表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第2部 【銀の心の救世主】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/30

13:義兄ザン・セイヴィア

「ん? もしもし、マニーさん?」


ひとしきり話し終えたレトアは、懐から小型の箱を取り出した。

何やら連絡を受けたらしい彼女は、その後、にんまりと口角を上げる。


「ねえザンさん? あなたは半日で、完全に自我を失うわ。そうしたら、みんなを見境なく攻撃するかも」

「ッ……!」

「でも安心して? マニーさんが、現実的な提案を持ってきてくれたわよ!」


陽気にステップを踏む少女は、暗く淀んだ瞳を瞬かせた。


「二人が改めて、ダイナさんを研究させてほしいって! 従えば、四人を無事に街から出してあげるらしいわ」

「えっ!?」

「条件は、半日以内にダイナさん一人で指定箇所に来ること。場所は、そうね……思い出深い学園の屋上にするわ! あそこなら『ブレイン砲]』もあるし」


ブレイン砲。その物騒な単語を聞いてハッとする。

もしや、街に入った時ザンが言っていたのは────


「以上になるけど、質問はあるかしら?」


少し考え、私は軽く手を挙げた。大げさな動作で指名される。


「はいっ、ダイナさん!」

「レトアはさ、何を目指してるの?」

「……何って?」


瞬時に怪訝な顔になるレトア。


「ビートグラウズを支配して、その後どうするの? 大量の人達の管理とかは? どんな未来を願ってるの?」

「急に大人っぽいこと言うのね」

「良いから答えて?」


有無を言わさぬ口調を受け、少女は少し不機嫌そうになる。


「別に、特に考えてないわ。考える生き方はもうたくさん。どうとでもなるでしょ」

「…………」

「みんなだって、そういう生き方じゃなかったら、こんな危ない所に来ないんじゃない?」


とても言い得て妙だと思った。

行き当たりばったりで、それでも目的のためには手段を選ばず────ある意味とても真っすぐで。


「虚しいね、お互いに」


「……なっ!?」


レトアは侮辱と受け取ったようだ。ぱっと顔を赤らめ、視線を逸らす。


「ふ、ふんっ……何とでも言って! どうすべきかよく考えるのよ!」


吐き捨てるように言うと、小さな体を揺らしながら小走りで去って行った。恐らく、これから市民の管理の仕事があるのだろう。


戦勝ムードから一転。窮地に立たされた少年少女だけが、そこに残った。


「……フレイ、僕は」

「謝らないで、マインド。誰も気付けなかったんだからしょうがないよ」

「うん。でも……これが悔しいって感情か」


息遣いだけが無機質にこだまする、薄暗い灰色の避難豪で。


機人は俯き、力無くこぼした。



「彼女の事、知らされてすらいなかった。僕では、人間の信頼は得られないのか」



重たい足取りで、拠点だった宿へ戻る。以前マインドに脅かされたことが、もはや懐かしかった。


「また、助けられちゃった」


ザンをベッドに座らせてから、私は静かに口にした。


「ごめんね……ありがとうね、ザン」

「ああぁ、どうしてこんなことに……っ!!」


エーネが壁に顔をうずめる。力無く拳を握る彼女は、涙が止まらない様子だった。


「わたしは……な、何もできずにッ!!」


一方のマインドは、既に決意を固めたような表情で。


「フレイ。僕は、ザンのために戦いたい」

「良いの……? 一応マインドは────」

「確かに、二人は僕に良くしてくれた。マインド・ダイナの記憶は持たないけれど、慕ってくれたピューレ達を憎からず思っている」


それでも。私を助けたいと思ったように。

造り物の体に刻まれた「本能」が、たった一つを命じているのだという。


「彼女達を下し、フレイ達を守りたい。バグに近い思い出の残滓を……大切にしたいから」


「わたしからは、言うまでも無いですっ」


何度も目元を拭ったエーネが、涙声で後を継ぐ。


「わたしもザンを助けます。怖いとか言ってる場合じゃない……たとえ相手が、幼い子供でも!」

「エーネ……」

「わたしだって誰かを守りたい! もう、逃げたくないんですッ!!」


懸命に叫ぶ彼女の瞳には、何が映っているのだろう。二人の熱に当てられ、私の呼吸も早くなっていく。


しかし、そんなムードを一瞬で鎮めた者がいた。


「みんな、落ち着いてくれ。気持ちは嬉しいがな」


事の張本人であるザンは、ただ寂しそうに笑っていた。

口調こそ普段通りだが、顔は真っ青だ。


「無理はするな。何を仕掛けてくるかわからない」

「む、無理してるのはどっち」

「ははっ」

「ザン……もうやめてね、こんなこと」


全身を強張らせながら、か細い声で告げる。


「私を庇うなんてさ。ザンの人生は、ザンのものでしょ」


するとザンは、とても意外そうな顔をした。

その顔は私にとっても意外で、思わず目を丸くする。


「俺の人生、か」

「?」

「なあフレイ。ここまで随分早かったな」


彼は昔を髣髴とさせる、茶目っ気のある表情で。



「捨て子だったお前をセイヴィア家に迎えてから、十五年が経った」



エーネが息を呑んだ。私自身も漠然としか知らない、過去の話だ。


「昔のお前は、今とはかけ離れた性格だったな」

「えっ? そうなんですか?」

「ざ、ザン。その話は……」

「泣き虫で怖がり。いつも誰かにべったりで。マインドの真似っ子が大好きだった。あの人と結婚するんだーなんて、毎日騒いでた」


驚きを隠そうともしないエーネが、私とザンを交互に見てくる。当然目を合わせられない私は、壁とにらめっこする羽目になった。


え? 何で私はこんな恥ずかしい思いをしているわけ?


「マインドが去って、お前は変わった。強くなり心を閉ざした。みんなに守られる『フレイング・セイヴィア』は、あの日死んだ」

「…………」

「お前がどんな思いで村を出たか────何となく察してはいる。今からどうするのかもな。けど、これだけは覚えておいてくれ」


ザンは一呼吸置き、私を手首に指を添えた。



「俺の中のフレイは、いつまでも変わらない。怖がりなお前も、今の強いお前も。どっちも愛する家族で、幼馴染だ」


「あ、愛するって……えっ、えッ!!??」



熱くなった視界の奥に、私は視る。


泣きじゃくる少女に手を添えたマインドが、もう一人の少年と約束を交わす姿を。



────『置いていってごめんね。けど、君になら任せられる』

────『マインド、お、おれ……」



────『ザン、どうかフレイを。僕らの大切な女の子を……頼んだよ』



「愛している、フレイ。お前を心から大切に想う」



熱と羞恥で体が動かない。言葉にならない何かに発しようと懸命に口を動かす私を、ザンは頬を綻ばせながら抱き寄せた。


汗に塗れ、冷たくなっていても。心の温もりは不変である。


「だからお前も、自分を愛せ」

「え……?」

「俺は約束を果たした。お前の分までだ。だからもう、自分を追い詰めるな」


そうして私は気付く。村を出てから、今ここに至るまで。



結局、義兄ザン・セイヴィアには────何もかもお見通しだったのだ。



「その力があれば、きっと正しいことができる。俺もマインドも────いつだってお前を信じてるさ」



********



「フレイ、本当に大丈夫ですか?」


空気の乾いた宿の玄関。

看病にマインドを残したエーネは、怯えた表情で私を見送りに来ていた。


結局皆の反対を押し切り、こうして単独で向かうわけだが……


「そもそも、何で半日ギリギリまで待ったんです? ザンが操られる前なら、みんなで行くことも……」

「大丈夫だってエーネ。私は負けないから」


優しく、けれど反論を封じるべく、私は語気を強める。

俯いたエーネは説得の無駄を悟ったようだった。


「……わたしの考えは、ザンとは少し違います」


何かを振り絞るように肩を震わせる少女。


「フレイ。約束って……()()()()()()()()()?」

「えっ?」

「……あ、じゃ、じゃなくて! とにかくっ!!」


ぶんぶんとかぶりを振ったエーネは、冷えた手で私の両手を握った。



「絶対っ、無事に帰ってきてください!! フレイには待ってる人がいるんだからっ!!」


「うん。もちろんだよ、エーネ!!」



これはまたハグする流れだろうか。涙目な年上を安心させてやらねば。

と、そこで。


「それに、その……ザンも心配しちゃいますし」


私から目を逸らしたエーネが、心底恥ずかしそうに付け加えた。


「そ、その気まずそうな感じやめてっ!」

「だ、だってあんなの見せられたらっ!! さ、流石にザンが────なんて、よ、予想してなくてっ!!」

「家族愛! あれは家族愛だからっ!!」


確かにエーネからしたら仰天ものだろうけれど!


「もうっ、みんな心配しすぎだって!!」


この私が、万が一にでも負けるなんてありえないのに。



だって既に……()()()()()()()()()()()()

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


・ブックマーク追加

・下の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」に!


を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ