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ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第1部 【偉大なるキラー・ガール】

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2:共に征こう

逃げ惑う人の流れに逆行するのは大変な作業だった。

人混みを抜けた私はだいぶ汗ばんでいて、女子的には結構辛かったけれど。


「な、何これっ……!」


半壊した家屋の数々を見て、そんな思念は吹き飛ぶ。

酷い有様だ。私達の村が、ものの見事に破壊されている。


「さっさと金目のモン出せ!!」

「何度言えばわかる……! グレイザーさんに交易を打ち切られて、村の経済は火の車なんだ!」


武装した野盗二人が、自警団と相対していた。彼らのボウガンの先端には見慣れぬ球体がついていて、それが爆発の原因らしい。


(悪い夢でも見てるみたい……)


とても可哀想だ。こうなる前に、()()()()()()()彼らが。


「随分とお楽しみじゃん」


私は躊躇無く前に踏み出した。


「その武器、強そうだね? あんまり似合ってないけど」

「……へぇ、活きの良いのがいるじゃねえか」


舐め切った態度の男達が、ボウガンの先端を向けてくる。同時に、品定めするような視線も。


「お前、その髪……地毛か?」

「あ、やっぱり珍しい? 一応天然ヘアだよ」

「フレイちゃん!? 早くここから離れて!」


自警団が切羽詰まった声を上げる。男達との距離は、家屋二つ分に満たない。

それでも更に、前へ。


「小娘、今すぐ裸で土下座するなら、売っ払うだけで勘弁してやる」

「……そっちこそ、気をつけた方が良いよ」


口角だけを上げて、私は立ち止まる。辺りの空気が熱を帯び、髪が静かに逆立った。


「……!? な、何だ!」

「好きにはさせない。絶対に、奪わせない……」


私はかつて学んだのだ。不死身に思えた人間も、死ぬ時は一瞬。


だから何があろうと、負けてはならないということを。



「仮にこの身を裂かれても。私は決して倒れない」



「ちっ、たかが村娘がっ!」

「よ、よせっ、こいつは────!!」


「【走れ炎よ(ラン・フレイム)】!!」


とまあ、私が凶行に及ぼうとした経緯はこんな感じだった。


私には髪色よりよほど特異なものがある。それがこの類まれなる炎の力だ。

この国で「魔法使い」は珍しく、私は他に一人しか知らない。それもまさか辺境にいるなどとは、誰も思わないだろう。


この圧倒的な異能こそ、私がフレイング・ダイナたる所以だ。


「ふふっ、ふふふ……あはははッ……!」


火炎を身に纏い、私は嗤う。それがすべき行為だから。


ただ、王になるという夢のため。私は────



「フレイーーーーっ!!」



突如、後方から甲高い声がした。次いで四方に水色の文様が浮かび上がる。


「……えっ?」


次々と飛び出してくる水流。縦横無尽に揺れ動き、私を守るかのように取り囲むそれは。


紛うこと無き、()()()()()()()だった。


「え、エーネっ!?」


幼馴染のエーネは、魔法を撃つ構えのまま家屋の屋根に仁王立ちしていた。

ただし足をブルブル震わせ、顔面蒼白で。


(え、どうやって登ったの!? てかワンピースだから、変に動くと、ぱ、パンツ見えそう……!)


「水!?」

「う、嘘だろ、辺境に魔法使いが二人も────」

「お前ら、昨日目撃された連中か」


次いで、良く通る低い声がした。

闇を払うような光が煌めいた、その刹那。


「……ザンっ!」

「遅くなったな。怪我は無いか」


白銀の刀を携えたザン・セイヴィアが、私の前に立ち塞がっていた。


「っ、せめててめぇだけでも!」


最初に負傷した男がボウガンを構える。

しかしたゆまぬ鍛錬で磨かれたザンの太刀筋は、あまりにも美麗で。


「来る場所を間違えたな!!」

「!?」


放たれた矢が斬り捨てられた、次の瞬間。

目にも留まらぬ峰打ちで胴を砕かれた男は、瞬く間に倒れ伏した。


「そいつを連れてさっさと出て行け!!」


完全に戦意喪失した野盗達は、こうして命からがら離脱したのだった。


「……私、ピンチに見えたのかな」


彼らは気付いているだろうか。今、正真正銘二人に救われたことに。

次は、必ず仕留めなければ。


「フレイ、無事で何よりだ」

「……うん」

「ざ、ザンっ!!」


真っ青なエーネも転びかけつつ走ってきた。一応降りられたらしい。


「な、何故です! 何でわたしを登らせたんですか!?」

「す、すまん。でも上から見ないと、フレイを水に巻き込むだろ?」

「ううっ……た、高い所苦手なのに……!」


やはり二人は、私を助けたと思っている。ならば────


「ありがとうね。二人が来てくれなかったら、危うく死んでたかも」

「ま、間に合ってほんっっとうに良かったです……!」

「…………」

「やっぱり私には無理かな? 確かに、一瞬で仕留められないようじゃね」


だが私はもう、覚悟を固めていた。今しかないとわかっているから。



「それでも私、行くよ。ビートグラウズに」



エーネは驚愕してスカートの裾を握る。ザンはただ、目を閉じた。


「次村が襲われたら、誰か死んじゃうかも。早く現状を変えなきゃ」

「……人質にされるようなことがあってもか」

「うん……ほんとはさ。い、一緒に来てほしかったんだ。二人に」


これは寂しさを厭う、私の偽りない本心だ。


「でも、二人にも人生があるから。ねえ、エーネ……エーネが村に来てから、楽しいことばっかで最高だった。怖がりなのは変わらないね? いつ帰るかわからないけど、ずっと忘れない」

「ふ、フレイ……っ」

「それとザン……最後にもう一回くらい呼ぶべきかな? お義兄ちゃんって────な、なーんて」


勢い任せに、物凄く恥ずかしいことを口走った気がする。

私は慌てて取り繕い、背を向けた。


「二人とも。どうか、楽しみにしててねっ」



(この先きっと訪れる……王になった私が創る、偉大なる世を)



少女は歩き出した。その影は、人の身を離れた何かを纏っている。



義妹から目を離さぬまま、少年は。


「あいつ。野盗達に、()()()()()()()()()()?」

「……ザン」

「俺達は本当にあいつを救ったのか? 遅れたら、死んでいたのは────」

「ザンっ!!」


エディネア・モイスティの涙声で我に返る。

何の疑念も持たない気弱な少女の瞳は、いつにも増して切実だった。


「フレイは言ったんです、付いてきてほしいって。あんなに反対したのに……それでも、一人でも行くって。ザンは、どう思ってるの?」

「……お前は良いのか」

「は、はっきり言って、嫌です。怖いしフレイも心配だし……でもっ!」



それでもかつて、共に生きると誓ったのだから。



「エーネ、俺は……」


────『ザン、どうかフレイを。僕らの大切な女の子を……頼んだよ』


懐かしい声が脳裏に蘇る。

そうだ。いつだって、真っ直ぐで危うい義妹は前しか見ていない。


危険なことはしてほしくない。いつだって笑っていてほしい。

だが、もう変えられないのなら。黙って送り出すくらいなら。


この剣で、報いることができるなら────


「フレイ!!」


声を張り上げる。少女は、村中を震わせる大声に足を止めた。


「お前が本気で誰かのために戦うのなら────俺も行く、群都市へ。全てを果たすその時まで、そばにいよう」

「えっ、えっ!?」

「わたしもっ……二人みたいに強くないけど、せめてこの魔法で助けたい。大事な時に、隣にいたいから。それがきっと『恩返し』になるからっ!!」


幼馴染達は同時に手を差し出した。



「一緒に行こう、フレイ!」



胸が詰まる。私は気恥ずかしさと嬉しさで顔が熱くなった。


「……ふ、二人とも。ほんとにありが────」

「いや、礼なら良いんだ」


ザンにぴしゃりと遮られる。クールな彼らしからぬニヤケ顔だった。


「それよりも、また呼んでくれるんだろ? 『お義兄ちゃん』って」

「…………え」

「フレイ、さっきの話……昔お泊まりの時、夜トイレに行けなくて泣きついてきたことも、覚えててくれるんですよねっ?」


やばい、からかわれてる!!


「これからも付いてってあげます。何ならザンだって」

「ああ、何せ俺はお前のお義兄ちゃ────」

「うっ、うううるさいよっ! エーネだって超ビビりのくせに! ザンもっ、へ、変な顔しちゃってバカみたい!!」

「び、ビビりは余計ですっ!」

「変な顔はしてない!」


結局最後まで締まらない。真っ赤になりつつも、気付けば私は笑っていた。




ごめんね、二人共。本当は嘘なんだ……

「偉大な存在になりたい」のは、人のためじゃない。


私は自分のために、ビートグラウズに行く。

グレイザーを殺して、王になるんだ。


彼を見返してやりたいから。何より……()()()()()()()()()()()


だからね、エーネ、ザン。



天高く(そび)える王の間で、全て打ち明けた時。一緒に、心から笑い合おうね?

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


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