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ド田舎の村娘だけど、是が非でも王になりたい!【毎日投稿】  作者: 今江彰人
第1部 【偉大なるキラー・ガール】

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11/30

11:決戦 守護者グレイザー

ノーブルタワー最上階。静まり返った闇の回廊を、私は無言で歩む。

エーネの呼吸。ザンの剣戟。守るべき大切な声が────頭に響いてくる。


最奥のドアは、思いの外スムーズに開いた。


「っ!?」


息を呑まずにはいられなかった。

部屋のあちこちに青色の液晶が浮かび上がっている。のちに知った言葉で表現するなら、電子的で機械的な何か。


そして部屋の中央。こちらに背を向け、微動だにしない男が一人。薄明かりに照らされた長髪を揺らし、決戦を待つ姿があった。



毒刃少女(ポイズン・ガールズ)



グレイザーの声色は、闇と同化したかのように淀んでいる。


「シュレッケンの現支配者、二人の呼び名だ。ふざけた呼称だがな」


私は身構え、無意識に唾を飲んだ。

こんなところで────いや、ついにと言うべきだろうか。


「俺とそう年の変わらねェ女どもだ。だが、奴らの畑は『科学』……無論、街の運営などできん」

「科学……?」

「それこそ、超常的な代物でも生み出さない限り。不可能なはずだった」


ビートグラウズの長は、重苦しい動作で振り返った。



「あの日奴らは、ある『毒物』をシュレッケン全土に散布した。そしてわずか数刻で、()()()()()()()()()()()()()()()()



洗脳。一応常識の世界で生きてきた自分に、その言葉は刺激が強すぎた。


「神経に作用し、自我を奪う猛毒。空気感染で広がり、脳波までをも支配する。毒に組み込まれた奴らの遺伝子により、脳は主を認識するように仕向けられ……後はわかるだろう?」

「そ、そんな……!?」

「幸い、空気中の毒はすぐに効力を失うらしい。だがその気になれば、奴らはいくらでも新品を散布できる。敵の魔の手は、間も無くこの街に及ぶ」


パチンと、指を鳴らす軽快な音がした。



「そんな奴らにも────オレは、勝たねばならない」


「なっ!?」



次の瞬間訪れた、破裂するような機械音。立つのもやっとな振動。

びっくりして飛び退く私に、守護者グレイザーは獣の表情で凄んだ。


「さあ、フレイング・ダイナ。招待しよう。お前の望む頂きへと!」

「頂きって────!」


言いかけて息が詰まる。周囲の液晶が、壁ごと下がっていくのが見えた。


違う、上昇しているのだ。私達のいる部屋が!


「ははっ……ハッハハハハハハッ!! あァ、オレは試されているらしい! お前という障害を除き、晴れて計画を開始できるかを!」

「ッ……! グレイザー!」

「見てみろダイナ、この景色を。未来永劫輝く、オレ達の『最強の街』を!」


天井が下がり切り、全身が外気に晒される。


頂上は、立っているのすら恐ろしい高度だった。先ほどより少し強くなった雨は、互いの髪を濡らし、どこか悲哀に満ちた世界を作り出す。


「き……綺麗」


私は素直な感想を口にした。


視界いっぱいに広がる群都市の明かり。奥にまばらに見えるのは、故郷を含む小さな村々だ。

向きを変えると、かろうじてシュレッケンらしき街も見えた。


「もし晴れていたら、今日は星がよく見える日だった」


ガコン、と再び響く機械音。

ふちの柵の奥から、巨大な銃器が次々と飛び出してくる。


もちろん、あらゆる銃口を私に向けて。



「もっとも────お前はもう、拝むことは叶わんが」



雨すらも取り込みながら、群都市の支配者は闇の中で嗤う。



「覚悟は良いか? 魔法使いは俺の世界に必要ねェ……今ここで殺す」

「殺す、か」


私にとって、それは縁遠くはない言葉だった。



「……()()()()()?」


「っ……」



グレイザーは目を伏せた。初めて彼の人間らしい表情を見たかもしれない。


「ダイナ、お前のことは知っている。正しくは……お前の故郷である村を」

「……そっか」

「血縁者か? あの少年────『マインド・ダイナ』の」

「違うよ。ただの、幼馴染」


感情を込めず、ただ静かに事実を口にする。

意外にも、グレイザーからは後悔の感情が読み取れた。


「マインドは、みんなのリーダーだったんだ」


少年は天賦の才を持っていた。

文武に限った話ではない。万物を惹き付けるカリスマ。森羅万象を包む優しさに、空まで突き抜けるひたむきさ。きっとグレイザーにも劣らない。


『いつか偉大な存在になる』。それが彼の夢だった。真っ黒な髪を靡かせながら、いつも私達に理想を語ってくれた。


私とザンと、マインド。二人の背中を追いかけるだけだったが、天にも昇る楽しい日々だった。


「……八年前まではね」


盗賊の大群が近隣の村を襲った。次は私達という状況だった。

誰もが震える中、立ち上がったのはマインドだ。


「人身売買とかもやってる組織でさ。マインドは……そいつらを止めるために、一人で村を出た。先に接触して、交渉で進路を変えさせたの。敵と戦って損害与えて……最終的に自分の身を差し出すことで、ね」


忘れもしない、十三歳の彼が村を去った日。はるか遠くが燃えていた。


私達は、死に物狂いで止めたのに。


「結局あいつらは王都の方に向かったけど、マインドが捕虜達を逃してくれた。その内に、色んな所の軍が叩いてくれて。でも敵の怒りを買ったマインドは……そのまま……」


仮にこの身を裂かれても、決して倒れない。


あんなの嘘だった。村に帰ってきた少年の、物言わぬ骸がそれを証明した。


「オレが、あの時出撃していれば」

「望みは薄いけど、もしかしたら間に合ったかもね」

「…………敢えて言おう」


グレイザーは顔を上げた。そこにはもう、「守護者」しかいない。


「オレは判断を誤った。お前達には悪いことをした……だが」


雨がいっそう強くなる。


「オレは群都市の『王』だ。その無念を乗り越えて、今を生きる民を守らねばならん」

「…………」

「例え、少女が復讐のためにやって来ても。オレは────」



「違うよ。()()()()()()()()()



私は断言した。思えばザンは少し、勘違いしていたみたいだけれど。


「約束したんだ。マインドと……別れる時に」


────『フレイ。君は強くならなきゃいけない』


屈託の無い笑みで、彼は。



────『僕がいなくても、前を向けるように。みんなを引っ張っていけるように。そんな偉大な存在に────()()()()()()()()()()



「マインド。私、ここまで来たよ?」

「ダイナ、お前……!」

「もう少しでなれるの、王に。マインドが目指した、偉大な存在に……!」


もう待てない。

もう抑えられない。



『ああ、共に征こうフレイ。今こそ手にするんだ────全てを』



夢を、叶えなければ。



()()()()()()()()()()()()()()()()。報いなければ!!



「だからグレイザー、お願い!」


力強く両腕を振るうと、ノーブルタワーの頂上が恐るべき業火に包まれた。



「今ここで死んで!! ビートグラウズは、私のものだッ!!」


「……リアン」



グレイザーが遠い眼をする。


「この化け物を倒すことで……オレは、ようやく過去を乗り越えられる」

「うふふふっ、ふふふふっ、あはははははッ……!!」


私は嗤う。マインドがいつだってそうしていたように。



「蒼の守護者グレイザー! このフレイング・ダイナが────その首を焼き切って、マインドのお墓に備えてあげるっ!!」



仮にこの身を裂かれても、私は決して倒れない!!

★読んでくれた皆様へのお願い★


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