表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第2部 【銀の心の救世主】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/29

7:裏切り者

「あの日の『通達』の事は、よく覚えております」


群都市の新指導者、エルドの向かいにて。

縮こまった初老の女性は、忌々しそうな表情で告げた。シュレッケンについての追加情報を求めた所、謝礼を対価にようやく名乗り出てくれた人物だ。


「送り主はシュレッケンの市長────ロベインさんという方ですが」

「はい、利発で先進的な女性だと聞いています」


もっとも、最近は政策が上手くいっていなかったらしいが。


「事件の日の早朝、全市民に届けられたそれは……目を疑う内容でした。たった一文です。『()()()()()()()()()()()()()()()()()』、と」

「恐るべき、外患……」


一体何を意味するのだろう。

レイティ・ロベインは音に聞く「女帝」。襲撃を察知していたのだろうか。


「それで、皆の反応は?」

「もう大パニックですわ。何せあの人の言葉ですからね。身支度の間に、旦那が我を失いました。無言のまま暴れ出して……」

「…………」


次にエルドの頭をよぎったのは、先ほどと対になる可能性だった。


市長は賢い。だがその行動が、『別の意味』を含んでいたとしたら?


「ロベインさんがこの街にいないなら、旦那様とお嬢様共々、もう……」


泣きだした女性を宥め、謝礼を払って仮の住まいに送り届ける。

執務室で考え込んでいると、ゼノイが部屋に入ってきた。


「ふむ、悩んでいるのかね、エルド」

「ええ、少々気になることがあって」


だが、気を揉んでいても仕方ない。



ハンガーズ(飢えた群衆)の準備を早めます。事態がどう転んでも良いように、ね」



********



翌朝。私達は、例によって隠密で目的地へと向かっていた。


機人マインドから得られた情報は多岐に渡る。

まず、毒は市長邸にある「新研究所」で自動生成されているらしい。五日周期で霧状にしての散布が可能になり、洗脳自体は半日かかるそうだ。


《《恐怖を司る》》毒刃少女(ポイズン・ガールズ)……マインドは、その意味についても教えてくれた。



「『恐怖』の感情を抱くこと。それそのものが、薬の洗脳のプロセスだ」



感情すら利用する恐るべき兵器。周辺の村が次々と陥落したのも納得だ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()。洗脳は容易なのだから。


「そして、敵の拠点は地下。レイティがある理由で作らせていた、避難豪にある」


ちなみに、マインドは敵の目的についてはぼかした。そもそも彼は事件が起きた後に再起動されたので、経緯は断片的にしか知らないらしい。


というわけで。

私達は罪の証拠となる研究所の資料を回収し、他は魔法で破壊する。続いて地下に降り、元凶マニー・エーションを捕縛……そんなプランを立てていた。


「そういえばお前は、市長を見たことがあるのか?」

「ないよ。彼女の家族、誰も。夫も公務員で、娘は学園の生徒だそうだけど」


学園。自分には無縁の存在だったが、そこで一つの仮説が浮かんだ。


「ひょっとしてその子って、十四歳くらいなんじゃ……」

「良く知ってるね。まさに彼女は十四歳だ」


私は思わず顔を引き攣らせる。この街で十四歳くらいの子といえば────


「あ、あの門番の子!!」


ボロボロの姿で門の前に立つ少女。もしや、見せしめだったのか。


「恐らくはね。まあ、その子も見たことはないんだけど」

「え? でも、みんなの栄養管理とかやってたんですよね?」

「全員じゃないよ。それにマニーは、何故か僕が彼女に干渉することを良しとしないんだ」


その内、新研究所に辿り着いた。思いの外、周辺の警備が少ない。


「地下にも研究設備はあったから、そっちを守ってるのかも」


踏み入れた部屋はとても禍々しかった。記憶に新しいカプセルが均等に立ち並び、グロテスクな紫の液体が強く泡立っている。こちらは稼働中だ。


「常識の変化についていけない……文明が違うじゃん」

「今は我慢だ、二人共」


書類だらけの机を全員で漁る中、最初に声を上げたのはザンだった。


「これは……!」

「何!? 何か大事なもの!?」


「…………ラブレター?」


私とエーネは、多分人生で初めてずっこけた。


「ざ、ザンのボケはいっつも急なの!」

「ボケじゃない! 本当にそう見えるんだ!」

「ところでザンって、二人のどっちが好きなの?」

「下衆な勘繰りはやめろ!!」


(……ほんとに、あのマインドとは違う子なんだなぁ……)


私が言葉にできない思いに包まれる中、機人マインドは満足げに肩をすくめる。


「それは僕らと関連しないけど、彼女のために取っておいた方が良いかもね」

「いや、関連しないことも……ないかも」


紙束の下を眺めていたエーネが、目付きを鋭くした。


「それ、日誌じゃないですか? 事件の事が書かれてたり……」

「あ、確かに!」


放置するのも無理な話だった。仮に有用な事が書かれていなくても、敵の日誌は気になりすぎる。



《王立研究所を後にし、シュレッケンへ赴くことになった》



部屋を漁りながら、私達はザンの読み上げに聞き入った。


《彼への愛は尽きない。けどそれ以上に、彼が憎い》


「『彼』って……」


《ピューレは何も言わず付いてきてくれた。本当に申し訳ない。『あの脅威』に対抗すべく、国を思って研究を続けてきたのに……全て奪われた》


そこに綴られていたのは、毒の王マニー・エーションの赤裸々な想いだった。


《絶対に見返す。妹のためにも、新天地で花開くのだ》


「何というかさ。丁寧に日誌書いて、マメだよね」

「フレイ、この話の感想がそれ?」

「……続きを読むぞ」


《計画を思い付いた。軍人でない自分は、科学を活かす他無い。部屋を借りる際、市長レイティ・ロベインには以前の研究内容を伝えた。切れ者なだけあって怪しまれたが、彼女が計画の全貌を知るのはもう少し後になる》


「…………え?」


《間もなく準備が整う。王国南部を手中に収め……あたしを見放した彼を、圧倒的な軍勢をもって後悔させてやる》


日誌も終盤に差し掛かってきたようだ。


《最後に、協力者が要る。市民に一瞬で『恐怖』を伝播させる立役者。それが可能かつ協力してくれそうな人間は、一人しかいない》


「…………」


《ロベインが通達を行き渡らせた段階で、計画は成功したと言えた。とはいえ全員を洗脳しきれなかったのは、薬の濃度が甘いからか》


ザンは語気を強めながら締め括った。



《それにしても皮肉な話だ。街を導くはずだった彼女が、それを葬り去るなんて。その暗黒の未来を、せめて共に歩んであげよう》



しばしの沈黙が部屋を覆う。やがて、ザンがそのまま切り出した。


「疑問ではあった。洗脳の条件は『恐怖』を与えること。であれば、最初のシュレッケンはどうやったのかと」

「……謎が解けましたね。ライウ王子は、黒幕なんかじゃなかった」


エーネは噛みしめるように言った。



「レイティさん……この街のリーダーが、寝返ったんです」

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


・ブックマーク追加

・下の☆☆☆☆☆を★★★★★に!


を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ