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ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第2部 【銀の心の救世主】

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17/31

1:お風呂に入りたい!!

街を発って半日。既に日が暮れた獣道を、私達はしずしず歩いていた。


流石辺境というべきか。徐々にその肩書から遠い場所に来ているとはいえ、群都市と死都の間には、物寂しい村が点在するばかりだ。


「つ、疲れたっ……!」

「おい、止まるなよフレイ」

「そ、そうです、はあっ、フレイ、ここで疲れてたらこの先、はぁっ……」

「……エーネがやばそうだから、休憩にしない?」

「この流れ既視感あるな」


何だかんだで野宿となった折、


「フレイ、ちょっと……」


決まり悪そうなエーネに声をかけられた。何やらもじもじしながら、襟をパタパタ動かしている。

少しだけ香る湿った匂いに、私は意図を察した。というか私自身も────


「ほ、ほんとに言ってる?」

「だ、だって……!」

「まあ確かに、私も気になるけど……でも、うん。体拭けば何とか」

「そういう問題じゃないですっ! お願い、わたし達の特権でしょ……!」


切実な物言いに、私は渋々頷くしかなかった。

無論、この後すぐに後悔するのだが────



********



「ザン、ぜ、絶対こっち見ないでよ……!」

「わかったって。お前らこそ警戒は怠るなよ」


街道から逸れた、視界の悪い岩場にて。背を向けたザンが辟易したように言う。


一方────


「フレイ、早く、早くしてっ!」

「ま、待って集中しないと……ああっ、人いないよね!? 見られてないよねっ!?」



危険溢れる夜の野外にて。私達は、()()()()()()()()()()()



「だ、だから嫌だったの! 水浴びしなくてもタオルで良いじゃん!」

「ずっとそれなんですか!? あ、明日はそれでいいから、はっ、早く火出してくださいッ!」


頭上で水の塊を漂わせながら、真っ赤になったエーネが叫ぶ。

私も必死に魔法の発動を試みるが、不安と恥ずかしさで上手くいかない。風が無防備な肌を撫でる度に、二人で胸周りに鳥肌を立てた。


「お湯用意してから脱げば良かった……!」


それにしても、彼女は相変わらずストレスに弱い。間接キスには無頓着だったくせに……!


「て、てかエーネ、そんなじっと見ないでよ」

「あ、ごめんなさい。その……一緒にお風呂なんて久しぶりだなって」

「できればこんなんじゃなくて、街の温泉でゆっくりしたかったけどねっ!」


シュレッケンは元々、観光地としても名を馳せていたという。色々開放的な街だと、ハンガーズ(飢えた群衆)から耳にしていた。


「というかエーネはさ、シュレッケンにも行ったことあるの?」

「……え?」

「どのくらい知ってるの? 村の外のこと。エーネは結局どこから────」

「わ、わっ……ワキの下綺麗ですねっ、フレイ!!」

「へっ!? ちょっ、どこ見てんの!!」


水に手を突っ込む私が、身動き出来ないのを良いことに……!

意趣返しに、こちらも彼女の体をガン見してやった。白くきめ細やかな肌は夜の闇にも良く映える。年上なだけあり、全体的に少しサイズが大きい。


どんなコメントを発してやろうかと考えていると────


「────ん?」


これまで静かだったザンが喉を鳴らした。


「な、何、ザン? もしかして人……!?」

「違う。あの部分、地形が変だ。街道の一か所が妙に凹んでいる」

「え?」


「恐らく、戦いの跡だ」


暗闇の一点を見つめ、重々しく言い放つザン。


「さっきは気付かなかった。あそこで激しい戦闘が行われてたんだ」

「ザン、そ、それ今じゃないとダメですか?」


正直、話の半分も入ってこない。彼がそのままのテンションで突然振り返らないか、気が気ではないのだ。


「考えてもみろ。この道はグレイザーが────」


「ふ、フレイ、お湯がっ!!」


真剣な少年を遮り、エーネが金切り声を上げた。

顔を上げると、そこには見事に沸騰した水の塊が。


「やばっ!? 途中で集中切れて、かえって強めに……!」

「ど、どうします!? ちょっと一旦服着たいっていうか、心臓がずっとバクバクで……!」

「もう待ちたくない! こ、こうなったら一思いに浴びようよ。案外気持ちいいかも!」

「え、ちょっと……!? どう見ても人肌に合う温度じゃ……!」


時既に遅し。私は両腕で、思い切り水の塊を引き裂いていた。


新鮮なお湯が二人に降り注ぎ────


「あっっっっっっっつ!!??」

「ぎゃっっ!!?? バカッ、フレイのバカッ!!」

「……今賊が来たら、マジで全滅だな……」


頭を抱える義兄の背後で、私達は裸のままバタバタ暴れ回る。


普通に黒歴史確定だ……



********



「!! みんな、ここからは超警戒でっ」


歩きに歩いて四日と少し。私達の視界には、異様な様相の都市が映りこんでいた。


建物だけ見れば、ビートグラウズより少し規模の下がる程度。発展度合いは十分だ。

しかし問題は、醸し出されるその空気感である。


「何だ、この毒々しい街は……!」


明らかに不健全な、靄のかかった街。建物のみならず、木々や外壁までが、濃淡様々な《《紫》》に包まれているようにさえ見えた。


「これが────シュレッケン?」



まさに、毒に侵された死都だった。



と、私達は門の前に佇む人間を見つけた。

黒髪の少女だ。推定年齢は十四、五歳程度。手には槍を持っているが、よれた服装は「衛兵」のそれとは程遠い。


「あの子、もしかして」


虚空を見つめ、身じろぎ一つ行わない少女。

間違いない。彼女は()()()()()()のだ。


────『五日おき。それが、薬物散布の大体のスパンだ』。


グレイザーの言葉を反芻する。


────『散布には準備が要るようだ。だが近辺の大半の村は、既に奴らの手に落ちている』


戦力が集まり次第ビートグラウズも落としに来る────彼はそう断言した。

遠征の間にも、また別の場所が侵されたはずだ。もう猶予は無い。


「……毒は神経に作用するって、グレイザーは言ってました。きっと何かしらの方法で、敵はあの子と()()()()()んです……」

「あの少女が不意打ちでやられても、向こうには異変が伝わるわけか」

「な、何それ、それこそ捨て駒じゃん!」


門が開いているのは、あわよくば侵入者も手駒にしようという思惑からか。だが正規の入口以外、どんな罠があるかわからない。


結局、炎で少女の注意を引き、その隙に正門から入るプランになった。


「よし、思い出に残る火柱にするよ!」

「すぐ鎮火できる大きさで頼む……」

「【偉大なる炎よ(ノーブル・フレイム)】!」


炎は門の左側に着弾し、そこそこの大きさの火柱を上げる。


「フレイ、あのタワーをイメージしたの?」

「……おい、悪くはないが名前負けしてるぞ」

「コメントやめて!……あ、あの子が!」


少女が千鳥足で火元へ進み出した。彼女が異変を知らせるよう「仕組まれて」いるなら、確認しに行かない道理はない。

しかしこれはあくまで自然現象……と、認識してもらえる事を願う。


「今だ!」


ザンの合図を機に、私達は一斉に夜の正門を駆け抜けた。


────のだが、街中に足を踏み入れた段階で、本能的に立ち止まる。


「え? 暗っ!?」


いくら夜とはいえ、内部は不自然なほどに暗かった。暗黒物質顔負けだ。


「おい、あそこに砲台があるぞ! 奥の建物だ」

「何で見えてるんですか……!?」


ザンの超人ぶりは置いておいて。


「ふ、二人とも、ちゃんとそこにいるよね?」

「いないと言ったら?」

「マジで怒る」


私は無意識に、そばにいたエーネの手を握る。

しばらく待てども、誰もアクションを起こさなかった。


「な、何で誰も行かないの」

「……? 待ってるんだ。早く進んでくれ」


進む? 私が?


「え……私が先頭?」

「ほ、他に誰がいるんです? フレイしか明かり作れないし……」


私は生唾を飲んだ。汗が滲んできたのを悟られたくなくて、手を離す。


「暗いん、だけど」

「見ればわかる」

「…………こ、怖いよ」


私は正直に告白した。エーネとの空き家お泊り会が思い起こされる。

女子会を大いに楽しんだものの、明かり無き夜の暗かったこと……


「どう見てもやばいよ。で……出るかもしれないでしょ、そういうのが」

「わ、わたしが手を繋ぐから大丈夫です。後ろからだけど」

「前が嫌なの!!」


どうせ、素でビビりなエーネにも無理だ。となれば────


「お願いザン、先に行って! 私達の壁でしょ!?」

「は? いつから肉壁になったんだ俺が」

「……お、おっ……お義兄ちゃん」

「おい、その感じやめろ! 罪悪感を植え付けようとするな!」


こっちも恥を忍んで頼んでいるのに!


結局、折れたザンが先を行ってくれることになった。

進むつれ、瘴気で包まれた街の全貌が見えてくる。一切の機能を失った家屋に露店────


ただの村人が、とんでもない所に来てしまったものだ。


「ほんとにどうなってんの……」



この惨事を生み出した毒刃少女(ポイズン・ガールズ)────やはり生かしてはおけないようだ。

★読んでくれた皆様へのお願い★


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