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ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第1部 【偉大なるキラー・ガール】

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12/31

12:少年少女の大一番

「【走れ炎よ(ラン・フレイム)】!!」


金色の炎が守護者の胸を捉える。唸りながら直進する魔法は、夜の群都市には眩しすぎた。

残像と共に初撃を躱した彼は、射抜くような眼差しで吠える。


「穿て、奴を!!」

「!!」


切り裂くような音。頂上を取り囲む機関銃が、一斉に私を攻撃し出した。

一発でも当たれば、死。


「【炎の防壁(フレイム・バリア)】……!!」


ひとまず防御だ。溶け落ちる銃弾は、私の生きてきた世界とはどこまでも無縁だった。


「ハッ、威勢の割に消極的だなァ?」

「ひ、否定できない……」

「それに」


彼が腕を振りかぶった。防壁(バリア)越しでも、感覚でわかる。

直後。壁を突き抜けたナイフの刃先が眼前に届いた。


「お前、集中が切れると炎の形が揺らぐな?」

「うっ」

「その力は、二つのことが同時にできねェ。そうだろう?」


ああ、もう少しだけ隙があれば。私の炎で全ての銃器を蹂躙できるのに。


グレイザーは紛う事無き手練れだった。

隙の無い身のこなし。長身から繰り出される殺人級の技の数々。未知の兵器を巧みに操る処理能力……王都より来たる技術は、中々におっかない。


対する私は、ヤワヤワな肉体の村娘で。


え────つまり、劣勢?


「ふふふ、んふふっ……」

「!!」



()()()()()()()



「ねえ、グレイザー。どうしてここまで強くなったの?」


炎の壁を維持しつつ、私はゆっくり立ち上がった。集中力は限られており、話しながらでは歩くことも難しい。ギリギリの状態だ。


「……お前と語らう気はねェ」

「リアンさんとの『最強の街』……それはほんとに、今ので合ってるのかな」


出しうる限りの低い声で。


「グレイザーは結局、野心を抑えられないだけでしょ?」


私はきっと、核心をついた……と思う。


「シュレッケンから『守る』だけじゃ、この先に進めない。だから逆に奪う……誰も逆らえないくらい、強くなる。それは、自分が人の上に立ちたいだけじゃないの?」

「……お前は、自分を省みたことがあるか?」

「どうなんだろ」


わからないけれど。


「否定はしないよ? 私の決意もずっと、ここにあるから」

「…………」


胸に手を添える私の息遣いを、彼は感じ取っているだろうか。何となく殺気が薄い、ような気がする。


────油断したな。


「ところでグレイザー。私の力、ちょっと見くびってるでしょ」


グレイザーが顔を顰める気配がした。


「攻撃は確かに、手のひらからしか出せない。でも逆に言うと、『手のひらから』なら、何とでもなるの」

「ちっ、お前……!」

「気付くのが遅かったね。私の炎は、地面も伝うよ? もうこのタワーに逃げ場は無い!!」


私は防壁(バリア)を解除した。ほんの僅かな動揺に、守護者は少しだけ反応が遅れる。

投擲も銃撃も間に合わない。今こそ下から突き上げる火柱が、彼を────



「……………………なんてねっ、【火炎跳躍(フレイム・バウンド)】!!」



素早く跳び上がった私は、ものの一瞬で巨大な銃器の上に着地した。


「ハッタリか、小賢しい……!!」

「ふふっ、そういう自由な技はエーネの方が得意だから。私の取柄は圧倒的かりょ────っ!?」


ドヤ顔で言いながら、恥ずかしいことに私はバランスを崩しかけた。気を抜くと落ちそうで結構怖い。


だが、銃器の射程外に来ればこっちのもの!


「【炎の高波(フレイム・ウェーブ)】!!」


両腕を広げて叫ぶ私の眼前で、頂上がいっそう燃え上がる。

蠢く炎が、濡れた鉄塊をその顎で包み、次々と灰にしていった。


「おのれッ……!」

「あはっ!!」


再び着地した私を狙うは、エルドより遥かに速いグレイザーの投擲。

流星のような軌跡を、私は名も無き炎で弾いた。


「ごめんね、グレイザー。でも。もう終わりなんだよ」


銃器が全て燃え堕ち、私と守護者と炎だけが残る。


()()()()()()()()()()()()()、私はずっと魔法使い。私は負けない……絶対に────」


「……いや、まだだ」


黒衣が風にはためく。地を這うような重低音は、私の心臓に直接届いた。


その時。まるで機を図ったかのように、階下で爆音がした。身の危険を感じるほどの振動が伝わってくる。


それは私が、義兄に全てを託した場所に他ならない。


「……ざ、ザン!?」

「良く聞け、狂った娘よ。ここは群都市、辺境の王都だ」


上着を投げ捨て、低く構えた守護者は。



国王(守護者グレイザー)を────侮るな」



星空よりも強い眼光を、私に向けた。


(ああ、ごめんね……マインド)


雨はもう、やんでいるけれど。



もう少しだけ、この戦いを楽しませて?



********



きたる決戦に誰もが浮足立った、夜の群都市にて。


「食らえ!!」

「ひゃああああっっ!?」


エディネア・モイスティは、絶望の逃避行を繰り広げていた。


「くっ、外したか!」

「あ、あぶな……ほ、他の人に当たったらどうするんですかっ!」


痛む横腹を押さえながら、槍を投げられたエーネは涙目で叫ぶ。普段ならこんな物言いはできないだろう。

転びかけながら曲がり角を走ると、また地獄の直線だった。


「っ、はあっ!!」

「なっ!?」


周囲の床に文様が浮き出る。囲まれそうになる度、エーネは輝く水柱を造り出し、ハンガーズ(飢えた群衆)から身を守っていた。

少しでも長く敵を引き付ける────それが、今の自分の使命。


「なんて逃げ足だ! しかし、脅威は感じられんな」

「しっ、きっとアホなだけよ。折角の水流を逃げにしか使わないもの」

(き、聞こえてるし……! わたしの配慮をそんな風にっ!)


というかもう、体力が限界だ。日頃の運動不足が祟っている。汗で髪が貼り付くのも気持ちが悪い。


そんな状態での逃走劇が、長続きする訳もなく────


「あああっ!?」


前方からも多数の敵が迫っており、エーネは挟み撃ちにされた。

やはり大通りは悪手だった。この人数では水での回避も難しいだろう。


「へっ、ここまでだな」

「ううっ……!!」


ハンガーズが近づいてくる。このままでは捕まる!!


「わ、わ、わたしが捕まっても、魔法は遠隔で発動できますっ!」

「でも流石に距離制限あるだろ。じゃなきゃわざわざ会場に来る意味無くねえか?」

「……………………そ、そうですけどっ」

「みんなに愛されてそうだな、あんた……」


苦笑いするハンガーズをよそに、エーネは今にも号泣したい思いだった。

二人は今どうしているだろう。グレイザーは到底一筋縄で行く相手ではない。ハンガーズまで参戦すればおしまいだ。


藁にも縋る思いで顔を上げると、


「……あっ!?」


視界に入ったのは、夜を照らす黄金だった。

ノーブルタワーの頂が烈火に包まれている。大切な人が、あそこにいる。


────『早く……現状を変えなきゃ』


(フレイ……!)


みんなの笑顔と平和のため。きっとそれが、幼馴染の戦う理由だ。


だから、自分だって。


「……すみません、どいてっ!」

「うおっ、しまった!?」


エーネは素早く小規模な水塊を生み出し、前方の敵の前で弾けさせる。

彼らが身を引いた隙に、細い路地に駆け込んだ。


「おのれ、魔法使いめッ!!」

「あああっ、もう! ほ、本当にしつこいですっ!」



怖くても、二人のために立ち向かう。()()()()────負けはしない。



********



「始まったか……」


上部から凄まじい熱気が突き抜けてくる。燃え盛る炎と、飛び交う刃の音も。


「はあっ、はあ、よそ見ですか?」

「!!」


切り裂かれる空気を察知し、ザン・セイヴィアは身を翻した。

動けるハンガーズは残り九名。及び、ボスのエルド。


倒れ伏す有象無象を見下ろしながら、ザンは握り手に力を込めた。


「まずは」


掃除といこう。


「ぐっ!?」


前傾、そして飛び込み。風のような動きで、屈強な戦士達に峰を叩き込む。


「こ、こいつっ、速────」


僅かな隙を縫い、懐まで。

刀の柄で鳩尾を突くと、男は言葉も無く崩れ落ちた。


三人の中で唯一特殊な力を持たぬ身でありながら、最強の身体能力を誇るザン・セイヴィア。その要は、圧倒的なスピードにあった。


抜かれてはならない、守るために。

誰よりも速く……空を切る刃すらも、追い越す速さを。


「まだ、私がいますっ!!」


エルドが跳躍する。複数の円盤で眉間を狙ってきた。

全てを刀で弾き返し、ザンも思い切り地面を蹴る。峰を上面へ向け、神速で喉元へ。


「愚かな! 空中戦は私の────」

「浅はかだな」


直接振り下ろされた得物を躱し、満を持して刀を構える。


幼馴染が死闘を繰り広げている、その真下で────


「俺が勝算も無しに……」

「っ!?」

「勝負を挑むわけ、ないだろっっ!!」


遠方に叩き落とされるエルド。未だ慣れない「攻撃の感覚」に、確かな手応えを感じた。


「手加減はした。まだ、俺に食い下がるか?」


煤だらけの従者は、よろよろと立ち上がった。


「ごほっ、は、はは……これほどとは」

「エーネは治癒魔法が使える。降伏しろ、エルド」

「一切の油断も無し、ですか……いよいよ勝てる気がしませんね」


エルドは自虐的な笑みを浮かべ、


「ですが、お断りです」

「…………」

「何があろうと、ここを通すわけにはいかない」


その瞳の先には、守るべき仲間の影。

自分がフレイ達を想うように。彼女もまた────


「私は……いや、()()()。確かにキミのように強くない」

「?」

「けれどグレイザーは。こんなボクでも、一度たりとも見捨てなかった」


エルディード・レオンズは、傷を負ってもなお生き生きとしていて。


「そんな彼のためだからね。覚悟だけは、ある」

「! まさか……っ!」


彼女が取り出したのは、円盤ではなく小型の装置だった。



「彼の過ちは、半身たるボクが贖う! 例え……今ここで終わったとしても!!」



足場が爆炎に包まれる。



床が崩落したその瞬間、二人は確かに、己の大切な人を視ていた。

★読んでくれた皆様へのお願い★


こんにちは、今江彰人です! 本作を少しでも面白いと感じて頂けたら、


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を是非よろしくお願いします! 強いモチベーションに繋がります!!

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