん……え? これで出るの? みんなの前に?」

「何故です……こ、こんなの何かの間違いじゃ」


薄水色のミニドレスで縮こまるエーネは、いつも以上に清楚で可愛らしい。

こちらも局部以外のあらゆる部分が薄く透けていなければ、最高なのに。


「おい、着替え終わったか」

「ざ、ザン! 私達は欠席────ぶっ!!」


生気の無い声で部屋を訪れた義兄に、私は久方ぶりに噴き出した。


無理もない。彼は腰に極薄の布を巻き、謎の装飾を身に着けた以外は、生まれたままの姿だったのだから。


「ひ、酷すぎる……!」

「ああ、ここは蛮族の街だ。何が『若者は大体こんなです』だ」

「みんな贅沢だなぁ」


と、最後にやってきたマインドが、酷く無機質に言う。


「……何ソレ。りんごの……被り物?」

「機人は目立つから、仮装パーティと勘違いしたことにほしいって。これが人間界名物、差別か」

「ど、どんまいマインド……」


どんマインド、と口にしようとしてやめた。私はおかしくなっている。


「だが、出ない訳にもいかない。レトアに頼まれたんだろ?」

「そ、そうだよね」


私は意を決して、気配を消しているエーネを引っ張り上げた。


「やっ、ちょっと!!」

「あ……おへその形が結構くっきりわかるねそれ。一応布で隠れてるのが余計やらしいっていうか」

「さ、最っ低! そのコメントが一番やらしいです!!」


一悶着ありつつも、重い体を引きずって訪れたパーティ会場。

扉を開ける前から、人々の濃い熱気が伝わってきていた。


「す、すごい……!」


怨念渦巻く死都から一転。


再興を果たした『歓楽都市』シュレッケンは、活気と彩りに満ちていた。


「頑張った甲斐あったね、みんな!」


驚異の肌色率からは目を背けつつ、私達は喜びを分かち合う。こうなったらせめて楽しまなくては。


皆と別れ、ご馳走を物色するべく棚へ向かった私は、


「ん?」


壁際でもたれながらジュースを飲む、痩せこけた少女を見つけた。


「……あの子って」

「ああ、ベネツィアだね」


隣に来ていたリンゴ頭が小さく言う。明らかなイロモノは、同じくらいの身長の子供達にちょっかいをかけられていた。


レトアをいじめていたという少女、ベネツィア。解放されても栄養状態は簡単には戻らず、遠目でも哀愁漂う姿だ。


「僕達が無理に話しかける必要はないよ」

「……うん」


気を取り直して辺りを見回すと、料理を吟味するザンとエーネが目に入った。


「あ、エーネが」

「ベネツィアの方に料理を持って……転んだね」

「あああっ、もう、鈍臭い!」


ここでも無類の優しさを発揮した結果、注目を浴びて死にそうになっている少女の方へ急行する。ザンも苦笑しながら寄ってきて、結局また四人で集った。


ややあって、パーティも盛り上がってきた頃。


「ただいまロベインさんが到着しました! ここで、事件解決の功労者である方々を改めて紹介したいと思います!」


進行役の大声に、私はグラスを落としかけた。


「群都市から派遣された、ハンガーズ(飢えた群衆)の精鋭四人! フレイング・ダイナさんご一行です! 大きな拍手を!!」


ぎょろりという擬音で表せそうなほどに、無数の視線が私達に向けられた。

エーネがパニックになって、マインドの頭に隠れる。一方の私とザンは、もう諦めムードで料理を頬張っていた。私は一応、お腹は隠すけれど。


「てか、勝手にハンガーズにされてるね」

「まあ、魔法使い二人いるしな。色々面倒だろ」

「な、長い、拍手が長いですっ……!!」

「エーネ、多分僕を抱いてるから余計注目浴びてる」


「それではこれより、有志の持ち込み企画! まずは、学園の生徒達による奇術ショーです!」


料理棚が移動させられ、会場の中心に大きな広場ができる。

颯爽と現れた少年少女を、一同は拍手で迎えた。


「何あれっ!? す、すごいですっ!!」

「い、今のどうやったんだ……!?」


奇術ショーに続き、音楽隊や芸人など、様々な集団が一夜に華を添えていく。


(楽しいっ……! パーティってこんななんだ!)


奥のレイティも満足げだ。群都市から始まり、締め括りにはこれ以上ないイベントである。


「あの姉妹は無理でも、レトアは来られれば良かったのにね」

「そういえば……昨日ああ言ってたし、どこかにはいると思────」


私の言葉は最後まで続かなかった。大盛り上がりだった会場の喧騒が、水を打ったように静まり返る。


広場の中央に、黄色いドレスを纏うレトアが歩いてきていた。皆のようにえげつない衣装ではなくて安心したが、遠目でも緊張で青くなっているのがわかる。


「つ、次の演目は……レトア・ロベイン、歌唱披露です」


気まずそうな紹介を受け、レトアはおずおずと礼をした。


「こんばんは。事件の主犯、毒刃少女(ポイズン・ガールズ)の一人……レトア・ロベインです」


どこかで舌打ちが聞こえた。会場に負の波紋が広がっていく。


「今夜は、決意表明のために来ました。迷惑をかけた皆さんに、最後の挨拶をと思って」


憤り始めた民衆を前に、母レイティは唖然としていた。どうやら知らされていなかったらしい。


「う、歌を歌います。罪を償って、私は将来、本当の夢を叶えて見せるから……そのことを、お伝えするために……」


「ふざけんなっ!」


誰かの怒号が飛んだ。レトアは身を縮こめて怯む。


一度は母に守られ、一定以上の批判を浴びなかったレトア。それでもこうして、剥き出しのまま公の場に立った。

きっとこれは彼女にとって必要なことだったのだ。それなのに────


「待って」


身を乗り出した私とエーネを、マインドが手で制す。


「でもっ!」

「僕は信じたい。生まれ変わった彼女の強さを」


ザンも同じ考えのようだ。慈悲深き濁声に諭され、目を閉じて頷く。


レトアが今にも泣き出しそうになっていると、



「相変わらずダサいわね」



その異色かつ冷徹な言葉に、罵倒を繰り返していた市民は一斉に黙った。


「指導者の娘の癖に、なってないわ。恥ずかしくないのかしら?」

「ベネツィア……っ!」


壁にもたれたベネツィアが、グラスを片手に無表情で煽る。レトアが涙目で睨みつけると、彼女は呆れたように肩をすくめて、


「私が言ってるのは、あんたの服の話よ。色気の欠片も無い。みんなもっと派手で、露出もたくさんしてるわ」


そこで多くの人間が首を傾げた。

何故ならそう言う彼女も、露出という露出は全く無い。


「あ、あなたこそ、全然肌を出してないじゃない」

「あら、私はこれで良いのよ? 恥ずかしいし。みんな躊躇い無く肌を見せるけど、正直気が知れないわ」


会場の女性陣がひそひそと感想を言い合っている。私とエーネは、今一度顔を見合わせて赤面した。


「あ、あたしも、なんだけど」


やや遠慮がちに、しかしはっきり口にしたレトア。


「肌を出すのは恥ずかしいし……こういうのが好みなの」

「ふーん。ならあんたはそのダサい服、自分の意思で着てるわけね」


ベネツィアは一泊置き、目を細めて。


「じゃあ、もっと堂々としたら?」


その淀みない声に、レトアは小さく息を呑んだ。


「にしても私の考え、あんまり共感されなかったけど。理解者もいるのね」

「そう、ね。マ────母にも言ったことないから、あたしもあなたが初めて」

「あっそう。じゃあ、初めて気が合ったわね、ロベイン」


何でも無さそうに行ってから、少女は重い体を起こす。


「誰かさんのせいですこぶる体調が悪いけど、あたしなりにパーティを楽しんでたのよ。それをこんな空気にして……わかってるんでしょうね?」

「…………」

「どうせなら良い歌で盛り上げてよ。いつもの辛気臭い顔はうんざりだわ」

「……望むところよ。このために、オリジナル曲を急遽改変してきたもの」


自分の言葉で踏ん切りがついたらしい。

レトアは深く深呼吸し、声を張った。



「聞いてください! 『毒の道を越えてルイン・ザ・ポイズンロード』!!」



それは印象に反し、とても明るくノリの良い曲だった。


村の渋い歌謡しか聞いたことのなかった私は、足踏みしたくなるリズムに一瞬で心を奪われる。野次を飛ばしていた者も、次第に音に魅入られていく。


希望に満ちた歌声が会場を包んでいった。まるで、伝染する毒のように。



圧倒的な魅力を持つ、未来の歌い手たる少女の姿が、そこにはあった。



(ねえ、マインド)


私は密かに涙ぐみながら、心の中で泣いた。



(この光景を守れた私は……ちょっとは、偉大な存在に近づけたかな?)



やがて、誰もが夢中になった時間が終わる。

皆は拍手のために手を掲げ、固まった。罪人である彼女を賞賛しても良いのか、揺れていたのだ。


椅子を蹴り倒して立ち上がったある人物が、腹に轟く大声を上げるまでは。


「最高でした、レトアっ!!」


「うえっ!? ま、ママっ!?」


娘が死ぬほど赤面したタイミングで、嵐のような拍手が巻き起こった。

私達も力の限り手を叩く。ベネツィアも無表情のまま、惜しみない拍手を送っていた。


「っ……みんな、ありがとうございます!」


レトアは赤い顔のまま、腕を振り上げて叫んだ。



「あたしは逃げないっ! 自分の罪からも、家族と向きあう事からも……将来からも! だからどうかっ……いつかまた、あたしの作った歌を聞いてくださいっ!!」



熱気の渦に呑まれた会場を、レトア・ロベインは後にする。


去り際の彼女が私達に向けたのは、弾けんばかりの眩しい笑顔だった。

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


・ブックマーク追加

・下の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」に!


を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。